私は田村若葉。私はどういうわけか和風っぽい異世界に迷い込み、ここから脱出するためにまずはここがどういう場所なのか?を調べている最中だ…正直言って全然手掛かりもなく、大きくて不思議な岩があっただけ。私はそれを破壊して先へ進んだが、今のところ情報なし。最も効率がいいのは聞き込みなんだろうけど、そもそも人が見当たらない。どうしたものかと頭を悩ませていると、突然背後から声がした。
「あー!君だよね?」
「???」
急に声をかけられてびっくりした。当然のごとくその人とは面識が何もなく、それは相手も同じだ。声をかけてきた人は30代男性のような見た目で眼鏡をかけており、温厚な現役サラリーマンのような人だった。
「えっと…私に何か用ですか?」
するとその男性は、突然私にお願い事をしてきた。
「君、さっきここにあった岩、壊してたよね?すごく驚いたよ!!」
「え、あ…もしかして壊しちゃいけないものでしたか?すみません邪魔だったので…つい」
「とんでもない!むしろ壊してくれてありがとうだよ!」
「へ???」
「ちょっと君にお願いしたいことがあるんだけど…この街にはびこっている岩を壊してくれないかな?」
「????????」
男性の意味不明な発言に、私は理解が追いつかなかった。岩を壊せ?何言ってるんだこの人は…
「すみませんもっと具体的に詳細を話していただけませんか?というかまずあなたは何者ですか?」
「おっとこれは失礼、僕が誰なのか、話していませんでした!僕はこの街に住んでいるモブ者なんですが、最近困ってることがあって…」
自分でモブって言うのか。心の中で突っ込みながらも彼は事の詳細を話してくれた。
「さっき君が壊した岩なんだけど、実は街中にはびこっていてね…。住民みんなが生活しづらくて役所に苦情が出ているんだ。しかもこの岩の原因や出所もどれだけ調査しても不明で、役所の人たちもほとんどお手上げ状態で…」
「なるほど…」
「さっき岩を壊した君だったらこの惨状をなんとかできるんじゃないか?と思って、君にお願いしたんだ!会ったばかりでこんなことをいきなり頼むのも非常識かもしれないけど…どうか、お願いします!」
「…」
最初はこの依頼を受ける気なんてなかった。でも私もここから脱出したくて人を探していた。そして運よくここに住んでいる人と出会えた。だから依頼を受けるついでにこの人から色々聞いてみるのがいいんじゃないかと思った。何よりこの人のここまで真剣な態度を見ると、どうしても断ることができなかった。この人と関わることでお互いにメリットが生まれると判断した私は…
「その被害が出ている現場まで案内してほしいです」
「おぉ、ありがとうございます!この先です!」
依頼主の男性は感嘆の声をあげながら、私にその場所まで案内してくれた。そこは立派な繁華街で街並みだけで言えば都会の繁華街とさほど変わらなかった。だけどやっぱり異世界だからか、どこか和風と言うかあやかし感がある街だった。その街のあちこちに…さっき私が見た大きさの岩が無数にあった。確かにこれは住人も迷惑するだろうな…。
「なに…この数…」
「これが今のこの街の惨状です。」
「す、すごい数だ…」
いくら私でも、こんな数はさすがに…でも、自分と相手のため!と考えたら考えるより先に体が動いた。私は軽く深呼吸をして…
「フンッ!!」
ありったけの力を込めて岩に向けて拳を放つと、岩は大きな音とともに砕け散った。やっぱり岩だけあってそれなりの衝撃が自分の拳にも伝わる。そして依頼主の男性は驚いた表情と声を見せる。
「おお、すごい…!それにしてもあんな小さくて華奢な女の子がなぜこんな力を…?」
「なんででしょうね。私にもわかりません」
まあ当然の疑問だろう。普通に考えてこんな女子大生、自分でも言うのはなんだがテレビ出演は余裕でできる。なんならお金稼ぎも全然可能だ。でも私はこの力のせいで他人から煙たがられてきた人間だから、できることならこの力は手放したいと思っている。そんなことを考えつつも岩を次々に破壊していく。さすがに私の体力も拳も限界を迎えてきた。
