「そろそろ出て、お昼食べに行こうか?」
その蒼くんの声がけに、皆で頷いて賛成して水族館を後にした。
ちゃんとお土産物屋さんで、お姉ちゃんや両親へのお菓子を買って出た。
皆も、それぞれ家族にお土産を買ったみたい。
荷物片手に海沿いを歩いて、橋を渡って島に入る。
海にはサーファーが居たし、観光客も多い。
この近辺は、観光でも有名な場所なのだ。
その島も観光地だから、休日の今日は大勢の人が居る。
そんな中で歩いて見つけた定食屋さんでお昼にした。
この地域で話題のしらす丼は新鮮で美味しかった。
男の子達はしらす丼プラス刺身定食と言う組み合わせ。
中々のボリュームだったのに、みるみるうちにお皿は空になり、彼らはペロッと平らげた。
運動部男子の食事量は凄いんだなぁと、見ていて気持ちいい程の食べっぷりだった。
「あれ? 有紗、食べきれそう?」
ゆっくり食べていた私だが、そろそろ実はキツくなっていた。
「要くん、ちょっと厳しいかも……」
私は素直に食べ切れそうにないことを伝える。
「無理するな? ダメなら俺まだ入るから食べられるから」
そういってポンポンと頭を撫でてくる。
向かいで食べていた日菜子と蒼くんが顔を見合わせて、私達に言った。
「要と有紗の方がよっぽど仲良しカップルに見える!」
ふたりで声を揃えて、ニマニマ顔で言うので私は照れくささから勢いよく、
「そんな事ない! 君らの方がラブラブだから!」
お昼を食べ終わったあとは有名なローカル線に乗り、本格的に観光した。
大仏が有名なお寺や、境内までの参道にある有名なお店通りでは手焼き煎餅を食べたり、さつまいもソフトクリームをパクついたりした。
そうして訪れた八幡宮は広い境内をひたすら歩き、参拝。
そこで、わたしは折鶴の形の根付守りを買った。
見た目が可愛らしくかつ、綺麗だと感じたからだ。
たまに、猫が歩いたり、木上をリスが走てったり。
境内の中は意外と動物がいて驚く。
「リス、可愛い! けどすばしっこいね!」
「確かに! 動き早くて写メ撮れなかったよ」
そんな話をしつつ、観光地を後にして私達は帰路についた。
その頃にはすっかり夕方近くなっていた。
学校の最寄り駅についたのは19時頃。
「おやつ食べたけどお腹減ったよね! ご飯食べて帰ろうよ!」
その日菜子の声に、私達は放課後にもたまに立ち寄るファミレスへと足を向けた。
ファミレスでもすっかり皆で食べながら話し込んで、気付けば午後は十時に差し掛かっていた。
「さすがに、そろそろ帰らないと不味いな!」
そうしてお開きになる。
当たり前のように、私の隣に来て手を繋ぐ要くんに聞いた。
「要くん? もう帰るんでしょう? 日菜子と歩きじゃないの?」
そう、疑問を口にすれば要くんはあっさり返す。
「日菜子は蒼が送ってくし、この時間だから有紗は俺が送ってく」
改札を抜けようとするのを、腕を引いて止める。
「大丈夫だよ!今から電車に乗るって連絡入れれば、車でお姉ちゃんが迎えに来てくれるから」
送る必要のないことを伝えたのに、要くんは手を離してくれない。
「俺がもう少し有紗とふたりで居たいから、送らせてほしい」
今日一番の要くんからのストレートな言葉に、私は息を詰めて押し黙ってしまった……。
要くんも、少しばかり恥ずかしそう。
それでも、ここは譲りたくないのか手は離れないまま。
私は握られた手に落としていた視線を上げて、要くんと視線を合わせる。
「ありがとう。それじゃあ手間になっちゃうけど、お願いします」
なかなか普段こんな時間に出歩かないし、電車も乗らないので、私は要くんに甘える事にした。
「うん。でもって、俺の言っている意味分かっている?」
その言葉に、ん? と首を傾げれば、
「わざとなのか、天然なのか……。もう少し俺の発言が、どんな気持ちから来るか考えてみて?」
そう言われつつ、手を繋いだまま私達は日菜子と蒼くんと別れて改札を抜けて私の自宅最寄り駅へと戻るべく、電車が来るのを二人で待った。
その間ぐるぐる巡ったのは、要くんの言葉の意味だった。
もう少し、二人で一緒に居たいって……。
だから送って行くって……。
まさか……、ねぇ?
