なんとなくだった。
あのとき駅前にいたのも、あのスーパーに入ったのも、縁下くんについてファミレスに向かったのも。
 「なにか頼んで大丈夫ですよ。ちょうど今日、バイトの給料日でお金あるので。」
私は何も言わない。何も言いたくなかった。
 最初は戸惑っていた縁下くんも私が喋らないとわかると無言で色々してくれた。
夜の10時のファミレスはびっくりするくらい空いていた。
縁下くんは席を立ったと思ったら、私の前に湯気の立つココアをおいてくれていた。
「飲んでください。風邪を引かれても困りますので。」
そう言って本を読みながらコーヒーを飲んでくれた。
 30分くらいすると縁下くんは立ち上がった。
「そろそろ動けそうですか?補導されるのは勘弁なのでどこか移動しませんか?」
「じゃあ、私の家に来てよ。」
気がつくと私は彼の手を引いて暗い住宅街の道に向かっていた。