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暗闇の中でかすかに誰かの声が聞こえてくる。
その声は次第に大きくなり、呼ぶ声が自分の名前だと分かるまで時間はかからなかった。
(誰か呼んでる。誰だろ?)
テュールは重たい瞼《まぶた》を開くと、目の前にいるニージが今にも泣きだしそうな顔で何度も自分の名前を呼んでいた。
「二、ニージか?」
「テュール。良かった。本当に良かった。何回も何回も、回復魔法使ってるのに全然起きないから、私、私」
ニージは大粒の涙を流すとテュールに抱きついた。
「ごっごめんね。心配させて」
テュールの顔に服の上からでも分かるほどの二つの物が押さえつけられ、顔が赤くなる。
慌てて逃げるように立ち上がってから違和感に気が付く。
地面に落ちる前のNPCは自分が命令するまで勝手な行動はしなかったし、口調も機械的だった。
だが、今目の前にいるNPCは急に抱きしめてきて、声もまるで本物のようだった。
(気を失っている間にアップデートした?)
オンラインゲームでは日常的に運営がアップデートするのは当たり前だ。
(NPCのAIを強化したのかな?)
「あっ。ニージ、エイル達はどこにいるか知ってる?」
「ごめんなさい。私も気がついた時はテュールしか横にいて、他のみんなはどこにいるか分からなくて」
「そうか、でも大丈夫だよ。今連絡してみるから」
テュールはメニュー画面を出そうとする。
しかし、頭の中で呼んでも出ない。
「えっ?何が起こった。バグ?エラー?」
小さく呟く。
テュールは焦りと困惑を感じながらもログアウト、メッセージ、フレンド機能などを試すが、一切反応も表示もされない。
完全に頭が真っ白になる。
脳裏に嫌な文字が浮かぶ。何らかの原因でゲームの世界に閉じ込められた?
「ヤバいヤバいヤバい」
何度も口づさむ。
ゲームの説明書をしっかり読んでないからこんな時にどう対応したらいいか何も思いつかない。
ゲームの世界の一日が現実世界で何時間に該当するかも分からない。
緊急事態のマニュアルくらいはしっかりと読むべきだった。
テュールに後悔の念が押し寄せる。
「テュール。大丈夫?」
ニージが心配そうに見つめている。
「えっ。あっうん、僕は大丈夫だよ。エイル達と連絡が取れないから、ちょっと焦ったたげだから」
「エイル達なら絶対に大丈夫だよ。みんな強いんだし。逆にテュールがいないって心配されてて探されてるかもだよ?」
(まぁ、ゲームの世界だから死ぬことはないと思うけど、でもこの非常事態だし、心配だな。社長が早く様子を見に来てくれたらいいんだけどな)
「そうかもね。早く探しに来てくれないかな」
テュールは言うとニージは嬉しそうに頷いた。
改めて辺りを見回す。どこもかしこも砂、砂、砂。砂しかない砂漠だった。
「砂漠?なんでこんな所に?落ちた時は草原だったのに、やっぱり何かエラーが起きたのか」
考え込む上空から灼熱の太陽の光が二人を照らす。
暑さでテュールの全身から汗が噴き出してくる。
「ここにいたら日射病になる。日陰に移動しよう」
ニージは頷いた。
よく見るとニージの服は汗で色が分かっていた。
明らかにテュールよりニージの方が汗の量が違っている。
(自分の体で日陰を作って僕を太陽から守ってくれてたのか?)
「ありがとうニージ」
「急にお礼言うなんてどうしたの?気持ち悪いテュールね」
ニージは言って笑いだした。
暗闇の中でかすかに誰かの声が聞こえてくる。
その声は次第に大きくなり、呼ぶ声が自分の名前だと分かるまで時間はかからなかった。
(誰か呼んでる。誰だろ?)
テュールは重たい瞼《まぶた》を開くと、目の前にいるニージが今にも泣きだしそうな顔で何度も自分の名前を呼んでいた。
「二、ニージか?」
「テュール。良かった。本当に良かった。何回も何回も、回復魔法使ってるのに全然起きないから、私、私」
ニージは大粒の涙を流すとテュールに抱きついた。
「ごっごめんね。心配させて」
テュールの顔に服の上からでも分かるほどの二つの物が押さえつけられ、顔が赤くなる。
慌てて逃げるように立ち上がってから違和感に気が付く。
地面に落ちる前のNPCは自分が命令するまで勝手な行動はしなかったし、口調も機械的だった。
だが、今目の前にいるNPCは急に抱きしめてきて、声もまるで本物のようだった。
(気を失っている間にアップデートした?)
オンラインゲームでは日常的に運営がアップデートするのは当たり前だ。
(NPCのAIを強化したのかな?)
「あっ。ニージ、エイル達はどこにいるか知ってる?」
「ごめんなさい。私も気がついた時はテュールしか横にいて、他のみんなはどこにいるか分からなくて」
「そうか、でも大丈夫だよ。今連絡してみるから」
テュールはメニュー画面を出そうとする。
しかし、頭の中で呼んでも出ない。
「えっ?何が起こった。バグ?エラー?」
小さく呟く。
テュールは焦りと困惑を感じながらもログアウト、メッセージ、フレンド機能などを試すが、一切反応も表示もされない。
完全に頭が真っ白になる。
脳裏に嫌な文字が浮かぶ。何らかの原因でゲームの世界に閉じ込められた?
「ヤバいヤバいヤバい」
何度も口づさむ。
ゲームの説明書をしっかり読んでないからこんな時にどう対応したらいいか何も思いつかない。
ゲームの世界の一日が現実世界で何時間に該当するかも分からない。
緊急事態のマニュアルくらいはしっかりと読むべきだった。
テュールに後悔の念が押し寄せる。
「テュール。大丈夫?」
ニージが心配そうに見つめている。
「えっ。あっうん、僕は大丈夫だよ。エイル達と連絡が取れないから、ちょっと焦ったたげだから」
「エイル達なら絶対に大丈夫だよ。みんな強いんだし。逆にテュールがいないって心配されてて探されてるかもだよ?」
(まぁ、ゲームの世界だから死ぬことはないと思うけど、でもこの非常事態だし、心配だな。社長が早く様子を見に来てくれたらいいんだけどな)
「そうかもね。早く探しに来てくれないかな」
テュールは言うとニージは嬉しそうに頷いた。
改めて辺りを見回す。どこもかしこも砂、砂、砂。砂しかない砂漠だった。
「砂漠?なんでこんな所に?落ちた時は草原だったのに、やっぱり何かエラーが起きたのか」
考え込む上空から灼熱の太陽の光が二人を照らす。
暑さでテュールの全身から汗が噴き出してくる。
「ここにいたら日射病になる。日陰に移動しよう」
ニージは頷いた。
よく見るとニージの服は汗で色が分かっていた。
明らかにテュールよりニージの方が汗の量が違っている。
(自分の体で日陰を作って僕を太陽から守ってくれてたのか?)
「ありがとうニージ」
「急にお礼言うなんてどうしたの?気持ち悪いテュールね」
ニージは言って笑いだした。