吹奏楽部に白い一枚の紙が提出された。即受理され、部唯一のバリトンサックス奏者はまた戻ってきた。

 緊張した面持ちで音楽室に顔を出した後輩。その姿を見るやいなや、部員に「おおっ」とどよめきが起こった。

「あの……『バリサクは要らない』とか言ってごめんなさい」
「そもそも『どっちがうまい?』って変な質問をしたことも……」

 トランペットの先輩二人が頭を下げてきたのだ。

「パートリーダーとして止めなきゃいけないのに、止められなくてごめんなさい」

 先輩三人に囲まれ、一様に私に頭を下げている。

「いえいえ、少し休めたのでいいです」

 大丈夫と言いたいところだが、まだあの時の痛みは残ったままである。
 数日後、楽器がすべて揃った状態で全体合奏を再開した。