もちろん、お姉ちゃんも宏樹くんにカットや髪染めをしてもらっている。
そんな宏樹くんのお客さんにリゾート経営の会社の社長の奥様が居るらしく、彼女やその妹と妹の友人を連れてキャンプに行く予定だと接客しつつ話したら、施術を終えて帰る前にその奥様が旦那様に事情を話して経営しているキャンプ場を一泊押さえてくれたのだ。
宏樹くんの仕事柄もあるけれど、人脈の広さには驚かされる。
キャンプの予定を立てたのは1ヶ月を切っていたのにも関わらず、宏樹くんのツテを駆使して無事にキャンプ場も予約出来てキャンプに行けることになったのだった。
そうして迎えたキャンプ当日。
集合は学校の最寄り駅。
駅のロータリーに車を停めると、様子を見ながら待っていたのか直ぐに三人は気づいてロータリーに着いた宏樹くんの車に近づいてきた。
「おはよう! 有紗。いい天気で良かったよね!」
弾んだ声の日菜子は今日も元気いっぱいだ。
「おはよう、有紗ちゃん。お姉さん、彼氏さん。今日はよろしくお願いします」
「よろしくお願いします」
男子ふたりはしっかりご挨拶。
それに気づいた日菜子も慌てて、挨拶する。
「今日は私達も一緒に誘ってくれてありがとうございます! よろしくお願いします」
そんな三人をお姉ちゃんと宏樹くんは微笑ましげに見て、返事をした。
「こちらこそ、誘いに乗ってくれてありがとう。キャンプは人数が多い方が楽しいからね! みんなで楽しもう」
「はーい!」
高校生組は元気に返事をして、宏樹くんの大きなワゴン車に乗り込んだのだった。
ここから、キャンプ場までおよそ二時間。
車内でも和気あいあいとお喋りをして、気づけば辺りは緑が目に鮮やかに飛び込んでくるような場所に来ていた。
「そろそろ目的のキャンプ場に着くからね!」
事前に食材や必要なものの買い出しは、お姉ちゃんと宏樹くんが済ませてくれた。
お姉ちゃんたちに任せてばかりで申し訳ないから買い出しには私もついて行くと言った。
しかし、お姉ちゃんからの返事はノーだった。
『デートのついでに買いに行くから気にしなくていいの!』
そう言われてしまえば、お邪魔は出来ないのですごすごと引き下がったのだった。
なんだかんだお姉ちゃんと宏樹くんは仲が良くて、ラブラブなのだ。
そんな事前準備のことを振り返っているうちに、無事にキャンプ場へとたどり着いた。
車から降りると、空気から全く違う。
そばには、緩やかに流れる川があり、そこから少し離れるとテントを張るスペース。
さらに奥にはバンガローという、小さな小屋がある。
今回私達はバンガローをひとつ借りて、みんなで雑魚寝して一泊することになっている。
まるで小学生の頃の野外活動のキャンプと同じ感じで、とっても楽しみだった。
ちなみにここは天然温泉も近くから出ているので、お風呂も入れるちょっと珍しいタイプのキャンプ場なのだった。
「すごい! 空気がおいしいってこういうことだね!」
私も久しぶりの山の中ではしゃいでしまう。
みんなもなかなか普段来られない自然の中で、大きく伸びる。
「本当に空気が違うね! 澄んでいるって言うか、これがマイナスイオンか!」
実に日菜子らしい言い方に、みんなもニコニコしながらこの空気を味わう。
味わうというのが正しいくらいここは、とっても気持ちがいい。
お昼はこのキャンプ場が準備している名物の流しそうめんに挑戦だ。
既に流すレーンは作られているので、あとは各々が素麺さえ準備すれば自由に使って大丈夫だという。
その案内をキャンプ場の説明に見つけた時に私達はなかなか出来ないしお昼は移動してすぐになるから、これにしよう! とお姉ちゃん達にも提案して決まっていた。
素麺を茹でて、準備万端!
