17

 前半も、半分近くを消化した。スコアは依然、〇対〇だが、ホワイトフォードは攻められ続けていた。
 右サイドで、ウェブスターがスロー・インを得た。ボールを手に持った4番が、大きく助走を取る。
 4番は上手投げで、ライナー性のスローをした。ヴィクターは突如、後ろにダッシュ。マークを振り切り、胸で近くの3番に落とす。
 3番と平行の位置へとヴィクターは移った。3番はダイレクトで転がす。
 ヴィクターにボールが収まった。するとウェブスターの選手たちが、連動して動き始めた。ホワイトフォードの注意が、走り込む選手にも向かう。
 流麗なフォームで、ヴィクターがドリブルを始めた。ホワイトフォードの17番が、慌てて寄せていく。
 ヴィクターは、とんっと右にステップを踏んだ。17番の身体が軽く左に傾く。
 見届けたヴィクターは、真左に小さく出した。17番が足を伸ばすが、ヴィクターは早いツー・タッチ目で外を突破した。無駄を削ぎ落とした洗練されたドリブル・テクニックだった。
 続いて立ちはだかった2番をヴィクターは右、左のダブル・タッチで抜き去り、左足を振り抜いた。
 警戒して引いていた桐畑が、必死のスライディングを掛けた。桐畑の足に当たったシュートは軌道が変わり、ゴールの右を通過する。
 外に出たボールはキーパーが確保して、ゴール・キックとなる。
「良いカバーリングだよ! 冴えてる、冴えてる! ホワイトフォード、この流れに乗ってこう!」
 口に左手を置いた遥香が、快活な声音で叫んだ。
 すでに立ち上がっていた桐畑は、大きく息を吸い込んだ。
「ヴィクターは、俺が見る! やっぱな、エースの相手は、エースがしなきゃいけねえだろ! だーいじょうぶだよ! 綺麗さっぱり、見事に止めてやるから!」
 大音声で自らを鼓舞した桐畑は、ヴィクターに近づいた。ゴール・キックを注視するヴィクターは、意に介した様子のない真顔だった。