「あ、あの杭打さん。せっかくお会いできましたのでぜひともお願いしたいことがありまして」
「お願いー?」
リューゼについての話もそこそこにしていると、ミシェルさんが急におずおずと、緊張した様子で僕に向けて挙手をして発言の許可を求めてきた。
なんだろ、何かお願いごとかな? リューゼの好もあるし、ある程度なら聞いちゃうよー。
そう言うと彼女の顔は途端に明るくなった。よっぽど変なお願いごとでもしてきそうな気配だ。
ちょっぴりだけ身構えてると、ミシェルさんはやがてそのお願いとやらを話し始めた。
「その、一手御指南賜りたく! 我らがリーダー・リューゼリア様をして勝てなかったと仰るほどの伝説的最強の冒険者に、ぜひ今の私の実力についてご助言いただければと!」
「あ、いいですよー」
「軽っ」
思ってたよりはるかに普通なお願いごとだ、良かったー迷宮最深部まで連れて行ってくれとかわけ分かんない話じゃなくてー。
即答で頷くとレリエさんが唖然とした様子で呟いた。そりゃ軽いよ、高々模擬戦するくらいだしねー。それに向上心のある冒険者さんみたいだし、僕としては断る理由なんてどこにもないよ。
返答を受けてミシェルさんがパァっと輝く笑みを浮かべてくれた。いい笑顔だ、素敵だねー。
「ほ、本当ですか!? ありがとうございます!!」
「僕は今からでも構いませんよ。ミホコさん、外の運動場使っていいですかー? 後片付けはしっかりやりますしー」
「え。い、いいけど……大丈夫なの? ミシェルはBランクよ、相当な手練の冒険者だろうし、ソウマちゃん怪我するかも」
「そっち!?」
思い立ったが吉日、すぐにやろうかとミホコさんに伺いを立てたらなんか、へんてこりんな心配をされちゃった。見ればミシェルさんも唖然として院長先生を見てるし。
そういえばリリーさん言ってたなあ、この人ってば僕が調査戦隊でも最強格だったってのをイマイチ、信じてないって。またまたそんなことあるー? って思ってたけどマジみたいだよー。
「ミホコ、自分で言うのもなんだけど心配するのはむしろこっちのほうなんだけど……」
「えっ……いやでも、ソウマちゃんはまだDランクだし。調査戦隊で強かったって話も、こんな可愛くて小さな子が最強って言われてもイマイチ、ピンとこないし……」
「せめて可愛いはやめてほしいですー……」
「あっ、ごめんなさい! ええと、その、ほ、ほんわかしてる? わよね! ソウマちゃん!」
ああああなんのフォローにもなってないいいい! ほんわかって何いいいい!?
もーちょっとあるでしょこう、カッコいいとかダンディとか渋いとかイケてるとかイケメンとかイケメンとかイケメンとか! なんで可愛いかさもなければほんわかの二択なのー!?
理不尽極まる僕への表現の狭さに思わずガックリする。言っちゃった張本人のミホコさんはアワワワってなってるし、レリエさんは苦笑してるし、ミシェルさんはえぇ……? ってドン引きしてるしー。
収拾つかないよこれー。どうにかメンタルを立て直してついでに立ち上がる。
「うう、行きましょうかミシェルさん……ちょっと僕も身体を動かしたくなってきました……」
「エ"ッ"……あ、あの、当然手加減はしていただけるんですよね?」
「ある程度はしますけど、最初からそれありきで期待しないでほしいですねー」
なんかお願いしといて甘いことを言い出したミシェルさんにやんわり釘を差す。そりゃ、あくまで指導って体だし加減はするけど、ハナからそれを前提にするんだったらやらないほうがマシだよー?
あ、ミシェルさんの顔が盛大に引きつった。リューゼ以上の僕がそんなに優しくする気がないって思って、血の気が引いてるみたいだ。
おかしいな……この手の模擬戦とかって話だとリューゼのほうがまるで遠慮しなさそうなんだけど。
疑問に思って尋ねてみると、むしろミシェルさんたらキョトンとして、何言ってんのかなこの人的な視線を寄越してきた。
え?
「リューゼリア様は実戦こそ苛烈ですが、模擬戦や演習では非常に丁寧、かつ柔らかに教えてくださいますが……調査戦隊時代はそうでなかったのですか?」
「さ、さあ? あの頃はむしろリューゼのほうが、レイアとかウェルドナーのおじさんとかワカバ姉から教わる側だったから。思えば誰かに何かを教えてるところなんて見たことないなー……」
なんとなく、素の性格がとんでもなくワイルドだったから教え方もヤバいのかと勝手に思い込んでたよー。
割と温厚なんだねごめんリューゼ、今度会ったら謝ってみよう。
ちなみにレジェンダリーセブンどころか調査戦隊内で一番指導者として苛烈だったのはやはりワカバ姉だね。
リューゼなんかあんまりな言い草を喰らってブチギレて殴りかかってたくらいめちゃくちゃだった。一番紳士的だったウェルドナーさんまでたまに激怒する物言いだったんだから怖いねー。
「…………サラッとレジェンダリーセブンの半数以上の名前が挙げれられましたね。正直に、興奮を禁じえません。本物の杭打ちさんに今、貴重な機会を頂いているのですね……!!」
「え? そ、そう……ですかー」
いろいろ思い出してたら、ミシェルさんが感激した様子で震えていた。
そんなリアクションされるのは意外だよー……喜んでいい、のかなー?
