誠一のお陰で生きようと思えるようになった美玲。
その時、ぐぅ、と美玲のお腹の音が鳴る。
気持ちが落ち着いたらお腹が空いていることに気付いたのだ。
「あ……」
美玲は頬を真っ赤に染める。
誠一は笑い出す。
「確かに腹も減ってきたよな。まだこんな明るいけど、もう午後六時だ」
誠一はスマートフォンを取り出して何かを調べる。
「あ、日本で事前に調べてたビストロ、やってるっぽい。リーズナブルで割と量が多いみたいだけど、そこに行くか? リュクサンブール公園の近くにある店だし」
誠一はスマートフォンの画面を美玲に見せてくれた。
まじまじと画面を見る美玲。
「うん。料理も美味しそうだね。行ってみる」
「よし、じゃあ行くか」
こうして、二人はリュクサンブール公園を後にして、誠一が調べたビストロへ向かうことにした。
◇◇◇◇
ビストロに到着した美玲と誠一。
席に案内され、注文を済ませていた。
「Hey, where are you from?」
陽気そうなフランス人男性の店員に英語でそう聞かれた美玲と誠一。
ビストロに入る時に「ボンジュール」と拙くともフランス語で挨拶さえすれば、後はフランス語が不慣れなら英語で対応してもらえるのだ。
「We are from Japan」
誠一が少し拙い英語でそう答える。
美玲はそれに頷いて同意した。
「Oh! Japan! コンニチハ! アリガト!」
店員は嬉しそうに表情を輝かせた。
日本に対していい印象を持っていることは明らかであった。
そしてその店員は「イタダキマス」と言いながらオニオンスープを運んできたのである。
恐らく日本語の『いただきます』とフランス語の『Bon appétit』が同じ意味なのだと思っているのだろう。
不慣れな言語はやはり誰でも間違えたりするのだ。
「確かに口コミ通り量多いね。オニオンスープだけでお腹いっぱいになりそう」
「確かにな。グリル盛り合わせを一つにしといて正解だったかも」
目の前には二人分のオニオンスープ。よく煮込まれ、チーズがたっぷりとふりかけてある。ふわりと漂うコンソメの香りが食欲を刺激した。
美玲はオニオンスープを一口食べてみる。
「うわあ、結構濃厚だね。トロトロしてる」
「だな。お、中にパンが入ってるぞ」
誠一はスプーンでパンをすくい、口まで運んだ。
美玲と誠一がオニオンスープを食べ終わって少し経過した時、再び店員が「イタダキマス」と言いながらグリル盛り合わせが運ばれてきた。
しっかりと焼けた牛の赤身、鶏肉、スペアリブ、そしてレタスとフライドポテトがたっぷり乗ったプレートである。
お好みでケチャップやマヨネーズをかけて食べるそうだ。
「やっぱり量多いね。食べられるかな?」
美玲は困ったように笑う。
「まあ俺が頑張って食べるからさ」
誠一がハハっと笑いながら、牛肉に手を伸ばした。
◇◇◇◇
満腹になった美玲と誠一は、支払いを済ませてビストロを後にした。
その際店員からは、「アリガト!」と満面の笑みで言われたのであった。
その後、ホテルに戻るために地下鉄に乗る二人。
「えっと、切符ってどれ押せばいいんだっけ?」
美玲はスマートフォンの翻訳アプリを起動させ、券売機の前で戸惑っている。
「これは……多分この正規料金とか書いてあるやつじゃね?」
誠一は券売機と翻訳アプリを交互に見ながらそう言う。
「分かった」
美玲はボタンを押す。
「お、多分合ってる。地下鉄の正規料金出てるからさ」
「どこで降りても一律料金なんだね」
目を丸くしながら美玲は購入ボタンを押した。
その後、クレジットカードを差し込んで切符を購入するのであった。
「えっと、この方面に乗って乗り換え何駅目だ……?」
誠一は自身のスマートフォンでホテルまでの戻り方を確認していた。
「上手く乗り換えできるか不安だね。日本に来てる外国人観光客もこんな気持ちなのかな?」
キョロキョロと不安げな美玲。
