「ん~……もうちょっと奥の魔物と戦ってみようかな?」
初日にオーク8体と戦ったが、あれ以降は安全面を考えて、基本的にゴブリンとしか倒していない。
オークと戦うこともあるけど、その場合はオークが1、2体しかいない時を狙って倒していた。
最初はこれでもだいぶ手ごたえがあったんだけど……なんか最近、物足りなくなてきてね……
まあ、どっちも魔物の中では弱い部類に入るから、仕方ないと言えば仕方ないんだけど。
そこで、俺はこれから強めの魔物が多い奥の方に行ってみようと思う。
もっとも。強いと言っても、精々オークの群れやミノタウロスといったD、Eランク程度の魔物なんだけどね。
「よし。やってみるか」
俺はぐっと拳を握りしめて、気合を入れる。
うん。だが、引き際はちゃんと考えよう。
鍛錬の一環である為、基本的には剣のみで戦うが、マズいと思ったら即座にスライムを召喚して、自身は逃げに徹するという、超絶嫌がらせな方法で倒してやる!
そうと決めた俺は、早速奥の方にいるスライムの視覚に移る。
「……ん?」
俺が視覚を移した時は、危険が無い時以外は周囲の状況が見える位置に立つよう言ってある。
だが、このスライムは視覚的に……土の中?
「危険なのか。なら、他のは……」
そう思い、俺は別のスライムの視覚に移る。
だが、そっちも同様に、今度は草むらの中に身を縮めて隠れていた。
スライムに見向きする魔物なんてそうそういないからなぁ……
離れた場所で飛んでいる蚊を、わざわざ殺しに行かないのと同じ原理だ。だが、近くに居たり、煩わしかったら殺す。そんな感じだ。
てことは、余程近い位置にいるってことなのかな……?
じゃあ次はと他のスライムに移っても、また別のスライムに移っても、同じだった。
俺は得体のしれない不気味さを感じながらも、視覚を移し続け、やがてあることに気付く。
「奥に何かがいる?」
何故か、ここから東に3kmほどを境に、スライムが危険を察知して隠れている。
「……慎重に、ゆっくりと周囲を見てくれ」
俺はその境目周辺にいるスライムに、周囲を見るよう言う。
すると、その言葉に応じて、スライムがゆっくりと動き出す。
そして、草むらの外に出た。
「……何だ、あれは……!」
俺は目を見開きながら、噛み締めるように言う。
そう。そこにはオークの群れが居た。だが、いつもと様子がおかしい。
「グガアアア!!」
「ガアアアァ!」
まるで、タガが外れてしまったかのように暴れまわっていたのだ。
その近くには、惨殺された生物の死体。僅かに見える特徴から、かろうじてその死体がゴブリンのものだと言うことが分かる。
「……同族以外を殺してるのか!?」
直後、オークの1体と目が合う。
「グガアアアァ!!!」
そのオークは俺と――スライムと視線が合うや否や、目を真っ赤に充血させながら、本来よりも速い速度で俺に迫る。
そして、棍棒が振り下ろされ――
「危ねっ」
そう言う俺の掌には、1匹のスライムが居た。プルプルと震えている。
あと1秒、召喚するのが遅かったら、この子は殺されていただろうな……
「はぁ……にしてもこの森の奥で、一体何が起こっているというんだ……!」
明らかに様子がおかしい。
そう思った俺は、このことを冒険者ギルドへ報告することに決めた。
「こういうのはさっさと報告しないと、ヤバいことになりそうだからな。……急ぐか」
そう言うと、俺はシュレインに向かって走り出した。
◇ ◇ ◇
シュレインに戻った俺は、まっすぐ冒険者ギルドへと向かった。
そして、冒険者ギルドに入った俺は、受付へと向かって歩き始める……が、異変を感じ、立ち止まる。
「何か騒がしいな。人も多い」
普段なら、この時間帯はもっと空いているはずだ。
ふと、ここで先ほどの異変が頭をよぎる。
もしかして、あの異変は既に広まってる……?
そう思った俺は、聞き耳を立て、周囲の様子を窺う。
「なあ、聞いたか? シュレインの森で異変が起きてるってよ」
「ああ、聞いた聞いた。今日森の奥に行った冒険者が、命からがら戻って来たんだってよ」
「そうそう。それで、なんか凶暴な魔物の集団が出たとか?」
「変異種なのか?」
「変異種の集団とか、マジでごめんだな」
「ま、そういうのはダンジョンに潜る高ランク冒険者様が、最悪何とかしてくれるだろ?」
「だな~」
……と言った具合だ。
どうやら、あの異変は既に認知されていたようだ。
「なら、その内調査隊が派遣されたりするのかな?」
まあ、取りあえずこれなら大丈夫そうだ。
そう思った俺は、受付へと向かい、報酬金を受け取る。
余り貰えなかったが、仕方ない。
こういった不測の事態の為に、金は貯めてあるのだ。1日2日ぐらいこれでも、特に問題はない。
「さてと。後は魔石も売らないと」
そう言って、俺は受付から離れると、そのまま冒険者ギルドの外に出た。
初日にオーク8体と戦ったが、あれ以降は安全面を考えて、基本的にゴブリンとしか倒していない。
オークと戦うこともあるけど、その場合はオークが1、2体しかいない時を狙って倒していた。
最初はこれでもだいぶ手ごたえがあったんだけど……なんか最近、物足りなくなてきてね……
まあ、どっちも魔物の中では弱い部類に入るから、仕方ないと言えば仕方ないんだけど。
そこで、俺はこれから強めの魔物が多い奥の方に行ってみようと思う。
もっとも。強いと言っても、精々オークの群れやミノタウロスといったD、Eランク程度の魔物なんだけどね。
「よし。やってみるか」
俺はぐっと拳を握りしめて、気合を入れる。
うん。だが、引き際はちゃんと考えよう。
鍛錬の一環である為、基本的には剣のみで戦うが、マズいと思ったら即座にスライムを召喚して、自身は逃げに徹するという、超絶嫌がらせな方法で倒してやる!
