次の日、私が音楽室に入るとしんと静かになった。直前まで廊下の外までガッツリ聞こえていた話し声が、一瞬で消え去ったのだ。

 私は荷物だけ置いて音楽室を離れる。

「あの子だけだよ、Aがうまいって言ったの」
「のちのちメンバーになるんでしょ? 耳悪すぎじゃない?」
「元からサックスじゃなかったから、耳が鍛えられてなかったりして? て言うか、そもそものバリサクの存在意義よ! あれ抜いてパーカス(パーカッション)増やした方がいいでしょ!」
「ファゴットとバスクラ(バスクラリネット)があるんだし、十分十分!」

 私の耳には全てが入ってきた。聞きたくなかったが地獄耳を使ってしまった。

 やっぱり私、要らないのかな……。
 聞こえないならいいのかな。ソロどころかメロディがあれば飛び跳ねて喜ぶくらいだから。