もともと私はサックスパートではなかった。パートの先輩にいじめられてサックスに移ったのである。
 この学校のバリサクは一台しかないので、吹くのは私しかいない。そういうわけで夏のコンクールに出ることが決まっていた。他のパートはその枠を争ってオーディションをし、落ちる人もいるというのに。

「コンクール出たいからサックスに行ったんでしょ」

 そんな陰口が聞こえてくることもあった。
 なるべく波が立たぬよう気を配っているつもりだったが、あるとき私はやらかしてしまった。