長時間フライトを終え、日本に戻ってきた美玲達。
「うう……足がむくんでます〜」
穂乃果が自身の足を触り、困ったように苦笑していた。
「うん、分かるよ。私も足パンパン」
美玲も自分の足を触り、苦笑していた。
現在日本時間で午前九時である。
飛行機の中で爆睡していたが、どうにもまだ眠い美玲であった。
入国手続きをし、手荷物受け取り場までやってきた美玲達。
「皆さん、六泊八日の旅、お疲れ様でした。特に大きな事件や事故はなく、無事に戻ってこられて安心しています。皆さん、ここからはご自身の荷物を受け取った方から自由解散です。国内便乗り継ぎで帰る方もいらっしゃいますからね。皆さん、本当にありがとうございました。気を付けてお帰りくださいね。また皆さんとどこかでお会いできるのを楽しみにしています」
明美からそう挨拶があった。
添乗員として明美にはお世話になったのである。
ロストバゲージせず、無事に手荷物を受け取った美玲は明美に挨拶に行く。
「斉藤さん、こちらこそ色々とありがとうございました」
美玲は深く頭を下げた。
美玲以外にも、誠一、晃樹、凛子、朱理や他の参加者も明美に挨拶していた。
「凛ちゃんと宮本さんは飛行機で神戸に帰るの?」
美玲は明美に挨拶を終えた凛子にそう聞いた。
「そうやで。まだ時間少しあるから晃ちゃんと空港内をぶらぶらしようと思うわ」
クスッと笑う凛子。
「そっか」
「美玲ちゃん、また連絡するな。もし神奈川とか東京に行く機会あったら会おな。美玲ちゃんも、神戸とか大阪に来る機会あれば連絡してな」
凛子は穏やかに微笑んでいた。
「うん。ありがとう」
美玲は嬉しそうに笑う。
フランスで出会い友達になった凛子とは、お互い住む場所の距離が遠く離れているのだ。
気軽に会うことは少し難しい。
しかし、同じ国内であり連絡先も交換しているので、決して会えないわけではないのだ。
新たに出会った人と関係を続けていけるのである。
誠一と晃樹も、何やら楽しそうに話していた。
美玲は朱理とも連絡先を交換するのであった。
その後、美玲は誠一と方面が同じなので、一緒に帰ることにした。
「楽しかったけど……何かものっすごく眠い……」
モノレールの中で、美玲は大あくびをする。その影響で、目からは涙がこぼれる。
フランスに到着した時と同じで、まるで近くに強制的に眠らせてくるような技を使っている敵がいるかのようである。
「ああ……俺も……ちょっと限界……」
誠一も急激な睡魔に襲われていた。
今までフランスにいて、体内時計が狂っているのだ。要するに時差ボケである。
座ったり横になったら強制的に眠りにつかされるような感覚だった。
もうここは日本なので、完全に気が緩み二人揃って眠ってしまうのであった。
◇◇◇◇
「そういや岸本さんは仕事いつから?」
少し目が覚め、電車を乗り換えた誠一がそう聞く。
方面が同じなので、美玲も同じ電車に乗っている。
「明後日。まあ暦通りだよ」
美玲はあくびをして眠たそうな目をこすり、苦笑する。
「だから明日転職エージェントに登録して転職活動開始しようかと思ってる」
「そっか」
誠一もあくびをし、眠そうな目で頷いた。
日本に戻った美玲はすっかり前を向いていたのである。
こうして、一人暮らししているマンションに帰宅した美玲であった。
◇◇◇◇
早速転職エージェントに登録し、職務経歴書を書いた美玲。それを終えたらこの日はまだ時差ボケ中の体を休めて後日の仕事に備えるのであった。
そして迎えた翌日。
足取りは重いが冬田がいる職場から転職してやる決めているので、何とか精神を保つことができた。
しかし、出社したら美玲にとって予想外のことが起こっていた。
「おお、岸本さん、来たか。待っていたよ」
部長の曽我部が出勤した美玲を見つけるなりそう言った。
「……おはようございます」
曽我部は冬田の肩を持っていたので、美玲はやや警戒心を強めていた。
するといきなり曽我部が美玲に対して頭を下げた。
「岸本さん、今まで申し訳なかった」
「え……!?」
曽我部からの突然の謝罪に美玲はギョッと目を見開く。
完全に戸惑っていた。
「あの……曽我部部長?」
「岸本さん、冬田が君にパワハラや嫌がらせをしていたことに気付けなくて本当に申し訳ない。君も僕に訴えてくれていたのに、信じてあげられなくて本当に申し訳なかった」
曽我部は真摯な様子である。
「岸本さんが休んだ日、冬田は無断欠勤だのどうたらこうたら騒いでいたよ。でも、小島さんが僕に君が冬田からパワハラや嫌がらせを受けていると相談しに来てくれたんだ。でも、その時も僕は冬田の肩を持ってしまった……」
目線を下に落とす曽我部。
美玲はふと同期である小島祥子に目をやる。
祥子は申し訳なさそうに美玲を見ていた。
「その後、小島さんが労基に駆け込んだんだよ」
「はい……?」
美玲は祥子と曽我部を交互に見て目を丸くした。
「割とすぐに労基の人からの立ち入りがあってね。冬田のパワハラや嫌がらせの証拠が数多く見つかった。他の役員もこのことにかなり怒っていてね。冬田は懲戒解雇になったよ。岸本さん、今まで悔しい思いや大変な思いをさせてしまって、本当に申し訳なかった」
心底反省している様子の曽我部である。
「あの、曽我部部長、頭を上げてください」
美玲の方が完全に恐縮してしまっていた。
重い気持ちで出社したのだが、冬田が解雇されてもういなくなっていたので、色々と拍子抜けの美玲であった。
