音海が脱いでいる間、ずっと今日気になっていた事を聞いた。

「あのさ、音海って名前なの、苗字なの?」

「__どっちでもいいだろ。」

「じゃあ、麻木と音海はどっちが本名?」

「どっちも偽名」

「へぇ」

内心吃驚だった。偽名を日常的に使わないといけない人なんて初めて出会った。

そして、なぜもともと水無瀬に『麻木』と名乗らなかったのか。

何か事情があるなら別だが、もし自分だったらそんなに細かく使い分けない。

考えても仕方ないので、部屋を後にして自室へ向かった。

一通りやるべき事を終了させた頃、窓辺でその声は言った。

「シャワー浴びた。
 ……包帯とかってあったりするか?」

窓辺に腰掛けているのは、肩、腹、足など色々な箇所を薄らと赤く染めたバスローブを羽織る音海。

「……?」

冗談なんかじゃない。

「包帯は、買えばあるから買ってくる。ていうかさ、どうやってそこに来たの?
 あと、外寒いから風邪引くよ?? 」

そう言うと、ゆっくり歩いてこっちにやって来た。