「大丈夫ですか!?あの、無理はしないでください!!」
「いえ、これくらい…」
とはいったものの、もうやばい。というかこれ、岩を全て破壊するよりも元凶を突き止めた方が良くない?と思った私は依頼主の男性にそう言おうとした。するとその時、上の方から声がした。
「ちょっとあなたたち、何してるんですか???」
「!?」
突然の声に私と依頼主は驚愕した。声の方を見るとこれまた見たことないここの住人らしき人で、白髪で腕の太い人が建物の上から私たちを見下ろしていた。
「あなたたち、私の大事なアートに何してくれてるんですか??」
「へ?アート…?」
何を言ってるのか分からなかった。次の瞬間その男は、とりゃ!っと軽快にその建物から飛び降り、こちらに近づいてきた。
「金髪のあなた、さっきから私のコレクションを壊して…どういうつもりですか?」
「あの、コレクションって…もしかしてこの岩のことですか?」
「それ以外ないでしょう!!」
うわまじか!この岩、この人のだったんだ…てことは、これ…
「あなたですか?こんな迷惑行為をしているのは…」
「迷惑だなんてひどいですね。こっちは真剣にアート活動をしているというのに…」
「アート活動?意味が分からないですね」
すごい、もう真犯人が出てきた。依頼主と犯人が言い争っている中私は、素朴な疑問をぶつけた。
「アート活動かなんだか知りませんが、なんでこんな公共の場でやるんですか?ここの住人達に迷惑ですよ?」
「やかましいです。ここはいずれ私の縄張りになる場所です。そんな場所に岩(彫刻作品)を置いて何が悪いんです?」
「縄張り?言っている意味が分からないです。」
「分かりませんか?この世界は私のものだと言っているんです」
「尚更意味が分からないですね。依頼人さん、岩を全部壊すよりこの人殴った方が多分早く解決します。」
「そ、そうだね…。」
あまりに意味不明な会話に私は辟易し、もうこいつぶん殴ってこの面倒事を終わらせようと思っていた。すると犯人もありがたいと言うべきなのか、乗り気になってくれた。
「ふ、いいでしょう。決着をつけましょう。本来あなたのようなか弱い女の子には暴力は振るいたくないですが、あなたは例外だ。私の活動を邪魔したことを病院で後悔してくださいねっ!」
「あぶな!」
そう言ったと同時、犯人は岩を剛速球で投げつけてきた。思わずビビった私は反射的にしゃがんで避けた。
「ちょっと…本気で怪我したらどうするつもりなの今の…。めっちゃ怖かった。」
「大丈夫ですか!?」
依頼人さんに心配されながらも、岩はどんどん飛んでくる。
「ほらほらどうしました?このままだと当たっちゃいますよー?」
「く…このままじゃ。そうだ、あそこに…」
ひとまず私は、まだ壊していなかった岩に身を隠した。犯人はどんどん岩を投げるが、その投げた岩はあたりに転がり落ちていた。そうだ、これなら私も反撃できる。
「おやおや、もう怖気ついてしまいましたかー?」
幸いなことに、あいつは慢心状態だ。反撃するなら今!
「フンッ!!」
「なに!?」
その一瞬のスキをついた私は、剛速球で岩を投げ返す。すると犯人は体勢を崩した。その隙に私は依頼人さんにちょっと危険なお願いをした。
「依頼人さん、岩陰に隠れながらあいつめがけて転がっている岩を投げてください!」
「え、あ、はい!!くらえ」
「く…癪ですね!あなたから痛い目に遭わせましょう!」
こいつを安全に仕留めるなら依頼人さんにも協力してもらうしかない!ちょっと危険な目に遭わせてしまうのが申し訳ないが、依頼人さんが岩陰に隠れながら犯人めがけて岩を投げ、犯人が依頼人さんに気を取られている間に、私は犯人に接近した。そして次の瞬間、私は犯人との距離をゼロにした瞬間に拳を叩きこんだ。
「フン!」(バキッ!!)
