『なんだと!? 自分自身を魔剣にして、ボクにダメージを!? しかし、どうしてそんなことが可能なんだ!?』

 身体からおびただしいほどの出血をして、スルトが苦しむ。
 
「わからない? 【原始の炎】も、【原始の雷】も、あなたに対策されてダメージが出ない。ただしそれは、一人ひとりが別々に行動したから」

 しかし、二つ同時に攻撃をすれば、それぞれ違うダメージを与えられる。

 わたしは、雷属性の炎を撃てる。
 またクレアさんは、炎属性の雷を。

「名付けて……【原始の(ホノヲ)】と」

「【原始の(ヰカヅチ)】ですわ」
 
 体当たり、まさに行き当たりばったりの攻略法だった。しかし、効果は絶大のようである。

『バカな。属性を二つ掛け合わせただけで、こんな攻撃が可能になるなんて!?』
 
「バカは、そちら様ですわ」

 クレアさんが、魔剣(わたし)を振るう。

『いかん、なはっ! ぬおおおおおおっ!』

 スルトは腕を刃に変えて、わたしをガードしようとした。

 しかし原始の焔によって、スルトの身体は腕ごと切断される。
 

「わたくしとキャルさんに、不可能はありませんの。キャルさんは魔剣の本質、その片鱗に触れて、魔剣の構造をすべて理解なされた」

 雷撃の光と音が、原始の霹をまとった槍となり、スルトの身体を貫く。

「対するわたくしは、【聖剣殺し】と呼ばれるほど、魔法武器に対する適性がゼロ。しかし、キャルさんを通してなら、その魔剣を操れるのですわ」

「さらに、わたしの肉体を通して、レベッカちゃんに【聖剣殺し】の要素をもたらすことができる!」

 これは、わたしにとって賭けだった。

 わたしを魔剣として、クレアさんの力を引き出せるかどうかの。

 うまくいった。
 
『つまりあんたは、アタシ様たち三人の攻撃を、同時に受けているのさ!』

『おのれっ!』

 スルトが、再生を始める。しかし、いびつな形でしか復元できない。今まで受けたことのないタイプの、【原始】の力を食らったせいだろう。

『こんな力、ボクは認めないぞ! 魔剣の頂点であるボクを超える力なんて!』

『認めるしかないんだよ、スルトッ! ニンゲンの叡智は、弱き者たちの智慧は、アタシ様たちを凌駕するんだ! アタシ様たち魔剣すら、この子たちは成長させちまうのさ! その集大成を、今見せてやるよ!』

 レベッカちゃんの合図に合わせて、わたしたちは跳躍した。

 スルトを、星ごと破壊するために。

 わたしはクレアさんと共に、レベッカちゃんの柄に足をかけた。足刀蹴りの体勢になる。

『トドメだよ、スルト!』

 レベッカちゃんが炎魔法でブーストを掛けて、蹴りを放つわたしたちと急降下する。

 狙うは、隕石の中心部だ。

「【雷霆蹴り(トニトルス)】!」

 わたしはクレアさんと声を合わせる。

 魔剣と同化したわたしと、聖剣殺しのクレアさんの蹴りが、スルトの身体を突き破った。
 
 わたしたち二人は流れ星のように輝き、そのまま隕石の中央をも貫く。

 聖剣殺しの一撃を喰らえば、さすがのスルトでさえ再生できなかったようである。
 
 叫び声さえ焼き尽くされて、スルトは消滅した。

 爆発でもするかなと思っていたが、雲のようにゆっくりと消えていく。
 
「終わった」



『いや、あんたの人生は、これからさ』


 

 わたしは、レベッカちゃんを憑依させた状態から、戻れなくなっていた。