お土産を買い終えた美玲達。
そのままホテルに迎えにきてくれたものと同じバスに向かい、シャルトル大聖堂やシャルトルの街を後にする。
美玲達が次に向かうのはロワール地方。
シャンボール城へ行くのだ。
しかし、その前にロワール地方にあるカジュアルなレストランにて昼食の予定だ。
美玲はシャルトル大聖堂の余韻に浸りながら、車窓から見えるフランスの田舎の風景を楽しむのであった。
(あ、マカロン美味しい)
美玲は先程買ったマカロンを食べていた。もちろん、昼食が入らなくならないようにはしていた。
そしてトイレ休憩で寄ったパーキングエリアのような場所で、美玲達女性陣はフランスのトイレの洗礼を受けることになる。
「きゃー!」
トイレを見た瞬間、穂乃果が悲鳴を上げた。
近くにいた美玲と朱理と明美は穂乃果の元へ向かう。
「坂口さん、どうしましたか?」
心配そうな明美。
「あの、トイレが……その、トイレに便座がないんです!」
トイレを指さして驚愕している穂乃果。
「そうなんですよ。フランスってたまにこういうトイレがあるんです。初めてだとびっくりしちゃいますよね」
明美はやんわりとした声である。
「これは中腰になるしかないですね」
隣にいる朱理は全く驚かずそう言った。彼女はフランス自体初めてではないので慣れているのだろう。
一方フランスが初めての美玲もトイレを見て驚いていた。
(便座がないトイレ……日本じゃあり得ない……。それに、空港もホテルもフランス人とか白人系の人達の体格ベースで便座が高かったなあ)
改めて日本とは違うことを思い知った美玲である。
◇◇◇◇
丁度お腹が空き始める時間帯に、美玲達はレストランに到着した。
前菜に出されたのはエスカルゴ。
フランス料理で割と有名なものである。
「これがエスカルゴ……」
美玲は目の前に置かれたものを見て目を丸くする。
見た感じ大きなカタツムリの殻である。この中に身が入っているのだ。
「初めて見るけど、まんまカタツムリ感あるな」
誠一はボソリと呟き、スマートフォンを取り出す。
「せっかくだし写真撮っとくか」
パシャリとエスカルゴの写真を撮るのであった。
「確かに、記念にいいかもね。初めてのエスカルゴ記念」
美玲はクスッと笑い、エスカルゴの写真を撮るのであった。
専用の器具を使ってエスカルゴの殻を挟み、小さなフォークで中身を取り出す。初めて食べるエスカルゴ。口の中にガーリックバターの風味が広がった。程よい塩味。普通に貝を食べているような感覚だった。
そしてメインの鯛のポワレを食べている時に、明美がこう切り出す。
「皆さん、今回こうして同じツアーに参加していますし、軽い自己紹介とどちらからお越しなのか等を教えていただけたらと思います」
今回のツアー参加者は美玲含めて十五人いるのだ。
「では、神田さん達からお願いします」
明美が指名したのは二人参加の女性。二人とも三十代前半から中盤に見える。
「初めまして、宮城県仙台市から来た神田です。えっと、私達、姉妹でこのツアーに参加してるんです」
いきなりのことで少し緊張気味なのが分かる。
神田美桜と神田菫。姉が美桜で妹が菫である。
「丁度姉と休みが重なったので、行ったことがない国に行ってみようってなりました。それでフランスなんです。皆さん、八日間よろしくお願いします」
菫は緊張気味の美桜と違い、にこやかである。
「ほら、お姉ちゃんもせっかくフランスに来たんだから人見知りとかしないでさ」
「いや、菫、そんなこと言われてもさあ」
この二人の雰囲気から、仲のよさが伝わってくる。
そして次に指名されたのは年配の松本夫妻。
「いやあ、どうも、松本です。山梨から来てます。運よく六十五歳で定年退職できたから、体が動くうちに海外に行きたいって思ってたんだけどね」
「ちょうど夫が退職した年にコロナが流行り始めたので数年は大人しくしてました。海外は若い頃に行ったきりなので、夫婦揃って年甲斐もなくワクワクしています」
松本茂と松本貴子。これから第二の人生を楽しもうとしている年配の夫婦だ。
そして次は親子と思われる男性二人。
「えっと……今岡と言います。少し前に妻を亡くしましてね。それで」
