今日も、氷菓を片手に海に来た。いつもと変わらぬ景色。少し海岸線を歩く。珍しいな。人影がある。背は180ぐらいだろうか。中性マッシュの爽やかな青年。つまりはイケメン。ここらへんでは、見ない顔。その頬に一筋の光が流れた。あれ、泣いている?

桜恋「どうされました?」
? 「ご心配ありがとうございます。ただ、亡くなった父との思い出の場所なので。」
桜恋「へえー。僕は羨ましいです。思い出があるだけ良いですよ?僕なんて。僕を産む引き換えに、ママは死んだのだから。」
? 「そうなんだ。けれど貴方のママは、貴方のそんな辛そうな顔望んで無いと思う。」

 そう言って彼は立ち去る。核心をつく発言をする彼に、また会えるだろうか。

 一人で、近所のスーパーに来ていた。家事は僕の役目。今は夕飯の買い出しだ。遠目に彼を見つけた。彼もこちらに気づいたようだ。スタスタと近づいて来る。

? 「この前はどうも。俺は桜雅(おうが)。貴方は?」
桜恋「桜に恋と書いて、桜恋です。」
桜雅「おんなじ桜か。俺も桜に雅と書くからな。貴方はここらへんの人か?」
桜恋「そうですよ?貴方は?」
桜雅「引っ越してきた。夏休み明けからは桜波高校に転校する。」
桜恋「私も桜波高校です。」
桜雅「へぇ。じゃあ、連絡先でも交換する?俺、貴方の事をもう少し知りたい。」
桜恋「そりゃあどうも。」

 彼は、僕を口説くのかな?いつ言えば良い?男は恋愛対象じゃ無いと。

 メールをしていた。桜雅と。どんな脈略だったかは忘れた。けれどこれだけは脳裏に焼き付いている。《桜恋に味方はいるのか?》という言葉が。ドキッとした。パパは味方かも知れない。けれど、僕の性別については味方ではない。そう考えたら、僕に味方などいないのかもな。《さてどうだろうな。》と僕は返した。