メルルーク一家を巡っての、ぐったりしちゃいそうなトラブルから早一種間が経過した。
この間、何か際立った出来事があるわけでもなく、僕は夏休みを冒険者活動に勤しみながらも時折、仲間達や友人達と一緒に過ごしていた。
「──と、いうわけで今日から冒険者パーティー・新世界旅団の一員としてお世話になるモニカ・メルルークだ。拠点の一つがまさかの第一学園内にあったことに驚きを禁じ得ないがこれはありがたい。なにとぞよろしくお願いするよ」
そして今、文芸部室にて。
僕、セルシスくんケルヴィンくん、シアンさんサクラさんレリエさんと割といつものメンバーで毎度ながらお茶をしている午前中。
メルルーク教授ことモニカ・メルルークさんが自己紹介とともに新世界旅団への参加を表明し、僕達はそれを拍手とともに受け入れていた。
「いらっしゃーいモニカ教授、調査戦隊以来の同パーティーだね、よろしくー」
「世界にその名を轟かす才媛の知識、技術的サポート期待してるでござるよーござござー」
「よろしく頼むソウマくん、サクラさん。Sランク級のお二人をはじめ団員全員をサポートしきれるよう、最善を尽くそう」
僕やサクラさんは大手を振って彼女を迎える。
戦闘職にとっては彼女のようなサポーターの価値は決して低く見積もれない重要な部分だからねー。
まして僕は実体験から知ってるし、サクラさんはワカバ姉から聞いていたようだけれどもモニカ教授の兵器開発力、および技術開発力は調査戦隊時代からすさまじかった。
レジェンダリーセブンでもレイアやリューゼ筆頭に、彼女に武器を拵えてもらった人も結構いるほどだ。そんなプロの技術者が新世界旅団に早期に加入してくれたのはすごくありがたいよー。
シアンさんやレリエさんも、満面の笑みをもって彼女に握手を差し出した。
「改めて、新世界旅団団長のシアン・フォン・エーデルライトです。この度は勧誘に応じてくれて感謝します、モニカ・メルルーク教授」
「団員で古代文明人のレリエよ、よろしくね!」
「よろしくお願いします、団長、レリエさん。私にも他のメンバーのように接してくれて構わないよ……ふふっ」
握手に応えつつ、モニカさんが軽く微笑んだ。特にシアンさんを見て、何やら得心が行ったって感じに僕をチラ見する。
何ー? なんなのかなー? ちょっと気になるよその視線ー。
いかにも意味深で思わせぶりな視線と仕草に僕は首を傾げる。シアンさんも同じように疑問符を浮かべるのを、教授はやはりクスクス笑って説明した。
「いや失敬。なるほどソウマくんが気に入るわけだと思ってね。美貌は元よりそのリーダーシップ、カリスマ……彼女にも通ずるものを感じるよ、団長」
「……レイア・アールバド。大迷宮深層調査戦隊リーダーですね。かの"絆の英雄"と比較されるなど身に余る話です」
「性格や容姿は当然違うし、今のところ実力など比べるべくもないがね。それでも秘めたる可能性、潜在性は中々に面白そうだ」
モニカ教授もシアンさんに、レイアにも似たものを感じ取ったみたいだ。
もちろんシアンさんはシアンさんだしレイアはレイアだ、二人を比べてどっちがどうのと言う気はさらさらないけれど……纏うカリスマ、放つ威圧がどことなく似てるんだよねー。
冒険者になって間もない新人が、あの調査戦隊リーダーにも近しい何かを持っている。人によってはそれだけで彼女を評価することだろうね。
もっとも僕は一味違う。何せシアンさんは冒険者である前に生徒会長であり僕の最初の初恋の人なんだ。カリスマとか威圧とかより先に見た目の美しさと心の清らかさを評価してるよー。
それに加えて冒険者としては、新世界旅団──プロジェクト"ニューワールド・ブリゲイド"を提案して実際に取り組んでいる姿勢が僕的にはすごくいいと思う。
それこそレイアの提唱した冒険、すなわち未知なる世界に触れ、世間の冷たい風に晒されながらもなお、己が焔を抱き続ける姿勢だ。そんなのを見せられて滾らないようでは、調査戦隊員とは言えないよねー。
実際今、モニカ教授もとても楽しそうに笑っているし。
「新世界旅団のコンセプトも中々に素晴らしい。迷宮に限らず未知なるものを求め、あらゆる国家や組織から独立して旗を掲げる冒険機構。ふふふ、レイアリーダーがこの場にいたら瞳を煌めかせているかもな」
「それは……なんだか気が合いそうで楽しみです。いずれはお会いしてみたいですね、アールバドさんとは」
「彼女に会いたいのかい? なら心配ない、近いうちに嫌でも会えるだろうさ」
「…………えっ」
「えっ」
和やかな会話の最中、突然すごい話がぶっこまれたよー。
レイアと近いうちに会える? え、何どういうことー?
