ガリアの不正証拠を難なく手に入れた俺は、次の行動に移る。
まず、大量に手に入れた不正証拠だが、俺には権力者への伝手が絶望的なまでにない為、このままでは全然活用できずに終わってしまう。
一応ジニアスさんに渡せば、いい所へ持って行ってはくれるだろうけど……それでもちょっとキツイかな。
忘れがちだが、ガリアって侯爵家当主だからね。それも、かなり力のあるところ。
だから、ここは数の暴力と権力で、有無を言わさず終わらせるとしよう。
作戦はいたってシンプル!
スライムを使って王都内にいる有力貴族たちの部屋に、これらの書類を送ってあげる。ただそれだけ!
ふっふっふ。何せ、俺は王城内にも侵入できたのだ。貴族の屋敷に侵入することぐらい、造作もない。
……嘘です! 結構大変でした!
特に上級貴族はヤバかった……!
「じゃ、名簿を作るか」
そう呟くと、俺はリュックサックから鉛筆を取り出した。
そして、全ての不正証拠の書類の裏に、これから送る貴族家の名前を書き始めた。
これを受け取った貴族たちが、直ぐに行動できるように――
◇ ◇ ◇
「はい、完成っと」
手をパキパキと鳴らしながら俺は書類を見やる。
ふと、外を見てみると、空は薄っすらと青白く光っており、もうすぐ夜が明けることを物語っていた。
「ね、眠いぃ……」
夜通し書き続けていたせいで、めちゃくちゃ眠い。疲労が半端ない。
「きゅ~? きゅきゅきゅ!」
ネムは、俺を励ますように鳴き声を上げる。
うん。ありがとう。
だが、流石に眠い……
「……いや、流石にここで寝るのは避けたい……!」
そろそろガリアも異変に気づいている頃だろうし、俺に矛先が向く前にここから避難しないと。
そう思った俺は、即座に荷物を纏めると、空間転移で、王都ティリアン――のちょっと前に暇つぶしで滅ぼした犯罪組織の地下アジトに転移した。ここにいた奴ら、金を沢山持ってたんだけど、俺ってつい最近までスライムに物を持たせた状態で召喚して持ってこさせる……という発想が無くてさ。
本には載ってたけど、見落としてたっていうね……
結局気が付いた時には誰かに根こそぎ持ち去られていた。
悔しい!
だから、今後制圧出来そうな犯罪組織を見つけたら、凸ってみようと思う。
そして、金を回収するのだ!
そんな他人が聞いたら正気を疑われそうなことを思いながら、真っ暗なアジトに転移した俺は、光球で明かりをつける。
「ん~……見た感じ安全そうだね。それじゃ、入り口やその周辺に厳戒態勢を敷いて、俺はゆっくり寝るとしよう」
そう言うと、俺はリュックサックを地面に置いた。そして、ひんやりとした硬い石の地面に寝転がる。
「きゅきゅきゅ!」
すると、ネムが俺の頭の下に入り込み、枕になってくれた。
流石ネム! 気が利く~!
「んじゃ、寝るか」
そう言って、俺は光球を消すと、直ぐに意識を手放した。
◇ ◇ ◇
シンが不正証拠の書類を根こそぎ奪ってから、少し経った頃。
フィーレル侯爵邸執務室にて。
「……あー疲れて来た。そろそろ吸わんと」
書類を書いていたガリアは途端に手を止めると、イラついたように後髪を掻く。
これ以上は禁断症状が出てきそうだと判断したガリアは、いつものように引き出しの鍵を解錠し、その引き出しを引く。
そして、戦慄する。
「な、ない!」
ない。ないのだ。
数時間前まであったキルの葉が、無くなっているのだ……!
しかも、その他機密書類も消えている。
「な、どこへ!?」
さしものガリアも狼狽し、焦りを見せる。
「だ、誰か……いや、損傷はないし、無理やり解錠された痕跡も無い。となると、俺がどこか別の所に置いたのか……?」
ここ最近、物忘れが頻発しているのを思い出したガリアは、咄嗟にそうだと判断すると、執務室の中を捜索しにかかる。
他の引き出しを、タンスの中を、植木の隙間を、絵画の裏を――
捜して捜して、とにかく捜しまくった。
だが――
「見つからん」
一向に見つからない。
あれが事情を知らない第三者の目に触れるのは避けたい。
大抵のことなら無理やりもみ消すこともできるが――その選択はあまり取りたくない。
「くそ! くそ! くそ! どうしたらいいんだ……ッ!」
ガリアの声は、執務室に虚しく響き渡るのであった。
まず、大量に手に入れた不正証拠だが、俺には権力者への伝手が絶望的なまでにない為、このままでは全然活用できずに終わってしまう。
一応ジニアスさんに渡せば、いい所へ持って行ってはくれるだろうけど……それでもちょっとキツイかな。
忘れがちだが、ガリアって侯爵家当主だからね。それも、かなり力のあるところ。
だから、ここは数の暴力と権力で、有無を言わさず終わらせるとしよう。
作戦はいたってシンプル!
