すっかり当たりも暗くなり、星もちょこちょこ見えてきた。
楽器屋からしばらく車で走ったというところで、ランパードが言ってきた。

「はやとってさ、昔はどんな感じだったの?」

「ん〜、まぁ人に言えるほど、たいしたことは特に何もしていない、平凡なやつだったよ」

フェミエルが窓の外の景色を眺めながら言ってくる。

「ふーん、てっきり祖チンはずっと誰とも話さずに、『青春は敵である』とか思いながらニコニコしてると思ってたわ」

なんだよそのなんもかっこよくない比◯谷八幡は、そんな痛いやつじゃねぇよ。

「そんなわけないだろ。友達もいたし、そこそこ楽しかったよ。」

ランパードが手を頭の後で組んでから言ってきた。

「ま、ならよかった。楽器屋で暗い顔してから、みんな心配してたんだぜ」

マジか、そんなにあの時顔に出てたのか。あんまり顔に出さないようにしていたんだが、今度から気をつけよう。
そんなことを考えていると、いきなりリエルが窓の外のコンビニを指でさしながら言った。

「ねぇはやと、あそこのコンビニに寄ってくれない?」

「いやだめんどくさい」

俺はキッパリ即答した。
だがここでランパードから俺に追撃が入る。

「いいじゃんはやと、俺も買いたいものあるし」

「…はぁ、わかった。俺は車に残るから好きにしてくれ」

「ありがとうはやと、あなたも気が利くのね」

当たり前だろ。一応こいつらには魔法とか教えてもらったしな。でも結構ここ止めるの大変なんだぞ。
そんなことは頭にもないランパードがフェミエルに言う。

「フェミエル、お前も来るか?」

「いや、私は車にいるわ」

「気をつけてねフェミエル、はやとなら急にちんこ出してくる可能性だってあるんだから」

「そんな一気に攻めねぇよ、行為を始める最初はキスからって決めてるんだ」

それを聞いたリエルは少し意外そうな顔をして車を降り、ランパードも車から降りて二人でコンビニに向かって行った。
車内は俺とフェミエルの二人になった。


「………」


「………」


…おい待ってくれ気まずすぎんだろマジで。
どうする?俺から会話の話題を出すか。

「フェミエルは好きな人とかいるの?」

うわやっちまった。確実にミスった。
いつも祖チンとか言ってくるやつだ。「なんでそんなこと急に聞いてくるの?もしかして私のこと好きなの?」みたいな感じで揶揄ってくるに決まってる。
ふとフェミエルの方を見る。
そこには少し顔を俯かせて、もじもじしているフェミエルの姿があった。
なんだよこいつ超ウブじゃねぇか。

「い、いるわよそんぐらい」

え?
なぁこれさ…
ワンチャン俺のこと好きなんじゃね⁉︎
そうだよな、そうだよな!
これ読んでる君たちもそう思うよな!
これきたぞ!ついにリア充になれるのか⁉︎
俺は今までにないぐらいのイケボでいう。

「もしかしてその好きな人って、ふっ。俺のことかな?」

「違うわよ殺すわよほんとに」

調子乗りました。すみません。
まぁ今思えば、1ヶ月前ぐらいにあった俺のこと好きになるわけないよな。

「で、結局誰なんだよ?教えてくれよ」

そう言うと、フェミエルが顔を上げてこっちを向いて言ってきた。

「絶対に誰にも言わない?」

俺はフェミエルの目を見つめて言った。

「約束しよう」

そう言うとフェミエルが少し下を向きながら、顔を赤くして恥ずかしそうに言った。





「ラ、ランパード、、、です、、」





コッワ!マジで言ってんのコイツ?コッワ!
お前はそいつに青い下着クンスカされたやんだぞ!

「ほんとに言ってんのか?」

「う、うん。だって、、ランパードって、かっこよくない?」

俺と一緒にばあちゃんに説教されたとき土下座してちんこ蹴られたやつのどこがかっこいいんでしょうか?
…まぁでも、こいつらは俺よりあいつのこと知ってると思うし、いいとこもあるのかもな。
そんな話をしている間に、二人がすぐさま帰ってきた。

「いやー、結構高いの買っちゃった。まぁでもたまには高いの食べちゃってももいいよね」

そう言ってケーキが入った袋を俺とフェミエルに見せてきた。いちごケーキで、他にもブルーベリーなどもトッピングされていて、とても美味しそうだ。

「そうだな、俺も結構お金使っちまったなぁ。ま、今日仕事したしね!」

いやお前マジでなんもしてねぇだろ。ずっと裏でパソコンカチャカチャしてただけじゃねぇか。

「もちろん、リエルとは違って二人のやつも買ってきたぜ」

ランパードたんマジ天使。こりゃフェミエルも好きになるわけだ。

「何よリエルとは違うって、私も買おうとはしてたのよ、でもお金が足りなかったの!」

うっせだまれ買ってこなかった分際であまり調子に乗るな。
心の中でリエルにブチギレていたら、フェミエルが落ち着いた様子で言った。

「まぁリエルには今度また買ってくれればいいよ、早く帰りましょう」

「なんで私が奢る前提で会話が進んでんのよ」

そうリエルがなんともごもっともなツッコミを入れた。
てかあんなにもウブだったフェミエルが短時間でこんなに普通の感じになるとは、同じ人とは思えないな。

「まぁ、いいわ帰るぞお前ら」

そう言って車を走らせた。

_家の近く_

はぁ…やっと見えてきた。
リエルがいう。

「結構遠いのね…これからほぼ毎日あそこに通うことになるってなると、かなり疲れるわね…」

確かに少しばかり遠いかもしれんが、せっかく建てた楽器屋さんだ。頑張って運転するとしよう。

車を駐車場に置き、俺たちは玄関に向かった。

「はぁ、祖チンの車もうちょっと早くスピード出せないの?」

「すまんねあれ以上出したらみんなで仲良く刑務所行きだ」

そんな会話をしながら玄関の方を見た。



「…ん?」



なんか黒い人影のようなものが見えるような…
俺は三人の方を向く。



「ねぇ、あれって」


三人の方を向いて俺は言葉を失った。
三人の顔は真っ青になっていて、今までにないぐらい恐怖を感じている顔になっていた。

「お、おい!なんなんだよあれ!なんかヤバいやつなのか?」

みんなが口を瞑る中、リエルがひどく震えた声で言った。





「ハーマイド帝国の調査兵団よ」





「…は?」