話してたシアンさんはもちろん僕も、サクラさんも、レリエさんもケルヴィンくんもセルシスくんも目を丸くして驚いている。
その中で一人、モニカ教授だけはふふふと笑って白衣を揺らしていた。
この間、何か際立った出来事があるわけでもなく、僕は夏休みを冒険者活動に勤しみながらも時折、仲間達や友人達と一緒に過ごしていた。
「──と、いうわけで今日から冒険者パーティー・新世界旅団の一員としてお世話になるモニカ・メルルークだ。拠点の一つがまさかの第一学園内にあったことに驚きを禁じ得ないがこれはありがたい。なにとぞよろしくお願いするよ」
そして今、文芸部室にて。
僕、セルシスくんケルヴィンくん、シアンさんサクラさんレリエさんと割といつものメンバーで毎度ながらお茶をしている午前中。
メルルーク教授ことモニカ・メルルークさんが自己紹介とともに新世界旅団への参加を表明し、僕達はそれを拍手とともに受け入れていた。
「いらっしゃーいモニカ教授、調査戦隊以来の同パーティーだね、よろしくー」
「世界にその名を轟かす才媛の知識、技術的サポート期待してるでござるよーござござー」
「よろしく頼むソウマくん、サクラさん。Sランク級のお二人をはじめ団員全員をサポートしきれるよう、最善を尽くそう」
僕やサクラさんは大手を振って彼女を迎える。
戦闘職にとっては彼女のようなサポーターの価値は決して低く見積もれない重要な部分だからねー。
まして僕は実体験から知ってるし、サクラさんはワカバ姉から聞いていたようだけれどもモニカ教授の兵器開発力、および技術開発力は調査戦隊時代からすさまじかった。
レジェンダリーセブンでもレイアやリューゼ筆頭に、彼女に武器を拵えてもらった人も結構いるほどだ。そんなプロの技術者が新世界旅団に早期に加入してくれたのはすごくありがたいよー。
シアンさんやレリエさんも、満面の笑みをもって彼女に握手を差し出した。
「改めて、新世界旅団団長のシアン・フォン・エーデルライトです。この度は勧誘に応じてくれて感謝します、モニカ・メルルーク教授」
「団員で古代文明人のレリエよ、よろしくね!」
「よろしくお願いします、団長、レリエさん。私にも他のメンバーのように接してくれて構わないよ……ふふっ」
握手に応えつつ、モニカさんが軽く微笑んだ。特にシアンさんを見て、何やら得心が行ったって感じに僕をチラ見する。
何ー? なんなのかなー? ちょっと気になるよその視線ー。
いかにも意味深で思わせぶりな視線と仕草に僕は首を傾げる。シアンさんも同じように疑問符を浮かべるのを、教授はやはりクスクス笑って説明した。
「いや失敬。なるほどソウマくんが気に入るわけだと思ってね。美貌は元よりそのリーダーシップ、カリスマ……彼女にも通ずるものを感じるよ、団長」
「……レイア・アールバド。大迷宮深層調査戦隊リーダーですね。かの"絆の英雄"と比較されるなど身に余る話です」
「性格や容姿は当然違うし、今のところ実力など比べるべくもないがね。それでも秘めたる可能性、潜在性は中々に面白そうだ」
モニカ教授もシアンさんに、レイアにも似たものを感じ取ったみたいだ。
もちろんシアンさんはシアンさんだしレイアはレイアだ、二人を比べてどっちがどうのと言う気はさらさらないけれど……纏うカリスマ、放つ威圧がどことなく似てるんだよねー。
冒険者になって間もない新人が、あの調査戦隊リーダーにも近しい何かを持っている。人によってはそれだけで彼女を評価することだろうね。
もっとも僕は一味違う。何せシアンさんは冒険者である前に生徒会長であり僕の最初の初恋の人なんだ。カリスマとか威圧とかより先に見た目の美しさと心の清らかさを評価してるよー。
それに加えて冒険者としては、新世界旅団──プロジェクト"ニューワールド・ブリゲイド"を提案して実際に取り組んでいる姿勢が僕的にはすごくいいと思う。
それこそレイアの提唱した冒険、すなわち未知なる世界に触れ、世間の冷たい風に晒されながらもなお、己が焔を抱き続ける姿勢だ。そんなのを見せられて滾らないようでは、調査戦隊員とは言えないよねー。
実際今、モニカ教授もとても楽しそうに笑っているし。
「新世界旅団のコンセプトも中々に素晴らしい。迷宮に限らず未知なるものを求め、あらゆる国家や組織から独立して旗を掲げる冒険機構。ふふふ、レイアリーダーがこの場にいたら瞳を煌めかせているかもな」
「それは……なんだか気が合いそうで楽しみです。いずれはお会いしてみたいですね、アールバドさんとは」
「彼女に会いたいのかい? なら心配ない、近いうちに嫌でも会えるだろうさ」
「…………えっ」
「えっ」
和やかな会話の最中、突然すごい話がぶっこまれたよー。
レイアと近いうちに会える? え、何どういうことー?
話してたシアンさんはもちろん僕も、サクラさんも、レリエさんもケルヴィンくんもセルシスくんも目を丸くして驚いている。
その中で一人、モニカ教授だけはふふふと笑って白衣を揺らしていた。