「はぁ……すみません。部屋、どこか空いてますか?」
 町に戻って来て、数時間が経った。
 町の旅館に来て、女将さんに聞く。
「ええ。空いていますよ……って、あら。あなた、花里さん?」
 なぜ私を知っているのか。
「はい。えっと、どこかでお会いしましたか?」
「あらあら違うわよ。あなた、火事でお家なくなっちゃったでしょ?」
 そういうことか。
「はい……まあ、その後は陰陽山にいたんですけど、色々あって戻って来たんです。おわかりの通り家はないので」
 女将さんは深く頷いてくれた。
「なにがあったのかはわからないけれど、今はゆっくり休みなさい。休息は心も整うわよ」
 女将さんが部屋を案内してくれた。
 これからはどうしようか。
 琥珀くんにも頼れない。
 陰陽山は入ることはできない。
 そんなことを思いながら眠りについた。