「ま、あの様子なら大丈夫そうだな。行く先に魔物は一応いるが、ゴブリン数匹だしな」
ゴブリンぐらいなら、あの状況でも容易く撃破出来るだろう。
そう思った俺はクルリと背を向けると、オークの死体を見やる。
「うわぁ……相変わらずグロいなぁ……」
ドロドロに溶けた頭部は……うん。すっごいグロい。
完全に溶けているのではなく、微妙に形状を保っているのが、そのグロさに拍車をかけている。
「……てか、討伐証明部位取れなくね?」
オークの討伐証明部位は2本の長い牙だ。この2つセットで、1体分としてカウントされる。
だが、彼らは皆、頭部を溶かされている。そのせいで、牙がいい感じに溶けて短くなっているのだ。
これでは討伐証明部位である長い牙と見なされない可能性が非常に高い。というか、多分確定だ。
「はぁ……いや、オークの討伐依頼はEランク冒険者以上だ。だから、討伐証明部位を持ってったら、説明がめんどくなる。だから、これでいいんだ!」
説明する方が面倒だから、この状況はむしろ喜ばしいことなんだ!と自身に言い聞かせると、俺は剣を構えてオークの死体に歩み寄る。
そして、さっきと同じように剣で右胸部分を切り抜くと、そこから顔を覗かせる魔石を見やる。
「よし。ネム。あの魔石をきれいにして、俺に渡してくれ」
「きゅきゅ!」
すると、いつの間にかリュックサックの中に入っていたネムが、そこから勢いよく跳び出した。
そして、オークの死体に着地すると、さっきよりも手際よく魔石を回収し、汚れを食べ、俺に「きゅきゅ!」と渡す。
「ありがとう。それじゃ、これをあと7回やるか」
「きゅきゅー!」
こうして俺たちは引き続きオークの魔石を回収するのであった。
「よーし。終わった。さて、これからどうするか……?」
俺は数多のスライムによって捕食されるオークの死体から目を背けると、澄んだ青空を眺めながら体を伸ばす。
直後、お腹が「ぐるるる~」とけたましく鳴り響いた。
「あ、もう昼か」
確かに陽光は真上から差し込んでいる。
じゃあ、さっさと昼食を食べな……あ。
「やっべ。昼食買うの忘れてたわ」
俺は頭を掻きながら、自分のやらかしにため息をつく。
依頼が午前中だけで終わることなんてそうそう無い。その為、冒険者は常に保存食を持ち歩いているのだ。
だが、今回俺はそれを買い忘れた。
あれだけ冒険者について色々と調べたと言うのに……!
「ちっ 本当はもう少しここで色々やりたかったけど、仕方ない。一旦シュレインに帰って、昼食を食べてくるか。その後、もう1度……いや、ネムに付ける従魔の証になる物を買って、時間があったらにするか」
腹が減っては戦は出来ぬって言うからね。
早くシュレインに帰って腹ごしらえしないと。
あとは、ネムの為に従魔の証になる物を買って、堂々とネムを連れ歩けるようにしないと。
「じゃ、帰るか」
そう言うと、俺はスライムの視覚を見て、どの方向にシュレインがあるのかを特定する。
そして、それが終わると、俺はまっすぐその方向に向かって歩き出した。
◇ ◇ ◇
10分程で門に辿り着いた俺は、冒険者カードを見せて中に入る。
依頼を終えて帰って来た冒険者には、あまり手荷物検査はしないからね。
お陰で従魔の証をつけていない従魔、ネムを見られることは無かった。
まあ、見られてもスライムだから、そんな大したことは言われなかっただろうけど。
ま、そんな感じで門をくぐり、シュレインに戻った俺は、早速昼飯探しを始める。
「ん~……お、早速いい匂いがしてきた……!」
肉が焼けるいい匂いに釣られ、やってきたのは屋台だ。
そこではおじさんが串焼きを焼いていた。
……よし。今日はここにしよう。
もう我慢できないんだ!