「ふごぉ!?」
私の拳を食らった犯人は見事に気絶した。
「ふぅ…やっと片付きました。」
「す、すごいです…。」
こうして私は生きるか死ぬかの思いで戦いを制したあと、依頼人さんとこの後どうするかを話し合っていた。依頼さんも幸いけがはなかったけど、大量の汗が出ているのを私は見逃さなかった。そしてそれは私も同じだった。
「はぁ…はぁ…や、やりましたね!すごいです!!」
「い、依頼人さんも、はぁ…はぁ…ありがとうございます…。」
気づいたらお互い息切れしていた。そして私はすかさず依頼人さんの心配をする。
「てか、すみません!いきなり依頼人さんまで危険な事に巻き込んで…けがはないですか!?」
「僕は全然大丈夫!というか君の方こそ、けがはない?」
「私は大丈夫です…それより、この後どうしますか?」
「では僕が役人さんをここに呼んで、事情を話しつつ、こいつを留置所に移送させてもらいましょう!」
「え、あ、わかりました…。」
依頼人さんのあまりの手際の良さに私はぽかんとしてしまった。そしてその後は依頼人さんが言った通りに役人さんが来て事情を話しつつ、犯人は留置所に気絶したまま移送された。ちなみに気絶させた張本人の私は正当防衛と言うことで事情聴取とかはなかった。
こうして街の岩事件は解決(?)し、私はお礼として依頼人さんにカフェでコーヒーとケーキを奢ってもらった。
「!!すごく美味しいです」
「良かった。ここのカフェはコーヒーもケーキも絶品で、お客さんからも大人気なんだ!ちなみにこの辺のカフェ、基本どこもおいしくておすすめだよ!」
「そうなんですね!もぐ」
普段カフェに行きまくりの私だけど、こんなにおいしいコーヒーとケーキは食べたことがない!まるで…A5ランクのステーキを超空腹状態で食べているような気分だった。ちなみに私が注文したのはスペシャルブレンドとブルーベリーレアチーズケーキだった。でもこれだけおいしいってことは、当然料金も高いのでは?あとでメニュー表を見返したが、案の定だった。もうこれがただで食べられるほそ幸せなことはない…。
「いいんですか?こんな高いのを…」
「君はこの件を解決してくれたんだ!むしろもっと奢らせてって思うくらいだよ」
「いや、さすがにそれ以上は…」
ちなみにこのカフェの名前は「リーフ・ビア」であり、次来るときは相当稼がないとだめだなと思いつつ、カフェを後にした私たちは互いにお礼を言いつつ、別れた。
「この異世界を脱出するために手がかりを探してたけど、こんな美味しいカフェがあったとは…。って、あ。」
あの人からこの世界のことを聞くの、忘れていた…。コーヒーとケーキがあまりにも美味しかったからだ。…けど、まあいいか。あの依頼人が言っていたことを思い返すと、脱出の手がかりを探す前にこの世界でカフェ巡りをしてみようと思う私であった。
「あー!君だよね?」
「???」
急に声をかけられてびっくりした。当然のごとくその人とは面識が何もなく、それは相手も同じだ。声をかけてきた人は30代男性のような見た目で眼鏡をかけており、温厚な現役サラリーマンのような人だった。
「えっと…私に何か用ですか?」
するとその男性は、突然私にお願い事をしてきた。
「君、さっきここにあった岩、壊してたよね?すごく驚いたよ!!」
「え、あ…もしかして壊しちゃいけないものでしたか?すみません邪魔だったので…つい」
「とんでもない!むしろ壊してくれてありがとうだよ!」
「へ???」
「ちょっと君にお願いしたいことがあるんだけど…この街にはびこっている岩を壊してくれないかな?」
「????????」
男性の意味不明な発言に、私は理解が追いつかなかった。岩を壊せ?何言ってるんだこの人は…
「すみませんもっと具体的に詳細を話していただけませんか?というかまずあなたは何者ですか?」
「おっとこれは失礼、僕が誰なのか、話していませんでした!僕はこの街に住んでいるモブ者なんですが、最近困ってることがあって…」
自分でモブって言うのか。心の中で突っ込みながらも彼は事の詳細を話してくれた。
「さっき君が壊した岩なんだけど、実は街中にはびこっていてね…。住民みんなが生活しづらくて役所に苦情が出ているんだ。しかもこの岩の原因や出所もどれだけ調査しても不明で、役所の人たちもほとんどお手上げ状態で…」
「なるほど…」
「さっき岩を壊した君だったらこの惨状をなんとかできるんじゃないか?と思って、君にお願いしたんだ!会ったばかりでこんなことをいきなり頼むのも非常識かもしれないけど…どうか、お願いします!」
「…」
