その日から音楽室に私の居場所はなくなった。
 パートの中の会話にも入れてもらえなくなった。話しかけてもシカトされ、煙たがれる。

 曲練習で低音楽器どうしで合わせることとなった。ばっちりチューニングをして音は合っているはずだった。が、

「バリサク、ピッチちゃんと合わせてよ。ヘタクソ。これでコンクールメンバーになる気?」
「すみません!」

 バスパートのリーダーである先輩に言われてしまったのだ。
 チューナーを使って吹いてみる。針は真ん中を指して緑色のランプが点灯しているのだが……。

「合ってないよ! 一人だけズレてる」
「チューナーではちゃんと合ってるんですけど……」

 他の人は少し困惑している。先輩が私に「合っていない」と言った時、小声で「えっ?」と言うのが聞こえた。この雰囲気から私は察した。
 ああ、わざとだ。これ。

「ヘタクソならコンクールメンバーから外すことだってできるんだからね。ちゃんとしてよ」
「……はい」
「ちゃんと返事して!」
「はい!」

 いじめられてサックスに来たのに、またここでもいじめに遭うの……? しかも今度は部員全員が……。
 楽器を吹くことは好きなのに、それすらも嫌になりそうだった。