俺は佐々木雄介。今日も俺は親の言うことを無視してニート生活を満喫し、パチンコ屋に向かう予定だ。今日も…ではないな。そういや昨日は変な出来事とか意味わからんタヌキとかのせいでパチンコ行けなかったんだわ…まじでむかつくわあのタヌキ野郎。次会った時は必ず殺す。

そうやっていらいらしながらもパチンコ屋に向かっている道中、俺の目にある光景が飛び込んできた。

「あの、これ以上は警察呼びますよ?」
「ははっ、呼べるものなら読んでみろや(笑)それで脅したつもりになってんじゃねーぞ?」
「俺らに退いてほしかったら金出せっつってんだよ。何回も言わせんな!」
「だから、そんなことするわけ…」

なんと1人の女性が2人の不良男性に絡まれていた。見るところあれはカツアゲってやつだな…。おいおい昼間から物騒だなと思いつつも、俺はその場を通り過ぎようとした。…が、なぜかそれはできなかった。次の瞬間、自分の体は無意識にパチンコ屋への道から事件現場の方へと向かっていた。

「おい、その人嫌がってんの、分からないか?」
「あぁ?なんだてめぇは…」
「邪魔するってんのか?ならお前から先にやっちゃうか」

うわー自分でも何やってんだと内心思いながらも、ここまで来たら引き返せない。仕方なく俺はこいつらと戦うことにした。戦闘スキルミジンコ以下だが…。けど、回避能力はそうでもないんだわ。

「くっそ、こいついくら殴りかかっても当たらねぇ」
「おい、ちょこまか避けてんじゃねーぞ?びびってんのか?」

だが、この方法にも限界がある。そろそろ俺の体力も息切れを起こしそうだ。このままじゃ俺や女性の身がやばいな…。そう考えていた時、急に体が熱くなった。

「なんだ?急に、何か…」
「おっと、なんだこいつ、急に動きが変になったぞ?」
「おいおいまさか薬でもやってるとか?こいつ若いのに人生終わってんな、ぎゃははははは!」
「あーそれか、漫画の読みすぎで覚醒系主人公の真似とか?マジうけるわ!」
「…お前ら、俺を怒らせたな?もう命はねぇぞ?」
「ほらやっぱりセリフも完全それだし!こいつおもろいなぁ!?」

不良どもの侮辱に大きな怒りを覚えた俺は次の瞬間、自分の周りが黒くなり、背中から何かが出そうな感覚に襲われた

「!?!?!?」
「おい待て、こいつ冗談じゃねぇぞ…?」
「いやまさか、ここは漫画の世界とかでもないんだし…」
「きゃ…何これ…」

不良どもと女性が驚く中、俺の姿はどんどん黒くなり、気づいたら翼まで生えていた。ななななな、なんだよこれ一体!?
自分でも全然よくわからずパニックになっていたが1つだけ分かることがあった。この状態の俺なら…こいつらぶっ潰せる。

(てめぇら、死ぬ準備はできたか?)

って喋ろうとしたが、あれ?なぜか声が出ない。もしかしてこの姿だと声が出ないとか…まあいいや、今はこいつらぶっ潰せるなら他はどうだっていい。全身から力がみなぎる感覚があふれ出るのが感じられる。その勢いのまま、俺は不良どもに向かって突進する。

「や、やべぇよこいつ…なんか急に姿変わって…バケモンかよ!」
「お、おい!さすがにこんなの相手してられねぇって!逃げるぞ!」

そうして不良どもが逃げようとしたが、そうは問屋が卸さなかった。なぜなら奴らが逃げる以上の速さで先に俺が、奴らの背後に回っていたからだ。そうして俺は無意識のうちに奴らの首を背後から掴んだ。

「ぐえええええええ…ぐるじ…」
「ココココココココ…」

このままこの状態を保っていたら、こいつらは間違いなく死ぬな。さすがに殺しはやばいから軽く投げようとした。…が、次の瞬間とんでもないことが起きる。

ぶんっ!あ…

「うああああああああああ!」
「ぐああああああああああああ!」

めーっちゃ軽く投げたつもりが、不良共は派手に遠くまで吹き飛んでいった。やっべ…これもしかして死んだか…?と思った時には不良共の姿は空の向こうだった。そしてそれと同時、俺は気づいたら元の姿に戻っていた。原因不明の変身によって今までの人生で味わったことのない疲労を体験した俺はその場にへたり込み、しばらく動けなかった。するとさっきまで絡まれていた女性がこちらに向かってきた。

「あの、大丈夫ですか…!?なんかものすごい…」
「俺に近づかないほうがいい。」

さっきのがまだ影響していたら大変だ。そう思った俺は女性を遠ざけた。

「あの…本当に助けていただいてありがとうございました!何かお礼させてください!」
「いや、そんなものは…」

そう言おうとしたが、さっきのでまだ動くことができなかった。ので…

「…じゃあ、俺を病院かどこかに運んでくれ」
「え?そんなことでいいんですか?じゃあ私がおんぶします!」
「あぁ頼む…え?」

とにかくどこかで休みたい気分だった。だがこれは色々やばくねぇか?と思いつつも俺は女性におんぶしてもらい、病院まで運んでもらった。道中の周囲からの視線が非常に痛く、正直さっきの戦いよりもきつかった…。そして病院についた俺はしばらく横になっていた。するとさっきの女性が来た。

「あの、お体大丈夫ですか?」
「あぁ、なんとか助かっ…ぎく」
「良かったです!あの、改めまして助けていただいて、本当にありがとうございました!」
「…けがはないか?」
「私は大丈夫です!…って、普通こっちのセリフなんですけどね(笑)」

よく考えたら確かにそうだ…って思った俺は、どこか笑いそうになった。すると女性が自己紹介をしてきた。

「そういえばまだ、名前を仰っていなかったですね。私の名前は瀬里奈といいます。仕事はIT系です」
「お、俺は佐々木雄介…仕事は…今はしてないです」

やべぇ、瀬里奈さんめっちゃ美人な上に職もめっちゃスゲーな…。凡顔無職無才の俺からしたら全然違う世界にいるんだなこの人…。
そう思っていると次の瞬間、瀬里奈さんから思わぬ勧誘があった。

「佐々木さんってIT関連の仕事とかに興味はありますか?実は今、一緒にITの仕事をする人を募集してまして…佐々木さん無職なんですよね?良かったらどうですか?(ニコ)」
「お、俺すか!?ITの仕事なんてやったことない…つーかそもそもスキルが…」
「大丈夫です!私が教えますよ♪あ、でも今ここで決めるのは厳しいと思いますので名刺渡しておきます!ではまた!」
「…」

そう言うと瀬里奈さんは病室を後にした。なんか初めて瀬里奈さんと会ってから展開が急すぎて、正直今でも現実に対する理解ができていない…。しかしこれは思ってもない展開だな。ITか…。興味がないわけでもないが、まずはさっきまでの自分に起きたことをきちんと理解したい。それから今後のことを考えよう。