だって、要くんはサッカー部で話題のイケメンだし。
校内では同級生からも、下級生からも人気でイケメンと大人気なのに。
そんな要くんが、こんな取り柄もない私が気になるとか?
そんなこと、ある訳ない、ない!
そこまで考えてふぅと一息ついて首を横に振っていたら、要くんが少し呆れた声で言う。
「有紗。考えて、自己完結して落ち着いたとこ悪いけど……。有紗が考えないようにした方が正解だぞって言っとくな。じゃないと俺、どこにもいけないし、なにも出来なくなりそうだから」
要くんは私を見つめて、じつにいい笑顔を浮かべている。
私は言われた事に、ギョッとするとなんとか返事をする。
「要くん?そんなこと言われると私、どうしたらいいのか分からないよ……」
じわじわと理解して、言葉を返すけれど私の顔はきっと今真っ赤に染まっていることだろう。
「ほら電車来るから、お姉さんに連絡しろ」
そう言われて慌ててお姉ちゃんにメールすれば、これからここに止まる電車に乗っていると言う。
今日は仕事が忙しかったみたいだ。
「来る電車にお姉ちゃん乗っているみたいなの。お姉ちゃんと合流して帰るよ」
メールの返信から伝えると、要くんは少し残念そう。
「じゃあ、乗るまで見送らせて」
「うん、ありがとう」
ホームに電車が来るアナウンスと音楽が流れ出した。
そうしてきた、電車には確かにお姉ちゃんが宏樹さんと乗っていてびっくりしつつ合流。
「要くん、ありがとう。また月曜にね!」
要くんはお姉ちゃん達に頭を下げつつ、返事をくれた。
「おう、また月曜にな」
そうして、今日ほとんど繋がれていた手が離れた。
少しの寂しさを伴って……。
そんな私たちの様子を見ていたお姉ちゃんと宏樹くんはにっこり笑って言った。
「楽しかったみたいだし、充実した一日になったみたいね?」
「うん、楽しかった」
そう、楽しかった。
今日、手を繋いで歩いた水族館も観光地も。
どれも新鮮で、ちょこちょこ握られる手にドキドキして……。
なにより、よく笑っていた要くんの笑顔が輝いていて、眩しくって……。
不覚にも高鳴る動悸を、なんでもない顔をして誤魔化すので精一杯だった……。
もうじき、ジメジメとした季節は終わりを迎える。
私の切られた期限も刻々と迫ってきていた……。
梅雨の明ける頃……。
私以外の三人は再び頭を抱えていた。
夏休み前、期末テストの時期である。
今回は期末ゆえ、範囲も教科も多い。
テスト期間は長く、容赦のない範囲と教科数に三人は根を上げていた。
「振り返っても分かんない! 解ける気がしない! 終わった……、今回は終わったぁ!!」
日菜子は大きく叫んで頭を抱えこむと、机に突っ伏した。
「日菜子! お前もか!? 仲間だな! でも、次が引退試合だろ?! 赤点なんて取っていられねぇよ……」
叫びながらも、顔には悲壮感漂う蒼くん。
「日本から出る事ないのに、英語の授業のある意味が分からない!!」
最後はこの中では一番マシだけど、英語が壊滅的な要くん。
嘆く三人を見つつ、私はそっと息を吐き出す。
ちなみに三人は嘆いているが、このテスト範囲は酷ではないし、ちゃんと勉強すれば大丈夫だと思われる。
しかし、ここにいる三人は部活命の三人なのだ…。
普段の放課後はサッカーの練習を、日菜子はテニスをしている。
運動が中心の生活なのだ、しかも引退前。
今は練習に時間をさきたいだろう……。
私はこんなこともあろうと、用意していた物をカバンから取り出した。
「はい、これ期末テスト対策用ノート。主要科目は網羅しているから。頑張れ!」
鞄から取り出したのは、私自身の復習を兼ねてテスト範囲をまとめた各教科のノートだった。
それを見せると日菜子と蒼くんは目を輝かせ、要くんも英語の範囲を見ようとしていた。
「有紗! ありがとう! もう、有紗神様!!」
日菜子が大げさに喜ぶので、苦笑してしまう。
「そんな大げさに喜ばなくて大丈夫。これは私がテスト前に復習に使った物なだけだから」
にっこり笑って言うと、三人は目を丸くしてしまう。
「有紗ちゃん、テスト前にこのノート分は勉強が済んでいるってこと?」
