ある日、琥珀くんから伝えられたことがある。
「あ、そうだ。今度、汐來と芙羽梨で模擬戦的な感じで怨霊を祓って修行しようってなってるんだけどいい?」
いいかどうか聞かれても拒否権はなさそうだ。
「うん。わかった」
それから一週間後。
「さあ、始めましょ?ルールは簡単よ。この辺に集まる怨霊を祓いまくる。それで祓った数を競うのよ」
汐來さんから説明を受ける。
「じゃあ、──始め!」
叶夜さんの合図で私と汐來さんは飛び出す。
「波ノ綾急急如律令!」
まずは一体。
そして一体と数をこなしていく。
「五月雨残星急急如律令!」
汐來さんが圧倒的強さを見せつける。
「うっ……」
私のところにいる怨霊がなかなか手強い。
「紅蘭天籟急急如律令~」
ふわふわとした少し高い声が聞こえてきた。
「え、ちょっ……っ」
どこか焦ったような呆れるような汐來さんの声が聞こえた。
怨霊は祓われたが、代わりに見知らぬ女性も同時に見えた。
とろんとしたたれ目が特徴的で栗色の髪がくるくると巻かれていて、妖精、女神などそのあたりの言葉がぴったりな見た目だ。
「……本当になにをしているのよ」
「えっ?あら?わたくし、やらかしてしまいましたか?」
その人はこてんと首を傾げた。
「ええ。やってしまったのよ。模擬戦をしていたの、怨霊祓いのね!」
その人は目を見開いていた。
「わ、わたくし、なんてことを……」
その人の顔色が一気に悪くなっていく。
「まあまあ。知らなかったんでしょ?」
「こ、琥珀様!」
その人は琥珀くんを見るなり、キラキラとした瞳になる。
「それより、芙羽梨に状況説明した方がいいんじゃない?」
琥珀くんの言葉にその人がハッとする。
「名乗るのが大変遅くなりました。わたくし漆戸天奈と申します~」
「花里芙羽梨です」
名前まで可愛い。
「天奈は安倍晴明の式神、六合を宿す陰陽師だよ」
ふわふわした見た目とは裏腹にとてつもない強さを持っているのか。
模擬戦は引き分けとし、天奈さんの家でお茶をすることになった。
「お待たせいたしました~」
天奈さんは白色のネグリジェを着ていて、おとぎ話のお姫様のようだった。
「かわいい……」
ボソッとそう呟くと、天奈さんはクスッと笑った。
「嬉しいです。さあ、ここに座ってくださいませ」
天奈さんはティーカップをおぼんにのせて、庭に案内してくれた。
天奈さんの家も火宮家に負けないくらい大きな家で、庭は草原のようになっている。
なにか物を置いているわけでもない。
ただ、大きな木がぽつんと植えられている。
「やっぱり、いつ来てもここって落ち着くわね」
汐來さんが天奈さんに向かってそう言った。
「そうでしょう?自然はわたくしのお友達ですから」
「……そういえば、天奈さんって、何歳なんですか?」
「わたくしは皆さまの一つ下で、十九です」
十九歳なのにこんなに大人びているのか。
「芙羽梨様は星雨学園の大学部には通われるのですか?」
私の年齢はまだ大学生なのだった。
町では一人暮らしで学校など通えるお金を持っていなかった。
「どうだろう……すみません、まだちょっとわからなくて」
「そうですか。町から来られたってお聞きしましたし、無理もありませんね」
そう言って、天奈さんはニコっと笑った。
お茶会は終わり、夕方家に帰った。
「ただいま」
「おかえり、ご飯できてるよ」
「あ、ごめん。ありがとね」
私は急いで着替えてリビングに向かう。
「美味しそう……!」
琥珀くんは料理までできるのか。
「今日のお茶会はどうだったの?」
「あ、そうだ。私、星雨学園の大学部に入れるの?」
琥珀くんは通っているのか。
「入れるけど、どうして?」
「天奈さんに通うかどうか聞かれて、入れるのかもわからなくて答えられなかったの」
琥珀くんは「なるほど」と頷いた。
「入ることは全然できるし、授業だって受けられる。でも、星雨学園は陰陽師が通う学校。実力がないと強い陰陽師とは出会えない」
琥珀くんの瞳は真剣そのものだった。
「でも、まあいい機会だし、通ってみれば?」
琥珀くんはふわりと笑った。
「え、いいの?わ、私……お金あんまり持ってなくて、通えるか不安なんだけど」
「お金のことは気にしないで。僕がどうにかするよ」