スライムを使って王都内にいる有力貴族たちの部屋に、これらの書類を送ってあげる。ただそれだけ!
ふっふっふ。何せ、俺は王城内にも侵入できたのだ。貴族の屋敷に侵入することぐらい、造作もない。
……嘘です! 結構大変でした!
特に上級貴族はヤバかった……!
「じゃ、名簿を作るか」
そう呟くと、俺はリュックサックから鉛筆を取り出した。
そして、全ての不正証拠の書類の裏に、これから送る貴族家の名前を書き始めた。
これを受け取った貴族たちが、直ぐに行動できるように――
◇ ◇ ◇
「はい、完成っと」
手をパキパキと鳴らしながら俺は書類を見やる。
ふと、外を見てみると、空は薄っすらと青白く光っており、もうすぐ夜が明けることを物語っていた。
「ね、眠いぃ……」
夜通し書き続けていたせいで、めちゃくちゃ眠い。疲労が半端ない。
「きゅ~? きゅきゅきゅ!」
ネムは、俺を励ますように鳴き声を上げる。
うん。ありがとう。
だが、流石に眠い……
「……いや、流石にここで寝るのは避けたい……!」
そろそろガリアも異変に気づいている頃だろうし、俺に矛先が向く前にここから避難しないと。
そう思った俺は、即座に荷物を纏めると、空間転移で、王都ティリアン――のちょっと前に暇つぶしで滅ぼした犯罪組織の地下アジトに転移した。ここにいた奴ら、金を沢山持ってたんだけど、俺ってつい最近までスライムに物を持たせた状態で召喚して持ってこさせる……という発想が無くてさ。
本には載ってたけど、見落としてたっていうね……
結局気が付いた時には誰かに根こそぎ持ち去られていた。
悔しい!
だから、今後制圧出来そうな犯罪組織を見つけたら、凸ってみようと思う。
そして、金を回収するのだ!
そんな他人が聞いたら正気を疑われそうなことを思いながら、真っ暗なアジトに転移した俺は、光球で明かりをつける。
「ん~……見た感じ安全そうだね。それじゃ、入り口やその周辺に厳戒態勢を敷いて、俺はゆっくり寝るとしよう」
そう言うと、俺はリュックサックを地面に置いた。そして、ひんやりとした硬い石の地面に寝転がる。
「きゅきゅきゅ!」
すると、ネムが俺の頭の下に入り込み、枕になってくれた。
流石ネム! 気が利く~!
「んじゃ、寝るか」
そう言って、俺は光球を消すと、直ぐに意識を手放した。
◇ ◇ ◇
シンが不正証拠の書類を根こそぎ奪ってから、少し経った頃。
フィーレル侯爵邸執務室にて。
「……あー疲れて来た。そろそろ吸わんと」
書類を書いていたガリアは途端に手を止めると、イラついたように後髪を掻く。
これ以上は禁断症状が出てきそうだと判断したガリアは、いつものように引き出しの鍵を解錠し、その引き出しを引く。
そして、戦慄する。
「な、ない!」
ない。ないのだ。
数時間前まであったキルの葉が、無くなっているのだ……!
しかも、その他機密書類も消えている。
「な、どこへ!?」
さしものガリアも狼狽し、焦りを見せる。
「だ、誰か……いや、損傷はないし、無理やり解錠された痕跡も無い。となると、俺がどこか別の所に置いたのか……?」
ここ最近、物忘れが頻発しているのを思い出したガリアは、咄嗟にそうだと判断すると、執務室の中を捜索しにかかる。
他の引き出しを、タンスの中を、植木の隙間を、絵画の裏を――
捜して捜して、とにかく捜しまくった。
だが――
「見つからん」
一向に見つからない。
あれが事情を知らない第三者の目に触れるのは避けたい。
大抵のことなら無理やりもみ消すこともできるが――その選択はあまり取りたくない。
「くそ! くそ! くそ! どうしたらいいんだ……ッ!」
ガリアの声は、執務室に虚しく響き渡るのであった。