幸い、金はある。小銀貨20枚銀貨8枚が俺の全財産だ。
俺って、貴族にしては細かい金しか持ってないからね。小金貨とか金貨は持っていなかったのだよ。
「すみません。串焼きを5本ください」
そう言って、俺は小銀貨1枚をおじさんに手渡す。
「おう! 毎度あり」
おじさんは上機嫌に小銀貨を受け取ると、焼いていた肉に美味しそうなタレをつけ始める。
濃い系のタレだね。塩系も好きだけど、こっちもいいんだよね~
そして、おじさんは串焼き5本をまとめて持つと、俺に手渡した。
「ほい、串焼き5本だ。熱いから気をつけろよ」
「ありがとうございます」
俺は垂れそうになる涎を飲み込むと、笑顔でその串焼きを受け取った。
そして、道の隅に腰かけると、早速1本頬張る。
「もぐっ もぐっ ……ん! 美味しい!」
食べ応えのある肉。噛めば噛むほど、タレとよく絡んだ肉の味が口の中一杯に広がる……!
これは最高だ。どんどん食べ進められる。
「もぐもぐもぐ……んぁ、ネムも1本食べな」
今の俺は9歳の子供。流石にこの大きさの串焼きを5本も食べられない。
だが、あえて買ったのはネムに上げる為だ。ネムは俺の為に、魔石を回収してくれたからな。
その礼だ。
それを言ったら、オークを仕留めてくれた変異種スライムに礼はないのかって?
流石にそこまでやってたら金が持たない。一応あの子たちには倒したオークの肉を食べさせてあげたので、それで勘弁してもらうとしよう。
「きゅ! きゅきゅ!」
俺に呼ばれ、リュックサックからひょこっと顔を覗かせたネムは、俺が差し出した串焼きを見るや否や、嬉しそうに鳴き声を上げた。
そして、食べる……と言うよりは全身で包み込んで取り込むような感じで串焼きを捕食する。
「きゅ! きゅぺっ!」
最後に、残った串をぺっと吐き出すと、満足そうにリュックサックの中に戻って行った。
あー可愛い。癒される。
「ははっ 満足したようだ」
そんなネムを見て、俺も満足気な顔をすると、串焼きを頬張る。
それから少しして、無事串焼きを完食した俺は、屋台のごみ袋に串焼きを捨てると、冒険者ギルドに向かって歩き出した。
ゴブリンぐらいなら、あの状況でも容易く撃破出来るだろう。
そう思った俺はクルリと背を向けると、オークの死体を見やる。
「うわぁ……相変わらずグロいなぁ……」
ドロドロに溶けた頭部は……うん。すっごいグロい。
完全に溶けているのではなく、微妙に形状を保っているのが、そのグロさに拍車をかけている。
「……てか、討伐証明部位取れなくね?」
オークの討伐証明部位は2本の長い牙だ。この2つセットで、1体分としてカウントされる。
だが、彼らは皆、頭部を溶かされている。そのせいで、牙がいい感じに溶けて短くなっているのだ。
これでは討伐証明部位である長い牙と見なされない可能性が非常に高い。というか、多分確定だ。
「はぁ……いや、オークの討伐依頼はEランク冒険者以上だ。だから、討伐証明部位を持ってったら、説明がめんどくなる。だから、これでいいんだ!」
説明する方が面倒だから、この状況はむしろ喜ばしいことなんだ!と自身に言い聞かせると、俺は剣を構えてオークの死体に歩み寄る。
そして、さっきと同じように剣で右胸部分を切り抜くと、そこから顔を覗かせる魔石を見やる。
「よし。ネム。あの魔石をきれいにして、俺に渡してくれ」
「きゅきゅ!」
すると、いつの間にかリュックサックの中に入っていたネムが、そこから勢いよく跳び出した。
そして、オークの死体に着地すると、さっきよりも手際よく魔石を回収し、汚れを食べ、俺に「きゅきゅ!」と渡す。
「ありがとう。それじゃ、これをあと7回やるか」
「きゅきゅー!」
こうして俺たちは引き続きオークの魔石を回収するのであった。
「よーし。終わった。さて、これからどうするか……?」
俺は数多のスライムによって捕食されるオークの死体から目を背けると、澄んだ青空を眺めながら体を伸ばす。
直後、お腹が「ぐるるる~」とけたましく鳴り響いた。
「あ、もう昼か」
確かに陽光は真上から差し込んでいる。
じゃあ、さっさと昼食を食べな……あ。
「やっべ。昼食買うの忘れてたわ」
俺は頭を掻きながら、自分のやらかしにため息をつく。
依頼が午前中だけで終わることなんてそうそう無い。その為、冒険者は常に保存食を持ち歩いているのだ。
だが、今回俺はそれを買い忘れた。
あれだけ冒険者について色々と調べたと言うのに……!