「うう……足がむくんでます〜」
穂乃果が自身の足を触り、困ったように苦笑していた。
「うん、分かるよ。私も足パンパン」
美玲も自分の足を触り、苦笑していた。
現在日本時間で午前九時である。
飛行機の中で爆睡していたが、どうにもまだ眠い美玲であった。
入国手続きをし、手荷物受け取り場までやってきた美玲達。
「皆さん、六泊八日の旅、お疲れ様でした。特に大きな事件や事故はなく、無事に戻ってこられて安心しています。皆さん、ここからはご自身の荷物を受け取った方から自由解散です。国内便乗り継ぎで帰る方もいらっしゃいますからね。皆さん、本当にありがとうございました。気を付けてお帰りくださいね。また皆さんとどこかでお会いできるのを楽しみにしています」
明美からそう挨拶があった。
添乗員として明美にはお世話になったのである。
ロストバゲージせず、無事に手荷物を受け取った美玲は明美に挨拶に行く。
「斉藤さん、こちらこそ色々とありがとうございました」
美玲は深く頭を下げた。
美玲以外にも、誠一、晃樹、凛子、朱理や他の参加者も明美に挨拶していた。
「凛ちゃんと宮本さんは飛行機で神戸に帰るの?」
美玲は明美に挨拶を終えた凛子にそう聞いた。
「そうやで。まだ時間少しあるから晃ちゃんと空港内をぶらぶらしようと思うわ」
クスッと笑う凛子。
「そっか」
「美玲ちゃん、また連絡するな。もし神奈川とか東京に行く機会あったら会おな。美玲ちゃんも、神戸とか大阪に来る機会あれば連絡してな」
凛子は穏やかに微笑んでいた。
「うん。ありがとう」
美玲は嬉しそうに笑う。
フランスで出会い友達になった凛子とは、お互い住む場所の距離が遠く離れているのだ。
気軽に会うことは少し難しい。
しかし、同じ国内であり連絡先も交換しているので、決して会えないわけではないのだ。
新たに出会った人と関係を続けていけるのである。
誠一と晃樹も、何やら楽しそうに話していた。
美玲は朱理とも連絡先を交換するのであった。
その後、美玲は誠一と方面が同じなので、一緒に帰ることにした。
「楽しかったけど……何かものっすごく眠い……」
モノレールの中で、美玲は大あくびをする。その影響で、目からは涙がこぼれる。
フランスに到着した時と同じで、まるで近くに強制的に眠らせてくるような技を使っている敵がいるかのようである。
「ああ……俺も……ちょっと限界……」
誠一も急激な睡魔に襲われていた。
今までフランスにいて、体内時計が狂っているのだ。要するに時差ボケである。
座ったり横になったら強制的に眠りにつかされるような感覚だった。
もうここは日本なので、完全に気が緩み二人揃って眠ってしまうのであった。
◇◇◇◇
「そういや岸本さんは仕事いつから?」
少し目が覚め、電車を乗り換えた誠一がそう聞く。
方面が同じなので、美玲も同じ電車に乗っている。
「明後日。まあ暦通りだよ」
美玲はあくびをして眠たそうな目をこすり、苦笑する。
「だから明日転職エージェントに登録して転職活動開始しようかと思ってる」
「そっか」
誠一もあくびをし、眠そうな目で頷いた。
日本に戻った美玲はすっかり前を向いていたのである。
こうして、一人暮らししているマンションに帰宅した美玲であった。
◇◇◇◇
早速転職エージェントに登録し、職務経歴書を書いた美玲。それを終えたらこの日はまだ時差ボケ中の体を休めて後日の仕事に備えるのであった。
そして迎えた翌日。
足取りは重いが冬田がいる職場から転職してやる決めているので、何とか精神を保つことができた。
しかし、出社したら美玲にとって予想外のことが起こっていた。
「おお、岸本さん、来たか。待っていたよ」
部長の曽我部が出勤した美玲を見つけるなりそう言った。
「……おはようございます」
曽我部は冬田の肩を持っていたので、美玲はやや警戒心を強めていた。
するといきなり曽我部が美玲に対して頭を下げた。
「岸本さん、今まで申し訳なかった」
「え……!?」
曽我部からの突然の謝罪に美玲はギョッと目を見開く。
完全に戸惑っていた。
「あの……曽我部部長?」
「岸本さん、冬田が君にパワハラや嫌がらせをしていたことに気付けなくて本当に申し訳ない。君も僕に訴えてくれていたのに、信じてあげられなくて本当に申し訳なかった」
曽我部は真摯な様子である。
「岸本さんが休んだ日、冬田は無断欠勤だのどうたらこうたら騒いでいたよ。でも、小島さんが僕に君が冬田からパワハラや嫌がらせを受けていると相談しに来てくれたんだ。でも、その時も僕は冬田の肩を持ってしまった……」
目線を下に落とす曽我部。
美玲はふと同期である小島祥子に目をやる。
祥子は申し訳なさそうに美玲を見ていた。
「その後、小島さんが労基に駆け込んだんだよ」
「はい……?」
美玲は祥子と曽我部を交互に見て目を丸くした。
「割とすぐに労基の人からの立ち入りがあってね。冬田のパワハラや嫌がらせの証拠が数多く見つかった。他の役員もこのことにかなり怒っていてね。冬田は懲戒解雇になったよ。岸本さん、今まで悔しい思いや大変な思いをさせてしまって、本当に申し訳なかった」
心底反省している様子の曽我部である。
「あの、曽我部部長、頭を上げてください」
美玲の方が完全に恐縮してしまっていた。
重い気持ちで出社したのだが、冬田が解雇されてもういなくなっていたので、色々と拍子抜けの美玲であった。



