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 後半も十五分が経過した。スコアはなおも、一対一。
 エドは終始、惜しい攻めを続けていた。エドの頑張りに守備陣も奮起し、二人掛かりだが、なんとかマルセロを食い止めていた。
 エドの近くで、桐畑がボールを受けた。露骨なまでに左を見ながら、エドに、ノー・ルックの短いパスを送る。
(ケントの奴も、俺のおかげでノリノリだな。いっつもは、あんな風にはテクらないのにさ。よーし、よしよし、俺は、さらにその上を行ってやる! そんでもって、ホワイトフォードのみんなのために、なにがなんでもぜってー勝つ!)
 トラップしたエドは、二回、三回とボールを跨ぐ。相対する3番の反応を予測しながら、身体に染みついたカポエィラのリズムでゆっくりと。
 一瞬の隙が見えた。エドは、下ろした右足をすぐさまボールに遣った。ふわりと浮かせて、3番の右を突破する。
 慌てた他の選手が詰めてきた。エドはすかさず、左に転がす。
 マークの外れたブラムが、ダイレクト(パスを止めないでのプレー)で右足を振り抜いた。
 低弾道の高速シュートはキーパーの手を掠め、ゴールの内側を通過した。
 よしっ! とブラムは、右手を握り締めて短く叫んだ。エドは心のままに、全速力で駆け寄った。気付いたブラムが慌てて出した右手に、思いっきりハイ・タッチを決める。
 一対一。値千金の同点弾だった。