私はまず流すのがやってみたくて、スタンバイしているみんなに声をかけて流し始めた。
「それじゃあ、いくよ!」
流した素麺をまず、ガツッと掴んで食べたのは蒼くん。
「んー! 美味しい!」
「なー! 私の素麺!」
「いやいや、日菜っち。これは早い者勝ちよ?」
「あー! 次は取る!!」
なんて会話を繰り広げながら、楽しくお昼を食べた。
もちろん私も途中からお姉ちゃんと交代して食べたけれど。
流しそうめんを綺麗にとって食べるのはコツがあるようで最初はなかなか掴めなくて、日菜子や要くん達に笑われながらも奮闘して素麺を食べた。
かなり楽しかった。
お昼を食べた後は、男子は川釣りに挑戦していて私達女子は所々にあるハンモックで寝たり読書したりとゆったりと過ごした。
そして夕方。
メインのBBQの準備を始める頃、そこに釣りから帰ってきた男子組のバケツには鮎やイワナ、マスが入っていた。
しかも、かなりの数の魚がバケツに居たのだ。
「え、すごい! こんなに釣ったの?!」
驚くと、三人はニコニコ嬉しそう。
「まぁ、ここ釣り堀でお魚放流しているらしいから。釣りやすいよ」
そんな宏樹くんの言葉に要くんも蒼くんもうなずきつつ、言った。
「結構直ぐに食いついてくるよ。だから簡単!」
「引いたら上げるだけだから海釣りより楽だぞ?」
そんな楽しげな三人に、私は言った。
「それで、これ誰が捌いて食べられる様にするの?」
私もさすがに魚は切り身でしか買わないから捌くことなんて出来ない。
美味しそうだけど、食べるにはそれなりに下処理が必要だと思われる。
「なーに、心配要らない! 俺がちゃんと美味しく食べられるようにしてやるからな」
私の頭にぽんと手を置いて、宏樹くんは自信満々。
そっか、宏樹くんはアウトドア好き。
釣りも好きだから、お魚捌くことも出来るのかと思い至った。
「宏樹くん、すごいね! 私も見ていていい?」
「あぁ、構わないよ」
そうして釣ったお魚も加わり、夜のBBQはかなり豪華になっていく。
キノコと野菜とバターで一緒にお魚も包んでホイル焼きにしたり、シンプルに塩を振って塩焼きにしたり。
お魚は新鮮でとっても美味しかったし、男子達はさらに買ってきたお肉ももりもり食べた。
食べ盛りの男子高校生ふたりの食欲は毎回旺盛で、今回もそんなに食べられるの? て量をペロッと平らげた。
お魚の分お肉は余るかと思ったけれど、宏樹くんも結構な量を食べたのでお肉は綺麗になくなった。
「お魚で結構お腹いっぱいになったのに、男の子って本当にいっぱい食べるんだね」
そう、食事風景を見つつ呟く。
「たしかに、よく食べるよね」
「宏樹もいるから多めに用意したけど、それで正解だったわね」
お姉ちゃんに聞くと宏樹くんは痩せの大食いってタイプで、食べても太らない体質らしい。
なんて羨ましいのか!
私なんて食べたら身につくから、日々気をつけているというのに。
「それ、女子にはかなり羨ましくて仕方ない体質ですよね」
日菜子が返した言葉に、お姉ちゃんは実に深くうなずいて返した。
「たまにね、ちょっと叩きたくなる事があるよ。食べ放題に行った時とか……」
「なんか、わかる気がする……」
女子の会話そっちのけで、男子組はとても豪快にたくさんの量のお魚、お肉、野菜を綺麗に食べ切ったのだった。
みんなでBBQのあと片付けをしたあとは、夏の風物詩。
「これ! みんなでやろう!」
日菜子が持ち出したのは花火のセット。
しかも置型、手持ちと大きなビニールバックにたくさん入ったやつ。
「おぉ! これは俺達準備してなかった。日菜子ちゃん分かっているね!」
そして、再び昼間の流しそうめん位に大はしゃぎしながら花火をした。
日菜子は、要くんと蒼くんが置型を並べ終えて離れるとネズミ花火を持ち出して驚かせていた。
手持ち花火でオタ芸する蒼くんを要くんが危ないと止めたりしていた。
花火の明るさと同じくらい、にぎやかで笑いが絶えない。
最後の線香花火は誰が一番長くもつか対決になり、勝ったのはお姉ちゃんだった。
「悔しい、もう少しで勝てたのに」
そんな私の呟きに、少し目を丸くしたあと、要くんは髪を撫でつつ言った。
