商店街の中にあるステーキハウスは僕の行きつけで、とにかくボリュームたっぷりなビーフステーキを提供してくれる素晴らしいお店だ。
牛ってのも安いのはこの町近郊にある牧場から仕入れているし、高級品になるとはるか海を隔てたヒノモトの和牛をトルア・クルア経由で輸入している。
そんなお店の入り口前、杭打ちくんを専用置き場に置きつつレリエさんにあれこれと説明する。行きつけで店長とも仲が良いので、半ば特別扱いでこうした専用置き場を作ってもらっているんだよね。
僕の正体についてもご存知だから、毎回個室に案内してもらえるほどのVIP待遇だ。最高だよー!
「それでこの和牛が美味しいのなんのって……モンスターの、それも生肉ばかり食べてきた僕が生まれて初めて火の通ったお肉を食べたのもこのお店だったんだけど、泣いたよねーはっきり言って」
「さらりと壮絶なこと言うわよね……」
食えるか食えないかしかなかった僕の味覚が、生命の息吹を吹き込まれた瞬間かもしれない。そのくらい熱くて美味しくて、連れてきてくれた先代院長先生の前で僕と来たら感動のあまり泣いちゃったもの。
なんなら居合わせた店長さんが唖然としつつ、やがてもらい泣きしだしたくらいだ。義理人情に厚い人なんだよ、ここの店主さんは。
噂をしつつ店に入ればほら、すぐに来てくれた。
「おう杭打ち! 今日はまたえらく別嬪さんを連れてきたな!」
「どうも、店長さん」
腕捲くりが力強い印象を与えてくる、大柄な短髪の中年男性。ブランドンさんという、この店の主さんだ。
僕は初対面以来この人に気に入られて、以後度々何かとお世話になっている。3年前の調査戦隊解散後からも僕を気遣ってくれている、まさしくおやっさんって感じの人だ。
ちなみにお嫁さんもいて僕と同い年の息子さん、一つ下の娘さんもいたりするねー。
豪快に笑ってくるブランドンさんに、僕は会釈した。そしてすぐに建屋の2階、4つある個室の一番奥の部屋に案内してもらう。
4人用の席を二人で広々使わせてもらう。窓からは町の様子が遠くまで見えて中々の眺望ってやつだよー。ここなら外から見られる心配もないし、遠慮なくマントも帽子も外せるねー。
すぐに水とお手拭きが配され、ブランドンさんがメニュー表を見せてくる。その中でも僕のお気に入り、2番目にお高い最高級和牛ステーキちゃんをそれぞれ400gずつ注文して、それからレリエさんを紹介することにした。
「こちらレリエさん。僕のパーティーメンバーなんです。最近新しく加入しましてー」
「はじめまして、レリエと申します」
「おう、ここの店主のブランドンだ、よろしくな! ウワサは聞いてるぜ、新世界旅団! エーデルライトのお嬢さんのとこだろ? お前さんの古巣の仲間がこないだも来て言ってたぜ、やっと杭打ちにも帰るところができてよかったってな!」
「え……」
思わぬ言葉。元調査戦隊の何人かが、そんなことを?
解散後にもちょくちょく会う人達だろうか。比較的僕に対して同情的というか、変わらぬ付き合いをしてくれてる元メンバーを思い浮かべる。
新世界旅団入団後にはまだ顔合わせしてないけど、祝福してくれてるのかな……3年前のことで思うところもあるだろうに。
なんだか嬉しさと裏腹の、罪悪感があるよー。
「複雑ー……」
「何言ってんだ、素直に喜んどけ! ……俺も安心してるんだぜ。お国にあんな目に遭わされたお前が、もう誰とも深く関わろうとしないんじゃないかってハラハラしてたんだ」
僕の頭の上に大きな掌を置いて、ぐりぐりと撫で回してくるブランドンさん。あうあう目が回るー。
仰る通り、この人とご家族の皆さんには大変なご心配をかけてた自覚はあるよー。
なんせ調査戦隊解散後、この店には一人でしか来なかったからねー。解散にまつわる話が周知されていくにつれ、ブランドンさんやその奥さん、子供さん達がしきりに励ましてきてくれたのが嬉しいしありがたかった。
そういう意味で、この店の人達も紛れもなく僕の恩人なんだよー。頭をひとしきり撫で回してブランドンさんが、ニヤリと笑う。
「それが3年経って、ようやっとまた誰かと繋がりを持とうとしている。ホッとするぜ……レリエさんだったか」
「え。あ、はい」
「こいつのこと頼むよ。腕っぷしはあるし頭も悪くはないんだが、まだまだ子供でな。そのくせ誰にも頼らず一人で抱え込んじまうから、見てるこっちは生きた心地がしないんだ。悪いが見といてやってくれ、な?」
レリエさんにそんなことを頼んで、たしかに僕はまだまだ子供だけど、一人で抱え込むなんてしないよー!
