1ヶ月間、音海と過ごしてきて違和感を感じていた。

なんだか、年相応に見えないというか……。

たまに、本当は高校生じゃなくて中学生じゃないのかと思う時もあるが、同級生らしくなくてもっと、色々な経験を重ねた大人のように

も感じることがある。なんとなく、頼りないと思う。まあ、冷蔵庫にウィナーインゼリーしか常備していない水無瀬も頼れるとは言い難

いが。

ホワイトボードに記されていく計算式をノートに写す。十円ハゲが特徴の塾講師はノリが良いと学生からも評判がいい。

そういえば、音海は勉強はできるのだろうか。帰ったら、聞いてみよう。

もし彼の本当の目的ではなくとも、高校生活を円滑に行なっていくにはそれなりの学力が必要だ。

時計の針が、重たそうに時を進めた。





「……勉強?」

怪訝そうにこちらを見る瞳は、相変わらずだった。彼は3日前から姿をくらましていたが、今日家に帰ると何食わぬ顔で

この前水無瀬が見ていた『32号』のドラマを観ていた。

「そう。どれくらいできるの?得意科目は?苦手な教科は?」

「____わかんねぇ、」

寝巻きに着替えながら、音海はそう言った。

まだ完治していないらしく、たまに当たったりすると顔を歪めて睨んでくる。

「とりあえず、今日の宿題終わった?」

首を振る。

「教えてあげるから、持っておいで。」

そういうと、水無瀬が最近用意した彼用の部屋に入っていった。