「父さん、みんな楽しみに来てるんだからさあ、そんな暗くなんなよ。すみません、何か変な空気にしちゃって。父が静岡県浜松市、僕が愛知県名古屋市から参加してます」
父の今岡隆は松本夫妻と同じ世代。息子の今岡圭太は美玲や誠一より少し年上で、三十代くらいに見える。
「この通り、母を病気で亡くして以来父が腑抜けてしまいましてね。それで、生前母が行きたがってたフランスに行ってあの世で母と再会した時のために思い出話でも作れと今回父に提案しまして」
ハハっと空気を暗くしないよう茶化す圭太。
(……そうだよね。やっぱりみんな楽しむために来てるんだよね。でも、今岡さんのお父さんの気持ち、少し分かるかも)
自分もマイナスな理由で参加している美玲は、ほんの少し隆に共感するのであった。
「父さん、もうすぐ孫も生まれるんだからシャキッとしろよ」
圭太がそう隆の肩を叩く。
すると、その言葉に茂が反応する。
「今岡さん、お孫さん生まれるの?」
「ああ、はい。僕の妹が二年前にに結婚して、今妊娠中なんです。それで、もうすぐ出産予定日だって妹の旦那さんから連絡があったんですよ」
ハハっと笑う圭太。
「ほう。そりゃいいね。お父さん、もうすぐお祖父ちゃんになるんだからしっかりしないと」
茂がそう隆を元気付けた。
「娘さんにもお孫さんにも、お土産をたくさん買ってあげないとね」
貴子もまるで自分のことのように喜んでいた。
「えっと、広瀬です。宇都宮、あ、栃木県宇都宮市から参加してます」
続いて広瀬宗平。美玲や誠一と同い年くらい、またはほんの少し年上に見える一人参加の男性だ。
何でも、会社から休みを取れと言われてゴールデンウィークに重ねてみたものの、やることがないのでこのツアーに参加してみたとのこと。
「東京から来ました。高橋です」
「私達、新婚旅行でこのツアーに参加してます」
高橋悠人と高橋佳奈。まだ二十代の、序盤からやたらとキラキラしたオーラを放っていた新婚夫婦だ。
話によると、悠人は大手商社マン。佳奈は悠人とは違う会社だが、大企業の人事。二人共勤務地は丸の内である。
(丸の内……確かにそりゃあキラキラしてるわ)
やたらとキラキラしていた理由に美玲は納得してしまった。
そのままホテルに迎えにきてくれたものと同じバスに向かい、シャルトル大聖堂やシャルトルの街を後にする。
美玲達が次に向かうのはロワール地方。
シャンボール城へ行くのだ。
しかし、その前にロワール地方にあるカジュアルなレストランにて昼食の予定だ。
美玲はシャルトル大聖堂の余韻に浸りながら、車窓から見えるフランスの田舎の風景を楽しむのであった。
(あ、マカロン美味しい)
美玲は先程買ったマカロンを食べていた。もちろん、昼食が入らなくならないようにはしていた。
そしてトイレ休憩で寄ったパーキングエリアのような場所で、美玲達女性陣はフランスのトイレの洗礼を受けることになる。
「きゃー!」
トイレを見た瞬間、穂乃果が悲鳴を上げた。
近くにいた美玲と朱理と明美は穂乃果の元へ向かう。
「坂口さん、どうしましたか?」
心配そうな明美。
「あの、トイレが……その、トイレに便座がないんです!」
トイレを指さして驚愕している穂乃果。
「そうなんですよ。フランスってたまにこういうトイレがあるんです。初めてだとびっくりしちゃいますよね」
明美はやんわりとした声である。
「これは中腰になるしかないですね」
隣にいる朱理は全く驚かずそう言った。彼女はフランス自体初めてではないので慣れているのだろう。
一方フランスが初めての美玲もトイレを見て驚いていた。
(便座がないトイレ……日本じゃあり得ない……。それに、空港もホテルもフランス人とか白人系の人達の体格ベースで便座が高かったなあ)
改めて日本とは違うことを思い知った美玲である。
◇◇◇◇
丁度お腹が空き始める時間帯に、美玲達はレストランに到着した。
前菜に出されたのはエスカルゴ。
フランス料理で割と有名なものである。
「これがエスカルゴ……」
美玲は目の前に置かれたものを見て目を丸くする。
見た感じ大きなカタツムリの殻である。この中に身が入っているのだ。
「初めて見るけど、まんまカタツムリ感あるな」
誠一はボソリと呟き、スマートフォンを取り出す。
「せっかくだし写真撮っとくか」
パシャリとエスカルゴの写真を撮るのであった。
