「月瀬さんは、芽依菜のどんなところが好きだったんですか?」
「……そうだな、基本的に誰にでも優しいのに、流されるでもなく真ん中にどーんっと芯がある感じ?」
「ああ、わかります。彼女は揺るぎない自分を持っていた……昔からそうです」
「そっか、なら俺たちは、どの時代に出会ってたとしても、どうしたって花織メイナに恋してたってわけだ」
「……そうですね。だから、月瀬さんの知ってる彼女を、もっと教えてください。彼女の時間は、もう増えることはないけど……過去の一欠片も、取り零したくないんです」
「俺も同じだ。俺が出会う前のメイのことも、もっと教えてくれ」

 こうして、亡くなった一人の女性を愛し続ける僕たちは、毎年彼女の誕生日に集まることに決めた。
 本当は、すぐにでもたくさん話したかったし、毎日だって彼女のことを聞きたかった。
 それでも、お互い言葉にしなくともわかった。限られた思い出を語り尽くしてしまうことで、彼女が本当に過去になってしまうようで怖かったのだ。

 葬儀の日でも命日でもなく、芽依菜の誕生日を選んだのは、彼女について語る日は別れを嘆くよりも、出会いを祝いたかったからだ。
 そうして、この出会いをきっかけに、僕たちにとって彼女との記憶は埋葬すべき過去ではなく、共有して笑い合う未来の約束となった。


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