最初はこの依頼を受ける気なんてなかった。でも私もここから脱出したくて人を探していた。そして運よくここに住んでいる人と出会えた。だから依頼を受けるついでにこの人から色々聞いてみるのがいいんじゃないかと思った。何よりこの人のここまで真剣な態度を見ると、どうしても断ることができなかった。この人と関わることでお互いにメリットが生まれると判断した私は…
「その被害が出ている現場まで案内してほしいです」
「おぉ、ありがとうございます!この先です!」
依頼主の男性は感嘆の声をあげながら、私にその場所まで案内してくれた。そこは立派な繁華街で街並みだけで言えば都会の繁華街とさほど変わらなかった。だけどやっぱり異世界だからか、どこか和風と言うかあやかし感がある街だった。その街のあちこちに…さっき私が見た大きさの岩が無数にあった。確かにこれは住人も迷惑するだろうな…。
「なに…この数…」
「これが今のこの街の惨状です。」
「す、すごい数だ…」
いくら私でも、こんな数はさすがに…でも、自分と相手のため!と考えたら考えるより先に体が動いた。私は軽く深呼吸をして…
「フンッ!!」
ありったけの力を込めて岩に向けて拳を放つと、岩は大きな音とともに砕け散った。やっぱり岩だけあってそれなりの衝撃が自分の拳にも伝わる。そして依頼主の男性は驚いた表情と声を見せる。
「おお、すごい…!それにしてもあんな小さくて華奢な女の子がなぜこんな力を…?」
「なんででしょうね。私にもわかりません」
まあ当然の疑問だろう。普通に考えてこんな女子大生、自分でも言うのはなんだがテレビ出演は余裕でできる。なんならお金稼ぎも全然可能だ。でも私はこの力のせいで他人から煙たがられてきた人間だから、できることならこの力は手放したいと思っている。そんなことを考えつつも岩を次々に破壊していく。さすがに私の体力も拳も限界を迎えてきた。
「大丈夫ですか!?あの、無理はしないでください!!」
「いえ、これくらい…」
とはいったものの、もうやばい。というかこれ、岩を全て破壊するよりも元凶を突き止めた方が良くない?と思った私は依頼主の男性にそう言おうとした。するとその時、上の方から声がした。
「ちょっとあなたたち、何してるんですか???」
「!?」
突然の声に私と依頼主は驚愕した。声の方を見るとこれまた見たことないここの住人らしき人で、白髪で腕の太い人が建物の上から私たちを見下ろしていた。
「あなたたち、私の大事なアートに何してくれてるんですか??」
「へ?アート…?」
何を言ってるのか分からなかった。次の瞬間その男は、とりゃ!っと軽快にその建物から飛び降り、こちらに近づいてきた。
「金髪のあなた、さっきから私のコレクションを壊して…どういうつもりですか?」
「あの、コレクションって…もしかしてこの岩のことですか?」
「それ以外ないでしょう!!」
うわまじか!この岩、この人のだったんだ…てことは、これ…
「あなたですか?こんな迷惑行為をしているのは…」
「迷惑だなんてひどいですね。こっちは真剣にアート活動をしているというのに…」
「アート活動?意味が分からないですね」
すごい、もう真犯人が出てきた。依頼主と犯人が言い争っている中私は、素朴な疑問をぶつけた。
「アート活動かなんだか知りませんが、なんでこんな公共の場でやるんですか?ここの住人達に迷惑ですよ?」
「やかましいです。ここはいずれ私の縄張りになる場所です。そんな場所に岩(彫刻作品)を置いて何が悪いんです?」
「縄張り?言っている意味が分からないです。」
「分かりませんか?この世界は私のものだと言っているんです」
「尚更意味が分からないですね。依頼人さん、岩を全部壊すよりこの人殴った方が多分早く解決します。」
「そ、そうだね…。」
あまりに意味不明な会話に私は辟易し、もうこいつぶん殴ってこの面倒事を終わらせようと思っていた。すると犯人もありがたいと言うべきなのか、乗り気になってくれた。
「ふ、いいでしょう。決着をつけましょう。本来あなたのようなか弱い女の子には暴力は振るいたくないですが、あなたは例外だ。私の活動を邪魔したことを病院で後悔してくださいねっ!」
「あぶな!」
そう言ったと同時、犯人は岩を剛速球で投げつけてきた。思わずビビった私は反射的にしゃがんで避けた。
「ちょっと…本気で怪我したらどうするつもりなの今の…。めっちゃ怖かった。」
「大丈夫ですか!?」
依頼人さんに心配されながらも、岩はどんどん飛んでくる。
「ほらほらどうしました?このままだと当たっちゃいますよー?」
「く…このままじゃ。そうだ、あそこに…」
ひとまず私は、まだ壊していなかった岩に身を隠した。犯人はどんどん岩を投げるが、その投げた岩はあたりに転がり落ちていた。そうだ、これなら私も反撃できる。
「おやおや、もう怖気ついてしまいましたかー?」
幸いなことに、あいつは慢心状態だ。反撃するなら今!