むしろ新世界旅団のみんなにはめちゃくちゃ頼りそうな気がするし、甘えすぎないように気をつけないとなーって思うほどだよー。
「…………はい! 私だけでなく他のメンバーもみんなで、この子のことは守ります!」
頼まれたほうもやたら、気合の入った返事をするし。
すっかり問題児扱いされちゃってるなあ、僕ー。
牛ってのも安いのはこの町近郊にある牧場から仕入れているし、高級品になるとはるか海を隔てたヒノモトの和牛をトルア・クルア経由で輸入している。
そんなお店の入り口前、杭打ちくんを専用置き場に置きつつレリエさんにあれこれと説明する。行きつけで店長とも仲が良いので、半ば特別扱いでこうした専用置き場を作ってもらっているんだよね。
僕の正体についてもご存知だから、毎回個室に案内してもらえるほどのVIP待遇だ。最高だよー!
「それでこの和牛が美味しいのなんのって……モンスターの、それも生肉ばかり食べてきた僕が生まれて初めて火の通ったお肉を食べたのもこのお店だったんだけど、泣いたよねーはっきり言って」
「さらりと壮絶なこと言うわよね……」
食えるか食えないかしかなかった僕の味覚が、生命の息吹を吹き込まれた瞬間かもしれない。そのくらい熱くて美味しくて、連れてきてくれた先代院長先生の前で僕と来たら感動のあまり泣いちゃったもの。
なんなら居合わせた店長さんが唖然としつつ、やがてもらい泣きしだしたくらいだ。義理人情に厚い人なんだよ、ここの店主さんは。
噂をしつつ店に入ればほら、すぐに来てくれた。
「おう杭打ち! 今日はまたえらく別嬪さんを連れてきたな!」
「どうも、店長さん」
腕捲くりが力強い印象を与えてくる、大柄な短髪の中年男性。ブランドンさんという、この店の主さんだ。
僕は初対面以来この人に気に入られて、以後度々何かとお世話になっている。3年前の調査戦隊解散後からも僕を気遣ってくれている、まさしくおやっさんって感じの人だ。
ちなみにお嫁さんもいて僕と同い年の息子さん、一つ下の娘さんもいたりするねー。
豪快に笑ってくるブランドンさんに、僕は会釈した。そしてすぐに建屋の2階、4つある個室の一番奥の部屋に案内してもらう。
4人用の席を二人で広々使わせてもらう。窓からは町の様子が遠くまで見えて中々の眺望ってやつだよー。ここなら外から見られる心配もないし、遠慮なくマントも帽子も外せるねー。
すぐに水とお手拭きが配され、ブランドンさんがメニュー表を見せてくる。その中でも僕のお気に入り、2番目にお高い最高級和牛ステーキちゃんをそれぞれ400gずつ注文して、それからレリエさんを紹介することにした。
「こちらレリエさん。僕のパーティーメンバーなんです。最近新しく加入しましてー」
「はじめまして、レリエと申します」
「おう、ここの店主のブランドンだ、よろしくな! ウワサは聞いてるぜ、新世界旅団! エーデルライトのお嬢さんのとこだろ? お前さんの古巣の仲間がこないだも来て言ってたぜ、やっと杭打ちにも帰るところができてよかったってな!」
「え……」
思わぬ言葉。元調査戦隊の何人かが、そんなことを?
解散後にもちょくちょく会う人達だろうか。比較的僕に対して同情的というか、変わらぬ付き合いをしてくれてる元メンバーを思い浮かべる。
新世界旅団入団後にはまだ顔合わせしてないけど、祝福してくれてるのかな……3年前のことで思うところもあるだろうに。
なんだか嬉しさと裏腹の、罪悪感があるよー。
「複雑ー……」
「何言ってんだ、素直に喜んどけ! ……俺も安心してるんだぜ。お国にあんな目に遭わされたお前が、もう誰とも深く関わろうとしないんじゃないかってハラハラしてたんだ」
僕の頭の上に大きな掌を置いて、ぐりぐりと撫で回してくるブランドンさん。あうあう目が回るー。
仰る通り、この人とご家族の皆さんには大変なご心配をかけてた自覚はあるよー。
なんせ調査戦隊解散後、この店には一人でしか来なかったからねー。解散にまつわる話が周知されていくにつれ、ブランドンさんやその奥さん、子供さん達がしきりに励ましてきてくれたのが嬉しいしありがたかった。
そういう意味で、この店の人達も紛れもなく僕の恩人なんだよー。頭をひとしきり撫で回してブランドンさんが、ニヤリと笑う。
「それが3年経って、ようやっとまた誰かと繋がりを持とうとしている。ホッとするぜ……レリエさんだったか」
「え。あ、はい」
「こいつのこと頼むよ。腕っぷしはあるし頭も悪くはないんだが、まだまだ子供でな。そのくせ誰にも頼らず一人で抱え込んじまうから、見てるこっちは生きた心地がしないんだ。悪いが見といてやってくれ、な?」
レリエさんにそんなことを頼んで、たしかに僕はまだまだ子供だけど、一人で抱え込むなんてしないよー!
むしろ新世界旅団のみんなにはめちゃくちゃ頼りそうな気がするし、甘えすぎないように気をつけないとなーって思うほどだよー。
「…………はい! 私だけでなく他のメンバーもみんなで、この子のことは守ります!」
頼まれたほうもやたら、気合の入った返事をするし。
すっかり問題児扱いされちゃってるなあ、僕ー。