こうして、私は星雨学園に通えることになった。
「あ、そうだ。今度、汐來と芙羽梨で模擬戦的な感じで怨霊を祓って修行しようってなってるんだけどいい?」
いいかどうか聞かれても拒否権はなさそうだ。
「うん。わかった」
それから一週間後。
「さあ、始めましょ?ルールは簡単よ。この辺に集まる怨霊を祓いまくる。それで祓った数を競うのよ」
汐來さんから説明を受ける。
「じゃあ、──始め!」
叶夜さんの合図で私と汐來さんは飛び出す。
「波ノ綾急急如律令!」
まずは一体。
そして一体と数をこなしていく。
「五月雨残星急急如律令!」
汐來さんが圧倒的強さを見せつける。
「うっ……」
私のところにいる怨霊がなかなか手強い。
「紅蘭天籟急急如律令~」
ふわふわとした少し高い声が聞こえてきた。
「え、ちょっ……っ」
どこか焦ったような呆れるような汐來さんの声が聞こえた。
怨霊は祓われたが、代わりに見知らぬ女性も同時に見えた。
とろんとしたたれ目が特徴的で栗色の髪がくるくると巻かれていて、妖精、女神などそのあたりの言葉がぴったりな見た目だ。
「……本当になにをしているのよ」
「えっ?あら?わたくし、やらかしてしまいましたか?」
その人はこてんと首を傾げた。
「ええ。やってしまったのよ。模擬戦をしていたの、怨霊祓いのね!」
その人は目を見開いていた。
「わ、わたくし、なんてことを……」
その人の顔色が一気に悪くなっていく。
「まあまあ。知らなかったんでしょ?」
「こ、琥珀様!」
その人は琥珀くんを見るなり、キラキラとした瞳になる。
「それより、芙羽梨に状況説明した方がいいんじゃない?」
琥珀くんの言葉にその人がハッとする。
「名乗るのが大変遅くなりました。わたくし漆戸天奈と申します~」
「花里芙羽梨です」
名前まで可愛い。
「天奈は安倍晴明の式神、六合を宿す陰陽師だよ」
ふわふわした見た目とは裏腹にとてつもない強さを持っているのか。
模擬戦は引き分けとし、天奈さんの家でお茶をすることになった。
「お待たせいたしました~」
天奈さんは白色のネグリジェを着ていて、おとぎ話のお姫様のようだった。
「かわいい……」
ボソッとそう呟くと、天奈さんはクスッと笑った。
「嬉しいです。さあ、ここに座ってくださいませ」
天奈さんはティーカップをおぼんにのせて、庭に案内してくれた。
天奈さんの家も火宮家に負けないくらい大きな家で、庭は草原のようになっている。
なにか物を置いているわけでもない。
ただ、大きな木がぽつんと植えられている。
「やっぱり、いつ来てもここって落ち着くわね」
汐來さんが天奈さんに向かってそう言った。
「そうでしょう?自然はわたくしのお友達ですから」
「……そういえば、天奈さんって、何歳なんですか?」
「わたくしは皆さまの一つ下で、十九です」
十九歳なのにこんなに大人びているのか。
「芙羽梨様は星雨学園の大学部には通われるのですか?」
私の年齢はまだ大学生なのだった。
町では一人暮らしで学校など通えるお金を持っていなかった。
「どうだろう……すみません、まだちょっとわからなくて」
「そうですか。町から来られたってお聞きしましたし、無理もありませんね」
そう言って、天奈さんはニコっと笑った。
お茶会は終わり、夕方家に帰った。
「ただいま」
「おかえり、ご飯できてるよ」
「あ、ごめん。ありがとね」
私は急いで着替えてリビングに向かう。
「美味しそう……!」
琥珀くんは料理までできるのか。
「今日のお茶会はどうだったの?」
「あ、そうだ。私、星雨学園の大学部に入れるの?」
琥珀くんは通っているのか。
「入れるけど、どうして?」
「天奈さんに通うかどうか聞かれて、入れるのかもわからなくて答えられなかったの」
琥珀くんは「なるほど」と頷いた。
「入ることは全然できるし、授業だって受けられる。でも、星雨学園は陰陽師が通う学校。実力がないと強い陰陽師とは出会えない」
琥珀くんの瞳は真剣そのものだった。
「でも、まあいい機会だし、通ってみれば?」
琥珀くんはふわりと笑った。
「え、いいの?わ、私……お金あんまり持ってなくて、通えるか不安なんだけど」
「お金のことは気にしないで。僕がどうにかするよ」
こうして、私は星雨学園に通えることになった。