花子はこのとき、まだ愛されるということを知らなかった。

 そして、人を愛するということも……然り。



 けれど姉の町子と大谷秀夫の二人の姿を見て、こうありたいという小さな理想がこのとき出来上がっていた。

 そして目を瞑った先に見えた人物は、正幸であった。