「何かあったら連絡しますね、か」
あれから一週間が経ったが、彼女からは何の連絡もなく胸のなかを何かどす黒い物がうごめくような感覚を覚えていた。もしかしたら内出血などで容態が急変し大事に至っているのではないか、と考えても彼女の連絡先を聞いていなかったので尋ねることは出来ない。無論何事もなかった可能性の方が高いのだが、昔から自分が知覚できない物事を想像の中で無限に広げてしまう癖があり今回の出来事もまた楽観視する事が出来なかった。とは言えこちらからはどうすることも出来ないのだから日常を過ごす他道はなく、今日もまた学校に行き授業を受け家に帰る。考えすぎても仕方がないので、とりあえず課題を終わらせ一息付こうとしたところでラインの通知音が鳴った。

 ラインの設定を弄っていなかったので液晶には送られてきた文がそのまま表示されていた。
 「どうもー」
急いで返信内容を考える。とりあえずこちらも挨拶を返すべきだろうか?
 「この度は」
いやいやラインなのだからある程度砕けた表現が適当なのではないか?
 「どうも」
これはなかなか気に入った表現だったがいかんせん砕けすぎではないのだろうか。考えている間に二文目が送られてきた。
 「あ、分かりますか?私の事。あの、被害者です」
突然の追い打ちに思考が狭まり頭の中に浮かんだ適当な文を送った。
 「どうも、加害者です」
これはやってしまった。まるでコントのようなやり取りではないか。これで賠償額が跳ね上がったらさすがに笑えない。すると即座に返信が返ってきた。なんとも言えない顔をした犬がにやりと笑っているスタンプでとりあえず気は悪くしていなさそうでほっとした。