「そうかもな」
誠一もキョロキョロしながら苦笑した。
駅のホームで数分待てば、地下鉄が到着した。
何とドアは自動では開かず、スイッチのようなものを上にカチャリと上ないと開かないのだ。
美玲と誠一は最初それが分からなかったので、後ろにいたフランス人がこうするんだと言うかのようにスイッチのようなものを上げてくれた。
二人は初めてのことに戸惑いながらも、「メルシー」とお礼を言い、スリに気をつけながら地下鉄に乗り込む。
パリの地下鉄は多いのだ。
「スリに気を付ける以外はあんまり日本の電車と変わらないね」
「確かに。でも駅と駅の間隔がめちゃくちゃ短くね? もう次の駅到着してるぞ。それとも地下鉄のスピードが速いのか?」
「言われてみればそうかも。それとさ、開くドアが片側に固定されてるよね。あっちのドア全然開かないし。日本だとこの駅は左側のドアが開いて、次の駅は右側とかあるのにさ」
美玲と誠一はパリの地下鉄を楽しんでいた。
白人と黒人、そして時々アジア人が入り混じっていて、地下鉄内は人種のるつぼに近い状態である。中には外国からの観光客もいるが、フランスは意外と多民族国家なのだ。
その時、いきなりドア付近にいたフランス人らしき男性がアコーディオンを演奏し始めた。
美玲はギョッとする。
「何か……自由だね……」
日本ではほぼあり得ない光景に戸惑うばかりである。
「ああ、岸本さん、ああいうのはあんまり見ない方がいい。海外の情報とか色々調べたんだけど、地下鉄とか公共交通機関であんな風にパフォーマンスをしては金を請求してくる人がいたりするからさ」
誠一はアコーディオンを演奏するフランス人を極力見ないように苦笑した。
「そうなんだ……」
美玲は改めて日本とは全然違う国であることを認識するのであった。
「何か……面白いね……」
美玲はクスッと笑っていた。
ちなみに、パリの地下鉄での演奏は法律違反なのだが、美玲も誠一もそれは知らなかった。
その時、ぐぅ、と美玲のお腹の音が鳴る。
気持ちが落ち着いたらお腹が空いていることに気付いたのだ。
「あ……」
美玲は頬を真っ赤に染める。
誠一は笑い出す。
「確かに腹も減ってきたよな。まだこんな明るいけど、もう午後六時だ」
誠一はスマートフォンを取り出して何かを調べる。
「あ、日本で事前に調べてたビストロ、やってるっぽい。リーズナブルで割と量が多いみたいだけど、そこに行くか? リュクサンブール公園の近くにある店だし」
誠一はスマートフォンの画面を美玲に見せてくれた。
まじまじと画面を見る美玲。
「うん。料理も美味しそうだね。行ってみる」
「よし、じゃあ行くか」
こうして、二人はリュクサンブール公園を後にして、誠一が調べたビストロへ向かうことにした。
◇◇◇◇
ビストロに到着した美玲と誠一。
席に案内され、注文を済ませていた。
「Hey, where are you from?」
陽気そうなフランス人男性の店員に英語でそう聞かれた美玲と誠一。
ビストロに入る時に「ボンジュール」と拙くともフランス語で挨拶さえすれば、後はフランス語が不慣れなら英語で対応してもらえるのだ。
「We are from Japan」
誠一が少し拙い英語でそう答える。
美玲はそれに頷いて同意した。
「Oh! Japan! コンニチハ! アリガト!」
店員は嬉しそうに表情を輝かせた。
日本に対していい印象を持っていることは明らかであった。
そしてその店員は「イタダキマス」と言いながらオニオンスープを運んできたのである。
恐らく日本語の『いただきます』とフランス語の『Bon appétit』が同じ意味なのだと思っているのだろう。
不慣れな言語はやはり誰でも間違えたりするのだ。
「確かに口コミ通り量多いね。オニオンスープだけでお腹いっぱいになりそう」
「確かにな。グリル盛り合わせを一つにしといて正解だったかも」