「あぁ、惜しかったよな。最後姉妹対決だったし。またみんなでやろう」
その言葉に私も笑みを返した。
「そうだね、またやりたいね」
それが難しくなる事を隠したまま、私は笑顔を返した。
花火が終わると、男女に別れて温泉へと行き今日泊まるバンガローに戻った。
リゾート経営の会社が扱うだけあって、室内は綺麗で清潔感がある。
そこに布団を敷いて、みんなで転がる。
本当に楽しくて、楽しくて。
話しながらも疲れた私は、誰より早く寝てしまったのだった。
そんな宏樹くんのお客さんにリゾート経営の会社の社長の奥様が居るらしく、彼女やその妹と妹の友人を連れてキャンプに行く予定だと接客しつつ話したら、施術を終えて帰る前にその奥様が旦那様に事情を話して経営しているキャンプ場を一泊押さえてくれたのだ。
宏樹くんの仕事柄もあるけれど、人脈の広さには驚かされる。
キャンプの予定を立てたのは1ヶ月を切っていたのにも関わらず、宏樹くんのツテを駆使して無事にキャンプ場も予約出来てキャンプに行けることになったのだった。
そうして迎えたキャンプ当日。
集合は学校の最寄り駅。
駅のロータリーに車を停めると、様子を見ながら待っていたのか直ぐに三人は気づいてロータリーに着いた宏樹くんの車に近づいてきた。
「おはよう! 有紗。いい天気で良かったよね!」
弾んだ声の日菜子は今日も元気いっぱいだ。
「おはよう、有紗ちゃん。お姉さん、彼氏さん。今日はよろしくお願いします」
「よろしくお願いします」
男子ふたりはしっかりご挨拶。
それに気づいた日菜子も慌てて、挨拶する。
「今日は私達も一緒に誘ってくれてありがとうございます! よろしくお願いします」
そんな三人をお姉ちゃんと宏樹くんは微笑ましげに見て、返事をした。
「こちらこそ、誘いに乗ってくれてありがとう。キャンプは人数が多い方が楽しいからね! みんなで楽しもう」
「はーい!」
高校生組は元気に返事をして、宏樹くんの大きなワゴン車に乗り込んだのだった。
ここから、キャンプ場までおよそ二時間。
車内でも和気あいあいとお喋りをして、気づけば辺りは緑が目に鮮やかに飛び込んでくるような場所に来ていた。
「そろそろ目的のキャンプ場に着くからね!」
事前に食材や必要なものの買い出しは、お姉ちゃんと宏樹くんが済ませてくれた。
お姉ちゃんたちに任せてばかりで申し訳ないから買い出しには私もついて行くと言った。
しかし、お姉ちゃんからの返事はノーだった。
『デートのついでに買いに行くから気にしなくていいの!』
そう言われてしまえば、お邪魔は出来ないのですごすごと引き下がったのだった。
なんだかんだお姉ちゃんと宏樹くんは仲が良くて、ラブラブなのだ。
そんな事前準備のことを振り返っているうちに、無事にキャンプ場へとたどり着いた。
車から降りると、空気から全く違う。
そばには、緩やかに流れる川があり、そこから少し離れるとテントを張るスペース。
さらに奥にはバンガローという、小さな小屋がある。
今回私達はバンガローをひとつ借りて、みんなで雑魚寝して一泊することになっている。
まるで小学生の頃の野外活動のキャンプと同じ感じで、とっても楽しみだった。
ちなみにここは天然温泉も近くから出ているので、お風呂も入れるちょっと珍しいタイプのキャンプ場なのだった。
「すごい! 空気がおいしいってこういうことだね!」
私も久しぶりの山の中ではしゃいでしまう。
みんなもなかなか普段来られない自然の中で、大きく伸びる。
「本当に空気が違うね! 澄んでいるって言うか、これがマイナスイオンか!」
実に日菜子らしい言い方に、みんなもニコニコしながらこの空気を味わう。
味わうというのが正しいくらいここは、とっても気持ちがいい。
お昼はこのキャンプ場が準備している名物の流しそうめんに挑戦だ。
既に流すレーンは作られているので、あとは各々が素麺さえ準備すれば自由に使って大丈夫だという。
その案内をキャンプ場の説明に見つけた時に私達はなかなか出来ないしお昼は移動してすぐになるから、これにしよう! とお姉ちゃん達にも提案して決まっていた。
素麺を茹でて、準備万端!
