視覚を自身のもとに戻した俺は、それはもうマリアナ海溝よりも深いため息をついた。
「はぁ~……胃が痛てぇよ」
王太子と一対一で会話とか、めっちゃ緊張したわ~
日本で例えるなら、天皇家の皇太子と面談するようなものだぜ?
これで緊張しない奴なんて、まずいないだろう。
「まあ、予想外のことは起きたが、結果だけ見れば悪くない」
レイン殿下とよさげな関係を築けたのはいいことだ。
恐らく向こうは、俺の情報収集能力や潜入能力を欲しがっているのだろう。だから、いずれ俺にコンタクトを取りに行くと言ったのだ。
それなら、敵対……という面倒なことにはならなくて済む。
王太子と敵対とか、考えただけで嫌になるからね。
「さてと。じゃ、ガリアは今何やってんだろ?」
今頃書類が無くなったことに気付いて、慌てふためいているんだろうな~と思いながら、俺は執務室にいるスライムに視覚を移す。
「くそっ~!! 何でこんなことにぃいいい!!!!」
「お、落ち着いてください」
すると、そこには荒ぶるガリアと、そんなガリアを必死に宥めようとする家宰の姿があった。
護衛も部屋の中におり、手を貸そうか迷っているような感じだった。
「うっわーこりゃ想像以上の荒れようだ」
まさかガリアがここまで荒れるとは思いもしなかった。
ガリアって、無意味なことはしない主義だから、こういう時は感情的になるよりも、その状況を打開する方法を、イラつきながらも必死に模索するんだと思ってたんだよね。
「ん~……何かこれ、薬物の禁断症状や副作用も紛れ込んでいるような気がするのは気のせいかな~?」
いくら何でもここまで荒れるのは……異常すぎる。それに、顔色もちょっとおかしい。
確かに、荒ぶっているから、真っ赤になるのはおかしい話ではないのだが、それでもちょっと……赤すぎる。
血管もどこか浮き出ており、異様な感じだ。
ああ、そういやキルの葉を吸い過ぎると、脳が縮むって言ってたな。
だから、あんなガリアらしくない行動を取っているのかも!
「まー自業自得だよね~」
社会的にも追い詰められ、薬で心身共に追い詰められ――
もう、ガリアは貴族としてだけではなく、人間として終わり始めているようだ。
なら、その終わりに、俺が手を加えてあげようか。
「行くか。ネムも」
「きゅきゅきゅ!」
俺はネムを抱きしめ、立ち上がると、空間転移の詠唱を唱える。
そして、次の瞬間には、シュレインにあるフィーレル侯爵邸……の下水道の出口に居た。
直接中に転移しちゃうと、結界に引っかかっちゃうからね。
だから、下水道を経由して結界を突破し、そこからガリアの下へ転移する……というのが最適解なのだ。
「よし。行くか」
「きゅきゅ!」
こうして、俺は下水道の先へと向かって歩き出した。
数分後。
ある程度進んだところで、俺は立ち止まると、小さく息を吐く。
「突破したようだな……」
感覚で、屋敷の結界をすり抜けたと判断した俺は、ガリアの下へ行くべく、詠唱を紡ぐ。
「魔力よ。空間へ干渉せよ。空間と空間を繋げ。我が身をかの空間へ送れ」
そして、空間を超える。
次の瞬間――
「……1か月ぶりだな。なに無様を晒してんだよ。ガリア」
執務室の隅に転移した俺は、前方で荒ぶるガリアに向かって、どこか笑みを浮かべながらそう言うのであった。
「はぁ~……胃が痛てぇよ」
王太子と一対一で会話とか、めっちゃ緊張したわ~
日本で例えるなら、天皇家の皇太子と面談するようなものだぜ?
これで緊張しない奴なんて、まずいないだろう。
「まあ、予想外のことは起きたが、結果だけ見れば悪くない」
レイン殿下とよさげな関係を築けたのはいいことだ。
恐らく向こうは、俺の情報収集能力や潜入能力を欲しがっているのだろう。だから、いずれ俺にコンタクトを取りに行くと言ったのだ。
それなら、敵対……という面倒なことにはならなくて済む。
王太子と敵対とか、考えただけで嫌になるからね。
「さてと。じゃ、ガリアは今何やってんだろ?」
今頃書類が無くなったことに気付いて、慌てふためいているんだろうな~と思いながら、俺は執務室にいるスライムに視覚を移す。
「くそっ~!! 何でこんなことにぃいいい!!!!」
「お、落ち着いてください」
すると、そこには荒ぶるガリアと、そんなガリアを必死に宥めようとする家宰の姿があった。
護衛も部屋の中におり、手を貸そうか迷っているような感じだった。
「うっわーこりゃ想像以上の荒れようだ」
まさかガリアがここまで荒れるとは思いもしなかった。
ガリアって、無意味なことはしない主義だから、こういう時は感情的になるよりも、その状況を打開する方法を、イラつきながらも必死に模索するんだと思ってたんだよね。
「ん~……何かこれ、薬物の禁断症状や副作用も紛れ込んでいるような気がするのは気のせいかな~?」
いくら何でもここまで荒れるのは……異常すぎる。それに、顔色もちょっとおかしい。
確かに、荒ぶっているから、真っ赤になるのはおかしい話ではないのだが、それでもちょっと……赤すぎる。
血管もどこか浮き出ており、異様な感じだ。
ああ、そういやキルの葉を吸い過ぎると、脳が縮むって言ってたな。
だから、あんなガリアらしくない行動を取っているのかも!
「まー自業自得だよね~」
社会的にも追い詰められ、薬で心身共に追い詰められ――
もう、ガリアは貴族としてだけではなく、人間として終わり始めているようだ。
なら、その終わりに、俺が手を加えてあげようか。
「行くか。ネムも」
「きゅきゅきゅ!」
俺はネムを抱きしめ、立ち上がると、空間転移の詠唱を唱える。
そして、次の瞬間には、シュレインにあるフィーレル侯爵邸……の下水道の出口に居た。
直接中に転移しちゃうと、結界に引っかかっちゃうからね。
だから、下水道を経由して結界を突破し、そこからガリアの下へ転移する……というのが最適解なのだ。
「よし。行くか」
「きゅきゅ!」
こうして、俺は下水道の先へと向かって歩き出した。
数分後。
ある程度進んだところで、俺は立ち止まると、小さく息を吐く。
「突破したようだな……」
感覚で、屋敷の結界をすり抜けたと判断した俺は、ガリアの下へ行くべく、詠唱を紡ぐ。
「魔力よ。空間へ干渉せよ。空間と空間を繋げ。我が身をかの空間へ送れ」
そして、空間を超える。
次の瞬間――
「……1か月ぶりだな。なに無様を晒してんだよ。ガリア」
執務室の隅に転移した俺は、前方で荒ぶるガリアに向かって、どこか笑みを浮かべながらそう言うのであった。