「確かに、記念にいいかもね。初めてのエスカルゴ記念」
美玲はクスッと笑い、エスカルゴの写真を撮るのであった。
専用の器具を使ってエスカルゴの殻を挟み、小さなフォークで中身を取り出す。初めて食べるエスカルゴ。口の中にガーリックバターの風味が広がった。程よい塩味。普通に貝を食べているような感覚だった。
そしてメインの鯛のポワレを食べている時に、明美がこう切り出す。
「皆さん、今回こうして同じツアーに参加していますし、軽い自己紹介とどちらからお越しなのか等を教えていただけたらと思います」
今回のツアー参加者は美玲含めて十五人いるのだ。
「では、神田さん達からお願いします」
明美が指名したのは二人参加の女性。二人とも三十代前半から中盤に見える。
「初めまして、宮城県仙台市から来た神田です。えっと、私達、姉妹でこのツアーに参加してるんです」
いきなりのことで少し緊張気味なのが分かる。
神田美桜と神田菫。姉が美桜で妹が菫である。
「丁度姉と休みが重なったので、行ったことがない国に行ってみようってなりました。それでフランスなんです。皆さん、八日間よろしくお願いします」
菫は緊張気味の美桜と違い、にこやかである。
「ほら、お姉ちゃんもせっかくフランスに来たんだから人見知りとかしないでさ」
「いや、菫、そんなこと言われてもさあ」
この二人の雰囲気から、仲のよさが伝わってくる。
そして次に指名されたのは年配の松本夫妻。
「いやあ、どうも、松本です。山梨から来てます。運よく六十五歳で定年退職できたから、体が動くうちに海外に行きたいって思ってたんだけどね」
「ちょうど夫が退職した年にコロナが流行り始めたので数年は大人しくしてました。海外は若い頃に行ったきりなので、夫婦揃って年甲斐もなくワクワクしています」
松本茂と松本貴子。これから第二の人生を楽しもうとしている年配の夫婦だ。
そして次は親子と思われる男性二人。
「えっと……今岡と言います。少し前に妻を亡くしましてね。それで」
「父さん、みんな楽しみに来てるんだからさあ、そんな暗くなんなよ。すみません、何か変な空気にしちゃって。父が静岡県浜松市、僕が愛知県名古屋市から参加してます」
父の今岡隆は松本夫妻と同じ世代。息子の今岡圭太は美玲や誠一より少し年上で、三十代くらいに見える。
「この通り、母を病気で亡くして以来父が腑抜けてしまいましてね。それで、生前母が行きたがってたフランスに行ってあの世で母と再会した時のために思い出話でも作れと今回父に提案しまして」
ハハっと空気を暗くしないよう茶化す圭太。
(……そうだよね。やっぱりみんな楽しむために来てるんだよね。でも、今岡さんのお父さんの気持ち、少し分かるかも)
自分もマイナスな理由で参加している美玲は、ほんの少し隆に共感するのであった。
「父さん、もうすぐ孫も生まれるんだからシャキッとしろよ」
圭太がそう隆の肩を叩く。
すると、その言葉に茂が反応する。
「今岡さん、お孫さん生まれるの?」
「ああ、はい。僕の妹が二年前にに結婚して、今妊娠中なんです。それで、もうすぐ出産予定日だって妹の旦那さんから連絡があったんですよ」
ハハっと笑う圭太。
「ほう。そりゃいいね。お父さん、もうすぐお祖父ちゃんになるんだからしっかりしないと」
茂がそう隆を元気付けた。
「娘さんにもお孫さんにも、お土産をたくさん買ってあげないとね」
貴子もまるで自分のことのように喜んでいた。
「えっと、広瀬です。宇都宮、あ、栃木県宇都宮市から参加してます」
続いて広瀬宗平。美玲や誠一と同い年くらい、またはほんの少し年上に見える一人参加の男性だ。
何でも、会社から休みを取れと言われてゴールデンウィークに重ねてみたものの、やることがないのでこのツアーに参加してみたとのこと。
「東京から来ました。高橋です」
「私達、新婚旅行でこのツアーに参加してます」
高橋悠人と高橋佳奈。まだ二十代の、序盤からやたらとキラキラしたオーラを放っていた新婚夫婦だ。
話によると、悠人は大手商社マン。佳奈は悠人とは違う会社だが、大企業の人事。二人共勤務地は丸の内である。
(丸の内……確かにそりゃあキラキラしてるわ)
やたらとキラキラしていた理由に美玲は納得してしまった。



