「いいの、リンタロー? 手加減できないかもしれないのに」

「全力でどうぞ、キャル殿。足の一本くらい斬られないと、レベッカ殿の実力がわからないでヤンス」

 どこまでも体験主義な、天狗(イースト・エルフ)だ。

「バカな天狗で、ごめんなさい。キャル。こいつは、頭が好奇心でいっぱいで」

「いいよいいよ。ヤト」

 魔剣を試したいのは、こちらも同じである。

「それに、この魔球【TORAHUGU(トラフグ)】の試し切りもまだでヤンスので」

「その魔剣、【魔球 TORAHUGU】って名前なんだ」
 
「ソレガシが付けたでヤンス。プリンテス師匠は失敗作とおっしゃっていたでヤンスが、使い手がいなかっただけでヤンスね。ソレガシなら、三〇〇%のポテンシャルを……」

 リンタローが、鉄球型魔剣をカカト蹴りで浮かべた。

「出せるでヤンス、よ!」

 見えないケリで、リンタローが魔球を打ち込んでくる。

「うわっと!」

 すかさず、レベッカちゃんで防御した。

 やはり鉄球型の魔剣も、感触が生々しい。

「まだまだ!」

 スピードが落ちきっていない魔球を、リンタローがさらに蹴り込む。

「うおおう!」

「ここからでヤンスよ!」

 リンタローが、身体をのけぞらせながら跳躍した。右手を魔球に叩きつける。

「【アロー・スパイク】!」

 丸かった魔球が、三日月状の刃となって降下してきた。

『なるほど、球状のものを刃に変形させて斬るんだね!』

「ボールと言うより、丸いブーメランだね!」

『アハハ! 言えてるよ! そら!』

 アッパー気味の打ち上げによって、リンタローの魔球を弾き返す。

「あっちゃー……よっと」

 虚空を飛んでいった魔球は、リンタローの手にポスッと収まった。

「すべてをかけた、必殺技だったでヤンスよ。それを、あっさりと打ち返されたでヤンス」

 リンタローが、白旗を上げる。

「これまでの戦闘経験を分析して、かつてのキャル殿には一〇〇%勝てる見込みだったでヤンスが。ホントに強くなったでヤンスよ」

『やるねえ。このアタシ様相手に、勝てると思っていたとはね』

「こう見えてソレガシは、いつだって全力全開なんでヤンスよ。そうでないと、楽しくないでヤンスよ」
 
 リンタローがいうと、ジョークに聞こえないから不思議だ。
 おそらく、本気でカツつもりだったんだろうなあ。

 でも、当時のわたしでリンタローに勝てたかな。
 
「レベッカちゃんの調整に、クレアさんの魔剣。おまけに、自分の防具まで作るわけだから、時間があるかなぁ」

「キャル殿の防具でヤンスが、助っ人を呼んだでヤンスよ」

 リンタローの知り合いだよね。まさか、とは思うけど。
  
 ズシンズシンと、聞き慣れた音が。
 
「おーい」

 魔王の城を思わせる移動要塞型ゴーレムが、ノッシノッシとダクフィの街に現れた。

 操るのはもちろん、獣人族の巨乳お姉さんである。
 
「フワルーさん!」

「先輩! シューくんも!」