「ちっ 本当はもう少しここで色々やりたかったけど、仕方ない。一旦シュレインに帰って、昼食を食べてくるか。その後、もう1度……いや、ネムに付ける従魔の証になる物を買って、時間があったらにするか」
腹が減っては戦は出来ぬって言うからね。
早くシュレインに帰って腹ごしらえしないと。
あとは、ネムの為に従魔の証になる物を買って、堂々とネムを連れ歩けるようにしないと。
「じゃ、帰るか」
そう言うと、俺はスライムの視覚を見て、どの方向にシュレインがあるのかを特定する。
そして、それが終わると、俺はまっすぐその方向に向かって歩き出した。
◇ ◇ ◇
10分程で門に辿り着いた俺は、冒険者カードを見せて中に入る。
依頼を終えて帰って来た冒険者には、あまり手荷物検査はしないからね。
お陰で従魔の証をつけていない従魔、ネムを見られることは無かった。
まあ、見られてもスライムだから、そんな大したことは言われなかっただろうけど。
ま、そんな感じで門をくぐり、シュレインに戻った俺は、早速昼飯探しを始める。
「ん~……お、早速いい匂いがしてきた……!」
肉が焼けるいい匂いに釣られ、やってきたのは屋台だ。
そこではおじさんが串焼きを焼いていた。
……よし。今日はここにしよう。
もう我慢できないんだ!
幸い、金はある。小銀貨20枚銀貨8枚が俺の全財産だ。
俺って、貴族にしては細かい金しか持ってないからね。小金貨とか金貨は持っていなかったのだよ。
「すみません。串焼きを5本ください」
そう言って、俺は小銀貨1枚をおじさんに手渡す。
「おう! 毎度あり」
おじさんは上機嫌に小銀貨を受け取ると、焼いていた肉に美味しそうなタレをつけ始める。
濃い系のタレだね。塩系も好きだけど、こっちもいいんだよね~
そして、おじさんは串焼き5本をまとめて持つと、俺に手渡した。
「ほい、串焼き5本だ。熱いから気をつけろよ」
「ありがとうございます」
俺は垂れそうになる涎を飲み込むと、笑顔でその串焼きを受け取った。
そして、道の隅に腰かけると、早速1本頬張る。
「もぐっ もぐっ ……ん! 美味しい!」
食べ応えのある肉。噛めば噛むほど、タレとよく絡んだ肉の味が口の中一杯に広がる……!
これは最高だ。どんどん食べ進められる。
「もぐもぐもぐ……んぁ、ネムも1本食べな」
今の俺は9歳の子供。流石にこの大きさの串焼きを5本も食べられない。
だが、あえて買ったのはネムに上げる為だ。ネムは俺の為に、魔石を回収してくれたからな。
その礼だ。
それを言ったら、オークを仕留めてくれた変異種スライムに礼はないのかって?
流石にそこまでやってたら金が持たない。一応あの子たちには倒したオークの肉を食べさせてあげたので、それで勘弁してもらうとしよう。
「きゅ! きゅきゅ!」
俺に呼ばれ、リュックサックからひょこっと顔を覗かせたネムは、俺が差し出した串焼きを見るや否や、嬉しそうに鳴き声を上げた。
そして、食べる……と言うよりは全身で包み込んで取り込むような感じで串焼きを捕食する。
「きゅ! きゅぺっ!」
最後に、残った串をぺっと吐き出すと、満足そうにリュックサックの中に戻って行った。
あー可愛い。癒される。
「ははっ 満足したようだ」
そんなネムを見て、俺も満足気な顔をすると、串焼きを頬張る。
それから少しして、無事串焼きを完食した俺は、屋台のごみ袋に串焼きを捨てると、冒険者ギルドに向かって歩き出した。