思い返せばオーランドくんとマーテルさんの一件において、シミラ卿は微妙に自身が死罪に問われるのを予見していた節はあった。
どこか儚げだったり、死地を見定めようとしていたりね。そこから彼女はすでに、今回のような目に遭わされることをどこか予想していたんだろうねー。
一応、ここまでのことにならないように冒険者ギルドと組んで責任を分散させる形に持っていたと思っていたんだけど、国にとってはそんなのお構いなしってことらしい。
悍ましいほどのシミラ卿への殺意を感じるよー。
「だけど、一体何を根拠に死刑だなんてするのかな……精々任務に失敗した程度なんだし、どんなに重くても騎士団長をクビとかそんな程度だと思ってたんだけど」
「その認識で大体合ってるぞソウマくん。少なくとも死刑なんてそんな簡単に処されるはずがない。貴族の身としても、これは異常に過ぎる」
独り言ちた僕に、貴族であるセルシスくんが答えてくれる。そうだよねー、常識的に考えてそんなことが罷り通っていいはずないんだよ。
任務に失敗しただけで死刑だなんて法律、今も昔も聞いたことないし。だのに今、彼女は処刑されようとしているんだ。
これ、どう考えても異常だよ。
一体何が起きてるんだろう、エウリデの上層部で……何を考えてるんだろう、王にしろ大臣どもにしろ。
貴族として冒険者として、シアンさんが深刻な面持ちで小さく叫んだ。
「……死刑ありきなのですか? 仮にも法治国家たるエウリデ連合王国が、そのような無法を!?」
「法とは常にそれを知り、上手く使いこなせるものの味方であり……何よりそれを作る側次第なのだよ団長。とはいえ今回はさすがに、あまりにも形振り構わなさすぎている。おおよその予想はつくが、にしても恐ろしく雑だと言わざるを得ないね」
独り言に近いそんな叫びを拾い、応える教授。法という秩序の側面、結局作る側が強いって現実を示しつつも、それでも今回のこの強行ぶりには嫌悪感を抱いているみたいだねー。
雑、とバッサリ言ってしまえるくらいには雑だよ。大したことでもないのに無理やり死刑に、しかも相手は騎士団長で貴族の娘でもあるのに。
上層部の乱心を疑っちゃうよねー。元から乱心してたって言われたらまあ、そうかもだけどー。
「推測できる事情としては、こんなところかな? ──ソウマくんの新世界旅団入りが確定して、お偉方は慌てた」
続けてモニカ教授が語る。シミラ卿処刑に至るまでの事情、エウリデ連合王国の王や大臣達が一体、何を考えてこんな凶行に及ぼうとしているのかについてだ。
「かつて自分達が陥れた、世界最強クラスの冒険者がまた新しいパーティーに……それもよりによってポスト調査戦隊の色が濃い新世界旅団に入団した。そこから彼らはおそらく、君が未だ調査戦隊への未練が強く、そして自分達に恨みを抱えているものと判断したんだろうね」
「まあ、未練はそれなりにあるけどー……そんな恨みってほどのものはないんだけどねー」
「向こうからすれば判別のしようがないからね。そこはそう受け止められても仕方がないのさ」
「実際、マーテルを助けるために騎士団相手に牙を剝いてもいるわけでござるしねー」
マーテルさんについては私怨とかでなく、古代文明人だからって無理矢理実験動物にしようとするエウリデのやり口が普通に気に入らなかったから介入しただけなんだけどねー。
まあ向こうから見たら、僕が怨みから嫌がらせに及んだと見ることもできちゃうのか。過去の遺恨ってこういう場面でも影響しちゃうんだね、なんか複雑だよー。
ともかくエウリデから見て、僕という危険因子がまさかのポスト調査戦隊入りを果たした。それに前後して古代文明人を守るために国に楯突いたなんておまけつきでさえある。
となればエウリデのお偉方がさらなる疑心暗鬼に陥るのは、これも仕方のないことなのかもしれなかった。
「次いで彼らが危惧したのは新世界旅団の下に調査戦隊メンバーが集うことだ。エウリデに恭順する形か、最低限協力的な形で再集結するならいざ知らず、団長の下に集うということはどう考えてもそうではない形になるからね」
「エウリデの介入など断じて新世界旅団は認めません。当然ですね」
「だろう? だから、エウリデとしては出る杭……出てくる杭を打ちたかったのさ。杭打ちじゃないけどね、ははっ」
僕が入った新世界旅団は、調査戦隊の影響をモロに受けてガチガチの冒険者気質の集団になることが今からでも予想できる。
となれば話を聞きつけた元調査戦隊メンバーが再び駆けつけて、次々に入団する可能性だってあり得ると考えたんだろうね、国は。実際どうもレジェンダリーセブンは事情はどうあれ、僕を目当てにこの町に戻ってくるみたいだし。
となると今のうちから少しでも新世界旅団を妨害したり、屈服させるために嫌がらせをしようって考えちゃうこともあるわけなんだね。
そもそもシミラ卿も元調査戦隊メンバーなわけなので……言っちゃうとこれは見せしめをも兼ねた処刑って向きもあると言えるのだった。