目の前には二人分のオニオンスープ。よく煮込まれ、チーズがたっぷりとふりかけてある。ふわりと漂うコンソメの香りが食欲を刺激した。
美玲はオニオンスープを一口食べてみる。
「うわあ、結構濃厚だね。トロトロしてる」
「だな。お、中にパンが入ってるぞ」
誠一はスプーンでパンをすくい、口まで運んだ。
美玲と誠一がオニオンスープを食べ終わって少し経過した時、再び店員が「イタダキマス」と言いながらグリル盛り合わせが運ばれてきた。
しっかりと焼けた牛の赤身、鶏肉、スペアリブ、そしてレタスとフライドポテトがたっぷり乗ったプレートである。
お好みでケチャップやマヨネーズをかけて食べるそうだ。
「やっぱり量多いね。食べられるかな?」
美玲は困ったように笑う。
「まあ俺が頑張って食べるからさ」
誠一がハハっと笑いながら、牛肉に手を伸ばした。
◇◇◇◇
満腹になった美玲と誠一は、支払いを済ませてビストロを後にした。
その際店員からは、「アリガト!」と満面の笑みで言われたのであった。
その後、ホテルに戻るために地下鉄に乗る二人。
「えっと、切符ってどれ押せばいいんだっけ?」
美玲はスマートフォンの翻訳アプリを起動させ、券売機の前で戸惑っている。
「これは……多分この正規料金とか書いてあるやつじゃね?」
誠一は券売機と翻訳アプリを交互に見ながらそう言う。
「分かった」
美玲はボタンを押す。
「お、多分合ってる。地下鉄の正規料金出てるからさ」
「どこで降りても一律料金なんだね」
目を丸くしながら美玲は購入ボタンを押した。
その後、クレジットカードを差し込んで切符を購入するのであった。
「えっと、この方面に乗って乗り換え何駅目だ……?」
誠一は自身のスマートフォンでホテルまでの戻り方を確認していた。
「上手く乗り換えできるか不安だね。日本に来てる外国人観光客もこんな気持ちなのかな?」
キョロキョロと不安げな美玲。
「そうかもな」
誠一もキョロキョロしながら苦笑した。
駅のホームで数分待てば、地下鉄が到着した。
何とドアは自動では開かず、スイッチのようなものを上にカチャリと上ないと開かないのだ。
美玲と誠一は最初それが分からなかったので、後ろにいたフランス人がこうするんだと言うかのようにスイッチのようなものを上げてくれた。
二人は初めてのことに戸惑いながらも、「メルシー」とお礼を言い、スリに気をつけながら地下鉄に乗り込む。
パリの地下鉄は多いのだ。
「スリに気を付ける以外はあんまり日本の電車と変わらないね」
「確かに。でも駅と駅の間隔がめちゃくちゃ短くね? もう次の駅到着してるぞ。それとも地下鉄のスピードが速いのか?」
「言われてみればそうかも。それとさ、開くドアが片側に固定されてるよね。あっちのドア全然開かないし。日本だとこの駅は左側のドアが開いて、次の駅は右側とかあるのにさ」
美玲と誠一はパリの地下鉄を楽しんでいた。
白人と黒人、そして時々アジア人が入り混じっていて、地下鉄内は人種のるつぼに近い状態である。中には外国からの観光客もいるが、フランスは意外と多民族国家なのだ。
その時、いきなりドア付近にいたフランス人らしき男性がアコーディオンを演奏し始めた。
美玲はギョッとする。
「何か……自由だね……」
日本ではほぼあり得ない光景に戸惑うばかりである。
「ああ、岸本さん、ああいうのはあんまり見ない方がいい。海外の情報とか色々調べたんだけど、地下鉄とか公共交通機関であんな風にパフォーマンスをしては金を請求してくる人がいたりするからさ」
誠一はアコーディオンを演奏するフランス人を極力見ないように苦笑した。
「そうなんだ……」
美玲は改めて日本とは全然違う国であることを認識するのであった。
「何か……面白いね……」
美玲はクスッと笑っていた。
ちなみに、パリの地下鉄での演奏は法律違反なのだが、美玲も誠一もそれは知らなかった。



