【拓哉、こんなときに悪いけど明日の朝ご飯の買い物頼んでも大丈夫?】
バイトが終わり、スマホを見ると母さんから連絡が来ていた。
【わかった】
そう返信して、駅前のスーパーに向かった。
 夜の10時の駅前のスーパーには売れ残り品を買いに来るサラリーマンくらいしかいない。
高校生なんて僕くらいしかいないだろう。そう思いながら商品を見ていると、店を出ていく見覚えのある背中が見えた。
急いで会計を済ませて後を追うと、その人、瑞野さんは大雨の中傘もささずに突っ立っていた。
「何してるんですか?」
気がつくと僕は話しかけていた。放っておける雰囲気じゃなかったから。きっとそれだけ。
「取り敢えず、どこかファミレスに入りませんか?」
僕の言葉に瑞野さんは学校の雰囲気からはわからないくらい静かに頷いてついてきた。