「ギルティですわ。キャルさん」

 珍しく、クレアさんが声を荒らげる。
 同性として、やっぱりスルトが許せないんだね。

「だよねー。ひどすぎる」
 
 わたしとクレアさんの意見が一致した。
 
「そうこなくては。やはりギルティでヤンスね」

「うん。スルトが女心のわからない自己中だってことは、わかった」

 リンタローとヤトも、同意見のようだ。

「リンタロー。スルトの言うてる『太陽になる』ってことやけどな」

「なんでヤンスか? フワルー」

「理由は、これちゃうかな?」

 フワルー先輩が、とある文献を広げた。『魔力の起源と、レーヴァテインの関連についての論文』という本である。

 それによると、「魔力は、降り注ぐ太陽光線が地表に当たることによって、体内に蓄積される」という説があった。

「実は魔術協会でも、魔力の起源が太陽説は、賛成派と反対派で二極化しているねん」

「未だにでヤンスか? まったく人間ってのは、自分の考えを曲げない連中が多いでヤンスね。事実を理解できないでヤンス」

 エルフ族の間では、仮説どころかすでに常識化しているらしい。もっとも、自然と共存しているエルフなら、太陽光線から魔力を作り出していると言われたら信じちゃいそう。

「で、スルトが太陽になるために開発したのが、魔剣【レーヴァテイン】やねん」

 スルトは一度、レーヴァテインを使って太陽に挑んだことがある。自分の住んでいた星を燃やして太陽に変化させ、太陽に突っ込んでいった。
 しかし、結果は見事に返り討ち。スルトは世界ごと死んだ。

 スルトは死の間際に、並行世界中に、レーヴァテインの破片をばらまいたという。

「その破片のひとつが、レベッカちゃん?」

「かもしれへんな」

 この論文も、レーヴァテインの破片が見つからなかったことで、説がウヤムヤにされた。書いた人物も、魔術協会を追放されたという。

「ほんで、この論文やけど。キャル、だれが書いたと思う?」

「……まさか!」

 わたしは、レーヴァテインと因縁が深い人物を、ひとり知っている。

「せや。魔女イザボーラや」

 彼女はこの説を説いて、学会を追放された。結果魔女となって、世界に復讐を始めたのだろう。

「とまあ、こういうこっちゃ。つまりレベッカ、というかレーヴァテインというんは、大地を魔剣に変えてしまう究極の兵器、ちゅうこっちゃ」

 世界を炎に包んで、太陽と化してしまう武器。それが、レーヴァテインなのだ。

 スルトはレーヴァテインをわたしに作らせて、自分が太陽となって邪悪な魔力を世界中に降り注ぎ、暗黒の世界を作ろうとしているつもりなのだろう。

 そんなことは、絶対に許さない。