ミシェルさんに僕の、というか"杭打ち"の正体を伝えたその人の名前を聞いて、真っ先に思ったのがまたか! って気持ちだ。
"戦慄の冒険令嬢"リューゼリア・ラウドプラウズ。レジェンダリーセブンの一人にしてかつては調査戦隊の中にあっても最強格として扱われていた、Sランク冒険者だねー。
「リューゼのパーティー、今カミナソールにいるんですか? ……ていうかペラペラと喋ってるんですかねー、あいつ」
「あっ、いえ! 一応パーティーの幹部クラスにだけ酒の席でコッソリと! かの調査戦隊最強とされた"杭打ち"の正体はソウマ・グンダリなる少年、少年? であると仰られていました!」
「なんで少年であるところに疑わしさを抱いてるのかしら……」
そんなリューゼのパーティーに属しているらしいベリーショートの女冒険者は、興奮とも畏怖ともつかないキラキラした目で僕を見て言う。
レリエさんの言うように、この期に及んでなんで少年ってところに首を傾げてるんだろうねー? 場合によってはこの場でギャン泣きするよー?
ちなみに一応威圧は解いてある。リューゼの縁者ならあまり、乱暴なことをするのもまずいし、何よりミホコさんの目も怖いからね。
彼女も僕が正体を隠して活動してることは承知なので、あっさり言い当てちゃったミシェルさんに対しては吹聴しないよう言い包めてくれたけど……とはいえ旧友を威圧で脅されるのも面白くはないだろうし。
さておき、リューゼがまさかカミナソールにいるとは思ってなかった。あいつ山と海なら海! ってことあるごとに言ってたのに、なんでまた内陸国を拠点にしてるんだろう?
ミシェルさんにいろいろ尋ねてみると、彼女はハキハキした声で喋り始めた。
「リューゼリア様は調査戦隊解散後、各地を転々としつつ仲間を集め、冒険者パーティー"戦慄の群狼"を組織されました! そして2年前に内戦状態だったカミナソールに辿り着き、反乱軍側に与して圧政を強いる政府軍を打倒、あっという間に新政府樹立の立役者になられたのです!」
「…………えぇーっと。冒険者、パーティー、だよねー?」
「なんで革命の手伝いしてるのかしら……」
カミナソールが内戦状態ってのも知らなかったけど、それをなぜかリューゼ率いる"戦慄の群狼"なるパーティーが主導的立場で成し遂げたってこともまったく知らなかったよー。
迷宮や冒険ほっぽらかして何してるんだろうね。前から気の向くままにわけの分からないことをするやつではあったけど、これはとびきり理解不能だ。
さしものレリエさんもミホコさんも絶句してドン引きしている。ミシェルさんだけだよ、やたら自慢げに誇らしげにしてるのは。
そして彼女は続け、胸を張りつつ説明するのだった。
「そこから今日に至るまでカミナソールを拠点として冒険活動を行ってきましたが、つい先般こちらの町にて、気になる事件が起きたとの情報が入り……リューゼリア様直々の命令で不肖、このミシェルが先遣を務めに参った次第です、杭打ちさん!」
「そ、そうなんですかー……気になる事件?」
「はい、他ならぬ杭打ちさんのことです! 調査戦隊解散以降、完全に鳴りを潜めていた冒険者"杭打ち"が騎士団長ワルンフォルースとSランク冒険者サクラ・ジンダイを相手に大暴れし、直後に新世界旅団なるパーティーへの参加を表明したと! そのような報せが冒険者新聞にて届き、動いた次第です!!」
「えぇ……?」
誰だよー! 余計なニュースを国外にまでばら撒いたのはー!
って、言うまでもなく冒険者新聞を発行している冒険新聞社の連中だねー。ギルドで酒を飲んでる酔っ払いに金を払って、あの茶番についての詳しいところを聞き出したと見たよー。
冒険者絡みのスクープを漁っては記事にして世界中にすっぱ抜くハイエナ記者連中は、冒険者達からマジで嫌われていながらも普通に近づいてきてはスルリと懐に入って気を許させて情報を得る手練手管からまんま蛇って揶揄される面倒臭さのプロだ。
僕もかつては正体を暴こうとした記者につきまとわれたもんだよー。面倒だからサクッと撒き続けてたら数ヶ月くらいで去っていったけど、こう来るかぁ……
頭を抱える僕に、反面にやけに嬉しそうな顔でミシェルさんが話を続ける。
「我々"戦慄の群狼"はその報を受け、即座にエウリデに拠点を移すことを決定しました! リューゼリア様の鶴の一声で、新世界旅団なるパーティーを見定める、場合によっては杭打ちさんを取り戻すと仰ったのです!」
「取り戻すって……あいつのものになった記憶なんて一瞬もないのにー……」
「そしてそのためにも一足先に情報収集役が必要ということで私が遣わされました! 故郷ですし、情報部のリーダーということもありますので! まさかこのような形でお会いできるとは思いもしませんでした、杭打ちさん!」
キラキラ輝く笑顔は元気そうでよろしいけれど、来るのかーリューゼ……騒がしくなりそうだよー。
というか冒険者新聞で出回っちゃってるってことは、世界中の冒険者達がもうすでに知ってるってことかー。うーん、なんか嫌な予感しかしないよー。
"戦慄の冒険令嬢"リューゼリア・ラウドプラウズ。レジェンダリーセブンの一人にしてかつては調査戦隊の中にあっても最強格として扱われていた、Sランク冒険者だねー。
「リューゼのパーティー、今カミナソールにいるんですか? ……ていうかペラペラと喋ってるんですかねー、あいつ」
「あっ、いえ! 一応パーティーの幹部クラスにだけ酒の席でコッソリと! かの調査戦隊最強とされた"杭打ち"の正体はソウマ・グンダリなる少年、少年? であると仰られていました!」
「なんで少年であるところに疑わしさを抱いてるのかしら……」
そんなリューゼのパーティーに属しているらしいベリーショートの女冒険者は、興奮とも畏怖ともつかないキラキラした目で僕を見て言う。
レリエさんの言うように、この期に及んでなんで少年ってところに首を傾げてるんだろうねー? 場合によってはこの場でギャン泣きするよー?