蒼くんがびっくりしながら聞くので、なんでなんだろうと首を傾げながらも答える。
その蒼くんの声がけに、皆で頷いて賛成して水族館を後にした。
ちゃんとお土産物屋さんで、お姉ちゃんや両親へのお菓子を買って出た。
皆も、それぞれ家族にお土産を買ったみたい。
荷物片手に海沿いを歩いて、橋を渡って島に入る。
海にはサーファーが居たし、観光客も多い。
この近辺は、観光でも有名な場所なのだ。
その島も観光地だから、休日の今日は大勢の人が居る。
そんな中で歩いて見つけた定食屋さんでお昼にした。
この地域で話題のしらす丼は新鮮で美味しかった。
男の子達はしらす丼プラス刺身定食と言う組み合わせ。
中々のボリュームだったのに、みるみるうちにお皿は空になり、彼らはペロッと平らげた。
運動部男子の食事量は凄いんだなぁと、見ていて気持ちいい程の食べっぷりだった。
「あれ? 有紗、食べきれそう?」
ゆっくり食べていた私だが、そろそろ実はキツくなっていた。
「要くん、ちょっと厳しいかも……」
私は素直に食べ切れそうにないことを伝える。
「無理するな? ダメなら俺まだ入るから食べられるから」
そういってポンポンと頭を撫でてくる。
向かいで食べていた日菜子と蒼くんが顔を見合わせて、私達に言った。
「要と有紗の方がよっぽど仲良しカップルに見える!」
ふたりで声を揃えて、ニマニマ顔で言うので私は照れくささから勢いよく、
「そんな事ない! 君らの方がラブラブだから!」
お昼を食べ終わったあとは有名なローカル線に乗り、本格的に観光した。
大仏が有名なお寺や、境内までの参道にある有名なお店通りでは手焼き煎餅を食べたり、さつまいもソフトクリームをパクついたりした。
そうして訪れた八幡宮は広い境内をひたすら歩き、参拝。
そこで、わたしは折鶴の形の根付守りを買った。
見た目が可愛らしくかつ、綺麗だと感じたからだ。
たまに、猫が歩いたり、木上をリスが走てったり。
境内の中は意外と動物がいて驚く。
「リス、可愛い! けどすばしっこいね!」
「確かに! 動き早くて写メ撮れなかったよ」
そんな話をしつつ、観光地を後にして私達は帰路についた。
その頃にはすっかり夕方近くなっていた。
学校の最寄り駅についたのは19時頃。
「おやつ食べたけどお腹減ったよね! ご飯食べて帰ろうよ!」
その日菜子の声に、私達は放課後にもたまに立ち寄るファミレスへと足を向けた。
ファミレスでもすっかり皆で食べながら話し込んで、気付けば午後は十時に差し掛かっていた。
「さすがに、そろそろ帰らないと不味いな!」
そうしてお開きになる。
当たり前のように、私の隣に来て手を繋ぐ要くんに聞いた。
「要くん? もう帰るんでしょう? 日菜子と歩きじゃないの?」
そう、疑問を口にすれば要くんはあっさり返す。
「日菜子は蒼が送ってくし、この時間だから有紗は俺が送ってく」
改札を抜けようとするのを、腕を引いて止める。
「大丈夫だよ!今から電車に乗るって連絡入れれば、車でお姉ちゃんが迎えに来てくれるから」
送る必要のないことを伝えたのに、要くんは手を離してくれない。
「俺がもう少し有紗とふたりで居たいから、送らせてほしい」
今日一番の要くんからのストレートな言葉に、私は息を詰めて押し黙ってしまった……。
要くんも、少しばかり恥ずかしそう。
それでも、ここは譲りたくないのか手は離れないまま。
私は握られた手に落としていた視線を上げて、要くんと視線を合わせる。
「ありがとう。それじゃあ手間になっちゃうけど、お願いします」
なかなか普段こんな時間に出歩かないし、電車も乗らないので、私は要くんに甘える事にした。
「うん。でもって、俺の言っている意味分かっている?」
その言葉に、ん? と首を傾げれば、
「わざとなのか、天然なのか……。もう少し俺の発言が、どんな気持ちから来るか考えてみて?」
そう言われつつ、手を繋いだまま私達は日菜子と蒼くんと別れて改札を抜けて私の自宅最寄り駅へと戻るべく、電車が来るのを二人で待った。
その間ぐるぐる巡ったのは、要くんの言葉の意味だった。
もう少し、二人で一緒に居たいって……。
だから送って行くって……。
まさか……、ねぇ?