そうと決めた俺は、早速奥の方にいるスライムの視覚に移る。
「……ん?」
俺が視覚を移した時は、危険が無い時以外は周囲の状況が見える位置に立つよう言ってある。
だが、このスライムは視覚的に……土の中?
「危険なのか。なら、他のは……」
そう思い、俺は別のスライムの視覚に移る。
だが、そっちも同様に、今度は草むらの中に身を縮めて隠れていた。
スライムに見向きする魔物なんてそうそういないからなぁ……
離れた場所で飛んでいる蚊を、わざわざ殺しに行かないのと同じ原理だ。だが、近くに居たり、煩わしかったら殺す。そんな感じだ。
てことは、余程近い位置にいるってことなのかな……?
じゃあ次はと他のスライムに移っても、また別のスライムに移っても、同じだった。
俺は得体のしれない不気味さを感じながらも、視覚を移し続け、やがてあることに気付く。
「奥に何かがいる?」
何故か、ここから東に3kmほどを境に、スライムが危険を察知して隠れている。
「……慎重に、ゆっくりと周囲を見てくれ」
俺はその境目周辺にいるスライムに、周囲を見るよう言う。
すると、その言葉に応じて、スライムがゆっくりと動き出す。
そして、草むらの外に出た。
「……何だ、あれは……!」
俺は目を見開きながら、噛み締めるように言う。
そう。そこにはオークの群れが居た。だが、いつもと様子がおかしい。
「グガアアア!!」
「ガアアアァ!」
まるで、タガが外れてしまったかのように暴れまわっていたのだ。
その近くには、惨殺された生物の死体。僅かに見える特徴から、かろうじてその死体がゴブリンのものだと言うことが分かる。
「……同族以外を殺してるのか!?」
直後、オークの1体と目が合う。
「グガアアアァ!!!」
そのオークは俺と――スライムと視線が合うや否や、目を真っ赤に充血させながら、本来よりも速い速度で俺に迫る。
そして、棍棒が振り下ろされ――
「危ねっ」
そう言う俺の掌には、1匹のスライムが居た。プルプルと震えている。
あと1秒、召喚するのが遅かったら、この子は殺されていただろうな……
「はぁ……にしてもこの森の奥で、一体何が起こっているというんだ……!」
明らかに様子がおかしい。
そう思った俺は、このことを冒険者ギルドへ報告することに決めた。
「こういうのはさっさと報告しないと、ヤバいことになりそうだからな。……急ぐか」
そう言うと、俺はシュレインに向かって走り出した。
◇ ◇ ◇
シュレインに戻った俺は、まっすぐ冒険者ギルドへと向かった。
そして、冒険者ギルドに入った俺は、受付へと向かって歩き始める……が、異変を感じ、立ち止まる。
「何か騒がしいな。人も多い」
普段なら、この時間帯はもっと空いているはずだ。
ふと、ここで先ほどの異変が頭をよぎる。
もしかして、あの異変は既に広まってる……?
そう思った俺は、聞き耳を立て、周囲の様子を窺う。
「なあ、聞いたか? シュレインの森で異変が起きてるってよ」
「ああ、聞いた聞いた。今日森の奥に行った冒険者が、命からがら戻って来たんだってよ」
「そうそう。それで、なんか凶暴な魔物の集団が出たとか?」
「変異種なのか?」
「変異種の集団とか、マジでごめんだな」
「ま、そういうのはダンジョンに潜る高ランク冒険者様が、最悪何とかしてくれるだろ?」
「だな~」
……と言った具合だ。
どうやら、あの異変は既に認知されていたようだ。
「なら、その内調査隊が派遣されたりするのかな?」
まあ、取りあえずこれなら大丈夫そうだ。
そう思った俺は、受付へと向かい、報酬金を受け取る。
余り貰えなかったが、仕方ない。
こういった不測の事態の為に、金は貯めてあるのだ。1日2日ぐらいこれでも、特に問題はない。
「さてと。後は魔石も売らないと」
そう言って、俺は受付から離れると、そのまま冒険者ギルドの外に出た。