向かいの席で関本は、長めの前髪を揺らしながら、おいしそうに卵とじうどんをすすっていた。

「負けるわけにはいかない。今日こそ、今日こそは、わたしも麺をすすってみせる……!」

「たまき、考えてること口に出てるよ。大げさだな」

 関本になんと言われようと、関係ない。

 たまきは強い決意を胸に、あくまで喉越しを味わいたいのだ。

 暖かい出汁に滴ったきつねうどんを二本、慎重に箸で持ち上げると、一気に喉に流し込んだ。

 が、次の瞬間、たまきは豪快に咳き込んだ。うどんを喉に詰まらせてしまい、あまりの苦しさから一筋の涙さえこぼしている。

「ゲホッ! ゲッホッ――!」

「だから無理しなくてもいいのに。はい、水」

 悔しさでいっぱいになりながらも、たまきは関本の渡してくれたコップに手を伸ばすしかなかった。