だって、要くんはサッカー部で話題のイケメンだし。
校内では同級生からも、下級生からも人気でイケメンと大人気なのに。
そんな要くんが、こんな取り柄もない私が気になるとか?
そんなこと、ある訳ない、ない!
そこまで考えてふぅと一息ついて首を横に振っていたら、要くんが少し呆れた声で言う。
「有紗。考えて、自己完結して落ち着いたとこ悪いけど……。有紗が考えないようにした方が正解だぞって言っとくな。じゃないと俺、どこにもいけないし、なにも出来なくなりそうだから」
要くんは私を見つめて、じつにいい笑顔を浮かべている。
私は言われた事に、ギョッとするとなんとか返事をする。
「要くん?そんなこと言われると私、どうしたらいいのか分からないよ……」
じわじわと理解して、言葉を返すけれど私の顔はきっと今真っ赤に染まっていることだろう。
「ほら電車来るから、お姉さんに連絡しろ」
そう言われて慌ててお姉ちゃんにメールすれば、これからここに止まる電車に乗っていると言う。
今日は仕事が忙しかったみたいだ。
「来る電車にお姉ちゃん乗っているみたいなの。お姉ちゃんと合流して帰るよ」
メールの返信から伝えると、要くんは少し残念そう。
「じゃあ、乗るまで見送らせて」
「うん、ありがとう」
ホームに電車が来るアナウンスと音楽が流れ出した。
そうしてきた、電車には確かにお姉ちゃんが宏樹さんと乗っていてびっくりしつつ合流。
「要くん、ありがとう。また月曜にね!」
要くんはお姉ちゃん達に頭を下げつつ、返事をくれた。
「おう、また月曜にな」
そうして、今日ほとんど繋がれていた手が離れた。
少しの寂しさを伴って……。
そんな私たちの様子を見ていたお姉ちゃんと宏樹くんはにっこり笑って言った。
「楽しかったみたいだし、充実した一日になったみたいね?」
「うん、楽しかった」
そう、楽しかった。
今日、手を繋いで歩いた水族館も観光地も。
どれも新鮮で、ちょこちょこ握られる手にドキドキして……。
なにより、よく笑っていた要くんの笑顔が輝いていて、眩しくって……。
不覚にも高鳴る動悸を、なんでもない顔をして誤魔化すので精一杯だった……。
もうじき、ジメジメとした季節は終わりを迎える。
私の切られた期限も刻々と迫ってきていた……。
梅雨の明ける頃……。
私以外の三人は再び頭を抱えていた。
夏休み前、期末テストの時期である。
今回は期末ゆえ、範囲も教科も多い。
テスト期間は長く、容赦のない範囲と教科数に三人は根を上げていた。
「振り返っても分かんない! 解ける気がしない! 終わった……、今回は終わったぁ!!」
日菜子は大きく叫んで頭を抱えこむと、机に突っ伏した。
「日菜子! お前もか!? 仲間だな! でも、次が引退試合だろ?! 赤点なんて取っていられねぇよ……」
叫びながらも、顔には悲壮感漂う蒼くん。
「日本から出る事ないのに、英語の授業のある意味が分からない!!」
最後はこの中では一番マシだけど、英語が壊滅的な要くん。
嘆く三人を見つつ、私はそっと息を吐き出す。
ちなみに三人は嘆いているが、このテスト範囲は酷ではないし、ちゃんと勉強すれば大丈夫だと思われる。
しかし、ここにいる三人は部活命の三人なのだ…。
普段の放課後はサッカーの練習を、日菜子はテニスをしている。
運動が中心の生活なのだ、しかも引退前。
今は練習に時間をさきたいだろう……。
私はこんなこともあろうと、用意していた物をカバンから取り出した。
「はい、これ期末テスト対策用ノート。主要科目は網羅しているから。頑張れ!」
鞄から取り出したのは、私自身の復習を兼ねてテスト範囲をまとめた各教科のノートだった。
それを見せると日菜子と蒼くんは目を輝かせ、要くんも英語の範囲を見ようとしていた。
「有紗! ありがとう! もう、有紗神様!!」
日菜子が大げさに喜ぶので、苦笑してしまう。
「そんな大げさに喜ばなくて大丈夫。これは私がテスト前に復習に使った物なだけだから」
にっこり笑って言うと、三人は目を丸くしてしまう。
「有紗ちゃん、テスト前にこのノート分は勉強が済んでいるってこと?」
蒼くんがびっくりしながら聞くので、なんでなんだろうと首を傾げながらも答える。