どこか儚げだったり、死地を見定めようとしていたりね。そこから彼女はすでに、今回のような目に遭わされることをどこか予想していたんだろうねー。
一応、ここまでのことにならないように冒険者ギルドと組んで責任を分散させる形に持っていたと思っていたんだけど、国にとってはそんなのお構いなしってことらしい。
悍ましいほどのシミラ卿への殺意を感じるよー。
「だけど、一体何を根拠に死刑だなんてするのかな……精々任務に失敗した程度なんだし、どんなに重くても騎士団長をクビとかそんな程度だと思ってたんだけど」
「その認識で大体合ってるぞソウマくん。少なくとも死刑なんてそんな簡単に処されるはずがない。貴族の身としても、これは異常に過ぎる」
独り言ちた僕に、貴族であるセルシスくんが答えてくれる。そうだよねー、常識的に考えてそんなことが罷り通っていいはずないんだよ。
任務に失敗しただけで死刑だなんて法律、今も昔も聞いたことないし。だのに今、彼女は処刑されようとしているんだ。
これ、どう考えても異常だよ。
一体何が起きてるんだろう、エウリデの上層部で……何を考えてるんだろう、王にしろ大臣どもにしろ。
貴族として冒険者として、シアンさんが深刻な面持ちで小さく叫んだ。
「……死刑ありきなのですか? 仮にも法治国家たるエウリデ連合王国が、そのような無法を!?」
「法とは常にそれを知り、上手く使いこなせるものの味方であり……何よりそれを作る側次第なのだよ団長。とはいえ今回はさすがに、あまりにも形振り構わなさすぎている。おおよその予想はつくが、にしても恐ろしく雑だと言わざるを得ないね」
独り言に近いそんな叫びを拾い、応える教授。法という秩序の側面、結局作る側が強いって現実を示しつつも、それでも今回のこの強行ぶりには嫌悪感を抱いているみたいだねー。
雑、とバッサリ言ってしまえるくらいには雑だよ。大したことでもないのに無理やり死刑に、しかも相手は騎士団長で貴族の娘でもあるのに。
上層部の乱心を疑っちゃうよねー。元から乱心してたって言われたらまあ、そうかもだけどー。
「推測できる事情としては、こんなところかな? ──ソウマくんの新世界旅団入りが確定して、お偉方は慌てた」
続けてモニカ教授が語る。シミラ卿処刑に至るまでの事情、エウリデ連合王国の王や大臣達が一体、何を考えてこんな凶行に及ぼうとしているのかについてだ。
「かつて自分達が陥れた、世界最強クラスの冒険者がまた新しいパーティーに……それもよりによってポスト調査戦隊の色が濃い新世界旅団に入団した。そこから彼らはおそらく、君が未だ調査戦隊への未練が強く、そして自分達に恨みを抱えているものと判断したんだろうね」
「まあ、未練はそれなりにあるけどー……そんな恨みってほどのものはないんだけどねー」
「向こうからすれば判別のしようがないからね。そこはそう受け止められても仕方がないのさ」
「実際、マーテルを助けるために騎士団相手に牙を剝いてもいるわけでござるしねー」
マーテルさんについては私怨とかでなく、古代文明人だからって無理矢理実験動物にしようとするエウリデのやり口が普通に気に入らなかったから介入しただけなんだけどねー。
まあ向こうから見たら、僕が怨みから嫌がらせに及んだと見ることもできちゃうのか。過去の遺恨ってこういう場面でも影響しちゃうんだね、なんか複雑だよー。
ともかくエウリデから見て、僕という危険因子がまさかのポスト調査戦隊入りを果たした。それに前後して古代文明人を守るために国に楯突いたなんておまけつきでさえある。
となればエウリデのお偉方がさらなる疑心暗鬼に陥るのは、これも仕方のないことなのかもしれなかった。
「次いで彼らが危惧したのは新世界旅団の下に調査戦隊メンバーが集うことだ。エウリデに恭順する形か、最低限協力的な形で再集結するならいざ知らず、団長の下に集うということはどう考えてもそうではない形になるからね」
「エウリデの介入など断じて新世界旅団は認めません。当然ですね」
「だろう? だから、エウリデとしては出る杭……出てくる杭を打ちたかったのさ。杭打ちじゃないけどね、ははっ」
僕が入った新世界旅団は、調査戦隊の影響をモロに受けてガチガチの冒険者気質の集団になることが今からでも予想できる。
となれば話を聞きつけた元調査戦隊メンバーが再び駆けつけて、次々に入団する可能性だってあり得ると考えたんだろうね、国は。実際どうもレジェンダリーセブンは事情はどうあれ、僕を目当てにこの町に戻ってくるみたいだし。
となると今のうちから少しでも新世界旅団を妨害したり、屈服させるために嫌がらせをしようって考えちゃうこともあるわけなんだね。
そもそもシミラ卿も元調査戦隊メンバーなわけなので……言っちゃうとこれは見せしめをも兼ねた処刑って向きもあると言えるのだった。