ストーリー3
 
 駿は朝の6時に目が覚めた。
 起床時間は6時半だった。
 急に得体の知れない不安が駿を襲ってきた。
 
 「僕は本当に助かるのだろうか?」
 「手術は大丈夫だろうか、、」
 考えれば考えるほど怖くなった。
 
 起床時間になり、朝の薬を飲んだ。
 すると、担当看護師の佐々木さんが
 やってきた。
 
 「駿くん。おはよう! 昨日はよく眠れた?」
 ちょっと体温と血圧計らせてね。
 
 佐々木さんは、テキパキと仕事をこなしていた。20代中頃でキレイなお姉さんといった感じの雰囲気を持った人だった。
 
 「駿くん。血液検査があるから注射しても良いかな?」
 
 「はい。大丈夫です」
 「ちょっと痛いけどごめんね」
 
 佐々木さんは手早く慣れた手つきで注射をして血液を取った。
 
 「ごめんね。痛かったね。ちょっとここ押さえててね」

 「はい。分かりました」
 
 やがて朝食が運ばれてきて朝食を食べた。
 その後はひたすら何もすることがない時間が続いた。駿は目を閉じまたウトウトとしてきた。
 
 「駿。駿。駿!!」
 駿を呼ぶ声が聞こえた。
 駿が目を覚ますとそこには愛がいた。
 
 「まだ、寝てたの?」
 「違うよ。ウトウトしてたんだ」
 
 ふと、愛を見ると点滴が繋がれていた。
 「点滴してるの?」
 「うん」
 「大丈夫!私慣れてるから」
 そう言って笑うと愛は満面の笑みで笑った。
 
 「心配しなくていいよ。いつものことだから」
 「昨日はたまたま点滴外れてたんだ、、」
 「駿も今日から精密検査だね」
 「うん。先生が副腎以外も調べるって、、」
 「そっか。頑張ってね!」
 
 「それじゃ、私部屋に戻らないと行けないから、、また」
 「また、、」
 そう言うと愛は自分の部屋に戻って行った。
 
 僕は副腎以外にがんの転移がないかを調べる検査を受けた。
 
 2週間ほど検査を受けた後、幸い他に転移がないことが分かった。
 
 両親が呼ばれ病状の説明がされた。
 幸い転移はなく左側副腎の切除手術を受けることになった。
 
 その間、愛は少しづつ痩せていった。
 僕も体重が落ちていった。
 
 そして、入院から2週間ついに手術日が12月17日に決まった。
 
 愛が病室にやってきた。
 「聞いたよ。手術日。明後日なんだってね」
 「うん」
 「怖い?」
 「怖いよ」
 「駿なら絶対大丈夫!」
 「頑張って!」
 「うん。頑張るよ」
 
 「駿。デイルームに行こう!」
 「うん」
 
その日は夕日が綺麗で燃えるように街並みに落ちていた。
 
 「駿! 絶対元気になって帰ってきてよね」
 「うん」
 
 「駿は好きな人いないの?」
 愛は駿に聞いた。
 駿は少し考えてから答えた。
 
 「いるよ」
 
 愛は落胆の表情を浮かべた。
 「誰なの?」
 
 「えっとね。廊下でぶつかってもごめんねも言わずに行って、たまたま再会したら売店やら何やら病院内を案内してくれる人、、」
 
 愛の表情はみるみる明るくなった。
 
 「誰だろうね、、そんな人、、」
 「誰だろうねー」
 駿も愛も照れていた。
 
 「もう!この話はこれで終わり!」
 「駿ったら、冗談が過ぎるんだから、、」
 
 駿は急に真面目な顔になり続けた。
 「だから、その好きな人にも生き続けてもらいたいんだ、、」
 「これが今の僕の願いだよ」
 「どんなに辛くても頑張って治療して治って欲しい」
 「そして、この先の僕の人生の中にいて欲しい」
 「そんなの約束出来ないよ、、」
 「だから、絶対生きて欲しい、、」
 愛は涙ぐんでいた。
 
 「仕方ないなぁ。。後輩くんを一人にするのも忍びないからもうちょっとだけ付き合ってあげるか、、」
 愛は優しく微笑むと涙を拭いて駿を見た。
 
 「これからもよろしくね! 後輩くん!」
 駿も笑顔で手を伸ばした。
 「こちらこそ。よろしく!」
 いつの間にか日が落ちて外は真っ暗になっていた。