「お願いー?」
リューゼについての話もそこそこにしていると、ミシェルさんが急におずおずと、緊張した様子で僕に向けて挙手をして発言の許可を求めてきた。
なんだろ、何かお願いごとかな? リューゼの好もあるし、ある程度なら聞いちゃうよー。
そう言うと彼女の顔は途端に明るくなった。よっぽど変なお願いごとでもしてきそうな気配だ。
ちょっぴりだけ身構えてると、ミシェルさんはやがてそのお願いとやらを話し始めた。
「その、一手御指南賜りたく! 我らがリーダー・リューゼリア様をして勝てなかったと仰るほどの伝説的最強の冒険者に、ぜひ今の私の実力についてご助言いただければと!」
「あ、いいですよー」
「軽っ」
思ってたよりはるかに普通なお願いごとだ、良かったー迷宮最深部まで連れて行ってくれとかわけ分かんない話じゃなくてー。
即答で頷くとレリエさんが唖然とした様子で呟いた。そりゃ軽いよ、高々模擬戦するくらいだしねー。それに向上心のある冒険者さんみたいだし、僕としては断る理由なんてどこにもないよ。
返答を受けてミシェルさんがパァっと輝く笑みを浮かべてくれた。いい笑顔だ、素敵だねー。
「ほ、本当ですか!? ありがとうございます!!」
「僕は今からでも構いませんよ。ミホコさん、外の運動場使っていいですかー? 後片付けはしっかりやりますしー」
「え。い、いいけど……大丈夫なの? ミシェルはBランクよ、相当な手練の冒険者だろうし、ソウマちゃん怪我するかも」
「そっち!?」
思い立ったが吉日、すぐにやろうかとミホコさんに伺いを立てたらなんか、へんてこりんな心配をされちゃった。見ればミシェルさんも唖然として院長先生を見てるし。
そういえばリリーさん言ってたなあ、この人ってば僕が調査戦隊でも最強格だったってのをイマイチ、信じてないって。またまたそんなことあるー? って思ってたけどマジみたいだよー。
「ミホコ、自分で言うのもなんだけど心配するのはむしろこっちのほうなんだけど……」
「えっ……いやでも、ソウマちゃんはまだDランクだし。調査戦隊で強かったって話も、こんな可愛くて小さな子が最強って言われてもイマイチ、ピンとこないし……」
「せめて可愛いはやめてほしいですー……」
「あっ、ごめんなさい! ええと、その、ほ、ほんわかしてる? わよね! ソウマちゃん!」
ああああなんのフォローにもなってないいいい! ほんわかって何いいいい!?
もーちょっとあるでしょこう、カッコいいとかダンディとか渋いとかイケてるとかイケメンとかイケメンとかイケメンとか! なんで可愛いかさもなければほんわかの二択なのー!?
理不尽極まる僕への表現の狭さに思わずガックリする。言っちゃった張本人のミホコさんはアワワワってなってるし、レリエさんは苦笑してるし、ミシェルさんはえぇ……? ってドン引きしてるしー。
収拾つかないよこれー。どうにかメンタルを立て直してついでに立ち上がる。
「うう、行きましょうかミシェルさん……ちょっと僕も身体を動かしたくなってきました……」
「エ"ッ"……あ、あの、当然手加減はしていただけるんですよね?」
「ある程度はしますけど、最初からそれありきで期待しないでほしいですねー」
なんかお願いしといて甘いことを言い出したミシェルさんにやんわり釘を差す。そりゃ、あくまで指導って体だし加減はするけど、ハナからそれを前提にするんだったらやらないほうがマシだよー?
あ、ミシェルさんの顔が盛大に引きつった。リューゼ以上の僕がそんなに優しくする気がないって思って、血の気が引いてるみたいだ。
おかしいな……この手の模擬戦とかって話だとリューゼのほうがまるで遠慮しなさそうなんだけど。
疑問に思って尋ねてみると、むしろミシェルさんたらキョトンとして、何言ってんのかなこの人的な視線を寄越してきた。
え?
「リューゼリア様は実戦こそ苛烈ですが、模擬戦や演習では非常に丁寧、かつ柔らかに教えてくださいますが……調査戦隊時代はそうでなかったのですか?」
「さ、さあ? あの頃はむしろリューゼのほうが、レイアとかウェルドナーのおじさんとかワカバ姉から教わる側だったから。思えば誰かに何かを教えてるところなんて見たことないなー……」
なんとなく、素の性格がとんでもなくワイルドだったから教え方もヤバいのかと勝手に思い込んでたよー。
割と温厚なんだねごめんリューゼ、今度会ったら謝ってみよう。
ちなみにレジェンダリーセブンどころか調査戦隊内で一番指導者として苛烈だったのはやはりワカバ姉だね。
リューゼなんかあんまりな言い草を喰らってブチギレて殴りかかってたくらいめちゃくちゃだった。一番紳士的だったウェルドナーさんまでたまに激怒する物言いだったんだから怖いねー。
「…………サラッとレジェンダリーセブンの半数以上の名前が挙げれられましたね。正直に、興奮を禁じえません。本物の杭打ちさんに今、貴重な機会を頂いているのですね……!!」
「え? そ、そう……ですかー」
いろいろ思い出してたら、ミシェルさんが感激した様子で震えていた。
そんなリアクションされるのは意外だよー……喜んでいい、のかなー?