ちなみに一応威圧は解いてある。リューゼの縁者ならあまり、乱暴なことをするのもまずいし、何よりミホコさんの目も怖いからね。
彼女も僕が正体を隠して活動してることは承知なので、あっさり言い当てちゃったミシェルさんに対しては吹聴しないよう言い包めてくれたけど……とはいえ旧友を威圧で脅されるのも面白くはないだろうし。
さておき、リューゼがまさかカミナソールにいるとは思ってなかった。あいつ山と海なら海! ってことあるごとに言ってたのに、なんでまた内陸国を拠点にしてるんだろう?
ミシェルさんにいろいろ尋ねてみると、彼女はハキハキした声で喋り始めた。
「リューゼリア様は調査戦隊解散後、各地を転々としつつ仲間を集め、冒険者パーティー"戦慄の群狼"を組織されました! そして2年前に内戦状態だったカミナソールに辿り着き、反乱軍側に与して圧政を強いる政府軍を打倒、あっという間に新政府樹立の立役者になられたのです!」
「…………えぇーっと。冒険者、パーティー、だよねー?」
「なんで革命の手伝いしてるのかしら……」
カミナソールが内戦状態ってのも知らなかったけど、それをなぜかリューゼ率いる"戦慄の群狼"なるパーティーが主導的立場で成し遂げたってこともまったく知らなかったよー。
迷宮や冒険ほっぽらかして何してるんだろうね。前から気の向くままにわけの分からないことをするやつではあったけど、これはとびきり理解不能だ。
さしものレリエさんもミホコさんも絶句してドン引きしている。ミシェルさんだけだよ、やたら自慢げに誇らしげにしてるのは。
そして彼女は続け、胸を張りつつ説明するのだった。
「そこから今日に至るまでカミナソールを拠点として冒険活動を行ってきましたが、つい先般こちらの町にて、気になる事件が起きたとの情報が入り……リューゼリア様直々の命令で不肖、このミシェルが先遣を務めに参った次第です、杭打ちさん!」
「そ、そうなんですかー……気になる事件?」
「はい、他ならぬ杭打ちさんのことです! 調査戦隊解散以降、完全に鳴りを潜めていた冒険者"杭打ち"が騎士団長ワルンフォルースとSランク冒険者サクラ・ジンダイを相手に大暴れし、直後に新世界旅団なるパーティーへの参加を表明したと! そのような報せが冒険者新聞にて届き、動いた次第です!!」
「えぇ……?」
誰だよー! 余計なニュースを国外にまでばら撒いたのはー!
って、言うまでもなく冒険者新聞を発行している冒険新聞社の連中だねー。ギルドで酒を飲んでる酔っ払いに金を払って、あの茶番についての詳しいところを聞き出したと見たよー。
冒険者絡みのスクープを漁っては記事にして世界中にすっぱ抜くハイエナ記者連中は、冒険者達からマジで嫌われていながらも普通に近づいてきてはスルリと懐に入って気を許させて情報を得る手練手管からまんま蛇って揶揄される面倒臭さのプロだ。
僕もかつては正体を暴こうとした記者につきまとわれたもんだよー。面倒だからサクッと撒き続けてたら数ヶ月くらいで去っていったけど、こう来るかぁ……
頭を抱える僕に、反面にやけに嬉しそうな顔でミシェルさんが話を続ける。
「我々"戦慄の群狼"はその報を受け、即座にエウリデに拠点を移すことを決定しました! リューゼリア様の鶴の一声で、新世界旅団なるパーティーを見定める、場合によっては杭打ちさんを取り戻すと仰ったのです!」
「取り戻すって……あいつのものになった記憶なんて一瞬もないのにー……」
「そしてそのためにも一足先に情報収集役が必要ということで私が遣わされました! 故郷ですし、情報部のリーダーということもありますので! まさかこのような形でお会いできるとは思いもしませんでした、杭打ちさん!」
キラキラ輝く笑顔は元気そうでよろしいけれど、来るのかーリューゼ……騒がしくなりそうだよー。
というか冒険者新聞で出回っちゃってるってことは、世界中の冒険者達がもうすでに知ってるってことかー。うーん、なんか嫌な予感しかしないよー。