私はまず流すのがやってみたくて、スタンバイしているみんなに声をかけて流し始めた。
「それじゃあ、いくよ!」
流した素麺をまず、ガツッと掴んで食べたのは蒼くん。
「んー! 美味しい!」
「なー! 私の素麺!」
「いやいや、日菜っち。これは早い者勝ちよ?」
「あー! 次は取る!!」
なんて会話を繰り広げながら、楽しくお昼を食べた。
もちろん私も途中からお姉ちゃんと交代して食べたけれど。
流しそうめんを綺麗にとって食べるのはコツがあるようで最初はなかなか掴めなくて、日菜子や要くん達に笑われながらも奮闘して素麺を食べた。
かなり楽しかった。
お昼を食べた後は、男子は川釣りに挑戦していて私達女子は所々にあるハンモックで寝たり読書したりとゆったりと過ごした。
そして夕方。
メインのBBQの準備を始める頃、そこに釣りから帰ってきた男子組のバケツには鮎やイワナ、マスが入っていた。
しかも、かなりの数の魚がバケツに居たのだ。
「え、すごい! こんなに釣ったの?!」
驚くと、三人はニコニコ嬉しそう。
「まぁ、ここ釣り堀でお魚放流しているらしいから。釣りやすいよ」
そんな宏樹くんの言葉に要くんも蒼くんもうなずきつつ、言った。
「結構直ぐに食いついてくるよ。だから簡単!」
「引いたら上げるだけだから海釣りより楽だぞ?」
そんな楽しげな三人に、私は言った。
「それで、これ誰が捌いて食べられる様にするの?」
私もさすがに魚は切り身でしか買わないから捌くことなんて出来ない。
美味しそうだけど、食べるにはそれなりに下処理が必要だと思われる。
「なーに、心配要らない! 俺がちゃんと美味しく食べられるようにしてやるからな」
私の頭にぽんと手を置いて、宏樹くんは自信満々。
そっか、宏樹くんはアウトドア好き。
釣りも好きだから、お魚捌くことも出来るのかと思い至った。
「宏樹くん、すごいね! 私も見ていていい?」
「あぁ、構わないよ」
そうして釣ったお魚も加わり、夜のBBQはかなり豪華になっていく。
キノコと野菜とバターで一緒にお魚も包んでホイル焼きにしたり、シンプルに塩を振って塩焼きにしたり。
お魚は新鮮でとっても美味しかったし、男子達はさらに買ってきたお肉ももりもり食べた。
食べ盛りの男子高校生ふたりの食欲は毎回旺盛で、今回もそんなに食べられるの? て量をペロッと平らげた。
お魚の分お肉は余るかと思ったけれど、宏樹くんも結構な量を食べたのでお肉は綺麗になくなった。
「お魚で結構お腹いっぱいになったのに、男の子って本当にいっぱい食べるんだね」
そう、食事風景を見つつ呟く。
「たしかに、よく食べるよね」
「宏樹もいるから多めに用意したけど、それで正解だったわね」
お姉ちゃんに聞くと宏樹くんは痩せの大食いってタイプで、食べても太らない体質らしい。
なんて羨ましいのか!
私なんて食べたら身につくから、日々気をつけているというのに。
「それ、女子にはかなり羨ましくて仕方ない体質ですよね」
日菜子が返した言葉に、お姉ちゃんは実に深くうなずいて返した。
「たまにね、ちょっと叩きたくなる事があるよ。食べ放題に行った時とか……」
「なんか、わかる気がする……」
女子の会話そっちのけで、男子組はとても豪快にたくさんの量のお魚、お肉、野菜を綺麗に食べ切ったのだった。
みんなでBBQのあと片付けをしたあとは、夏の風物詩。
「これ! みんなでやろう!」
日菜子が持ち出したのは花火のセット。
しかも置型、手持ちと大きなビニールバックにたくさん入ったやつ。
「おぉ! これは俺達準備してなかった。日菜子ちゃん分かっているね!」
そして、再び昼間の流しそうめん位に大はしゃぎしながら花火をした。
日菜子は、要くんと蒼くんが置型を並べ終えて離れるとネズミ花火を持ち出して驚かせていた。
手持ち花火でオタ芸する蒼くんを要くんが危ないと止めたりしていた。
花火の明るさと同じくらい、にぎやかで笑いが絶えない。
最後の線香花火は誰が一番長くもつか対決になり、勝ったのはお姉ちゃんだった。
「悔しい、もう少しで勝てたのに」
そんな私の呟きに、少し目を丸くしたあと、要くんは髪を撫でつつ言った。
「あぁ、惜しかったよな。最後姉妹対決だったし。またみんなでやろう」
その言葉に私も笑みを返した。
「そうだね、またやりたいね」
それが難しくなる事を隠したまま、私は笑顔を返した。
花火が終わると、男女に別れて温泉へと行き今日泊まるバンガローに戻った。
リゾート経営の会社が扱うだけあって、室内は綺麗で清潔感がある。
そこに布団を敷いて、みんなで転がる。
本当に楽しくて、楽しくて。
話しながらも疲れた私は、誰より早く寝てしまったのだった。