あれから3ヶ月がたち季節は冬になった。海に行くときは氷菓ではなく肉まんになって、季節を感じる。昨日パパと喧嘩した。《僕は、女で生まれたけど男だから。パパの望むような普通にはなれない。》パパは泣いて泣いて言った。《育て方を間違えた。》と。私は、家を出る。足が向かったのは海。肉まんは、買わなかった。そんな余裕ない。海で泣いていると、肉まんを持つ桜雅が現れた。なんてタイミングのいいヤツなんだ。

桜雅「桜恋!?何があった?」
桜恋「パパと喧嘩したの。」
桜雅「うん。どんな?」
桜恋「……。」
桜雅「俺ならそんな思いさせないのに。…………好きだよ。桜恋の事が。」
桜恋「ありがとう。もう僕にも桜雅のためにもならないから言う。僕の恋愛対象は男じゃない。」
桜雅「……は?」
桜恋「だから、桜雅の事は好きにならない。友達に戻ろう。」
桜雅「友達に戻ろう?ふざけるな!元に戻れる訳ないだろ。」
桜恋「そうだね。これで味方はいなくなっちゃった。全部私が悪いの。普通に生きられない。パパの望みは叶えられない。」
桜雅「……。もっと早く言って欲しかった。そしたら引き返せたのに。桜恋。マイノリティがあることは悪くない。桜恋のパパの普通と、桜恋の普通は違う。相手の普通に合わせる必要なんて無い。」
桜恋「桜雅……。ありがとう。」

 僕と、桜雅の距離感。なんとも言えないその距離がとてつもなく愛おしくて、けれど桜雅には酷な距離であるのだろうと思った。