「フンッ!!」
「なに!?」
その一瞬のスキをついた私は、剛速球で岩を投げ返す。すると犯人は体勢を崩した。その隙に私は依頼人さんにちょっと危険なお願いをした。
「依頼人さん、岩陰に隠れながらあいつめがけて転がっている岩を投げてください!」
「え、あ、はい!!くらえ」
「く…癪ですね!あなたから痛い目に遭わせましょう!」
こいつを安全に仕留めるなら依頼人さんにも協力してもらうしかない!ちょっと危険な目に遭わせてしまうのが申し訳ないが、依頼人さんが岩陰に隠れながら犯人めがけて岩を投げ、犯人が依頼人さんに気を取られている間に、私は犯人に接近した。そして次の瞬間、私は犯人との距離をゼロにした瞬間に拳を叩きこんだ。
「フン!」(バキッ!!)
「ふごぉ!?」
私の拳を食らった犯人は見事に気絶した。
「ふぅ…やっと片付きました。」
「す、すごいです…。」
こうして私は生きるか死ぬかの思いで戦いを制したあと、依頼人さんとこの後どうするかを話し合っていた。依頼さんも幸いけがはなかったけど、大量の汗が出ているのを私は見逃さなかった。そしてそれは私も同じだった。
「はぁ…はぁ…や、やりましたね!すごいです!!」
「い、依頼人さんも、はぁ…はぁ…ありがとうございます…。」
気づいたらお互い息切れしていた。そして私はすかさず依頼人さんの心配をする。
「てか、すみません!いきなり依頼人さんまで危険な事に巻き込んで…けがはないですか!?」
「僕は全然大丈夫!というか君の方こそ、けがはない?」
「私は大丈夫です…それより、この後どうしますか?」
「では僕が役人さんをここに呼んで、事情を話しつつ、こいつを留置所に移送させてもらいましょう!」
「え、あ、わかりました…。」
依頼人さんのあまりの手際の良さに私はぽかんとしてしまった。そしてその後は依頼人さんが言った通りに役人さんが来て事情を話しつつ、犯人は留置所に気絶したまま移送された。ちなみに気絶させた張本人の私は正当防衛と言うことで事情聴取とかはなかった。
こうして街の岩事件は解決(?)し、私はお礼として依頼人さんにカフェでコーヒーとケーキを奢ってもらった。
「!!すごく美味しいです」
「良かった。ここのカフェはコーヒーもケーキも絶品で、お客さんからも大人気なんだ!ちなみにこの辺のカフェ、基本どこもおいしくておすすめだよ!」
「そうなんですね!もぐ」
普段カフェに行きまくりの私だけど、こんなにおいしいコーヒーとケーキは食べたことがない!まるで…A5ランクのステーキを超空腹状態で食べているような気分だった。ちなみに私が注文したのはスペシャルブレンドとブルーベリーレアチーズケーキだった。でもこれだけおいしいってことは、当然料金も高いのでは?あとでメニュー表を見返したが、案の定だった。もうこれがただで食べられるほそ幸せなことはない…。
「いいんですか?こんな高いのを…」
「君はこの件を解決してくれたんだ!むしろもっと奢らせてって思うくらいだよ」
「いや、さすがにそれ以上は…」
ちなみにこのカフェの名前は「リーフ・ビア」であり、次来るときは相当稼がないとだめだなと思いつつ、カフェを後にした私たちは互いにお礼を言いつつ、別れた。
「この異世界を脱出するために手がかりを探してたけど、こんな美味しいカフェがあったとは…。って、あ。」
あの人からこの世界のことを聞くの、忘れていた…。コーヒーとケーキがあまりにも美味しかったからだ。…けど、まあいいか。あの依頼人が言っていたことを思い返すと、脱出の手がかりを探す前にこの世界でカフェ巡りをしてみようと思う私であった。