学校でも、彼は変わらず極度の人見知りを拗らせていた。諦めきれない女子たちの猛烈なアピールに困っている姿に

思わず笑みが溢れる。可愛い。無邪気で小さな子供に抱くような気持ち。

音海は無邪気ではないし小さい子でもない。逆に、見方によると無愛想に見えるかもしれない。

「なに一人でニヤついてんだよ」

「和美、何かあった?」

「宿題取りに行こうぜ」

「……誰の? 」

「俺の!」

「じゃあ関係ないじゃん、一人で行ってこいよ」

そう言いつつ、騒がしい教室を後にした。

「で、どうなんだよ」

「は?何が?」

「だから、麻木!」

「麻木が?」

古いとまではいかないが、昔ながらの雰囲気のある廊下を歩いていると、和美が突然そう言った。

「何があったんだよ」

「別に、何もないよ」

どうやら彼は水無瀬と音海が____だと勘違いをしているようだった。

「何だ、何もないのかよ。つまんね〜」

そう言いながら、軽く笑った。こういう、軽い感じの人柄が人気なんだろうか。

チャイムギリギリで滑り込んだ教室は、まだ騒々しかった。