「ありがとう。じゃぁ席は____」

元々この学年は一人少ない。となると、どちらかの組の、誰かの席の隣が空くって訳だ。

皆の視線が、音海から自分に変わる。

これ見よがしに目だけで何かを伝えようとするひと、悔しそうに唇を噛むひと、席が近い、と喜ぶひと。

そして、ハッと口を押さえてこちらを見つめる彼女たちは、そっち系のひと。


休み時間中、音海はずっと目を輝かせたクラスメイトたちに囲まれていた。

「なぁ、水無瀬も気にならない?」

「なにが?」

「だから、決まってるじゃん!転校生だよ。」

「まぁ、気にならないって言ったら嘘になるね。」

「じゃあつまり気になるってことか。」

何を話しているのかはだいぶ気になっているのに、騒ぎ声で聞きたいことが聞こえない。


音海は適当にあしらっているようだが、彼女らは懲りずに攻めてくる。

本を読むフリをして、目の端で彼を観察する。

授業開始の合図とともに、皆花のように散っていく。

隣にいる彼の()は、じっと水無瀬を見つめていた。