入学式の再現は、実際に私が通っている学校の体育館を使わせてもらう。先生方も協力してくれるらしく、本当に有難い。そう思いながら学校に向かった。途中で杏ちゃんと響希に会った。
「鈴花おはよー!」
「鈴花さんおはよう。今日頑張ろうね。」
「杏ちゃん!響希!おはよう…!うん頑張ろう」
 正直、当日になって不安で仕方なかった。本当に思い出すことが出来るのか、響希と未来の私を会わせることが出来るのか。そんな事を考えてしまうばかりで、昨日の意気込みはどこに行ってしまったのだろう。
 
 二人が大丈夫、と声を掛けてくれているうちに学校に着いた。よし、頑張ろう…
「鈴花さん、大丈夫だよ。君ならできる。思い出して頭が痛くなったら僕たちに助けを求めればいい。杏さんだってきっと君ならできるって思ってる。頼ってもらいたいって思っているはずだよ。」
 
 響希のその一言一言に救われた気がした。不安で溢れていた私の気持ちは一気に解け、希望に変わっていた。
 
 そして入学式の準備をしている時に、杏ちゃんから紹介してもらった今はまだメル友の友達が来た。約十人くらいだけど、再現なのだからそのくらいで丁度いい。記憶喪失になった私の性格は明るくて元気な感じなので、すぐにそのメル友たちと仲良くなれた。
 
 もうすぐ入学式再現の時間が来る。緊張はしているけど、響希も杏ちゃんもメル友たちも先生方もいる。きっと大丈夫。私なら思い出せる。未来の私も「頑張れ」と応援してくれていると感じた。
 
「今から入学式を始めます。一同、礼!」
 先生のその言葉から始まった入学式。その後も順調に、生徒代表の言葉や吹奏楽部の演奏があり、入学式は終わりに近づいていたが、何かを思い出すことはなかった。
 
「思い出せなかった…」
 そう落ち込んでいると、杏ちゃんがこっちに寄ってきた。
「まだ時間はあるし、入学式で部活動勧誘とかも今からあるから…!」
「そうだぞ、もう少し頑張ってみろ宮本。思い出してくれたら、先生も嬉しいなあ」
 私と杏ちゃんの担任をしているらしい先生にも話しかけられた。そんなこと言われても、もう思い出せる気がしないと思った。今日が終わるまで、あと十三時間。響希のためにも、自分を変えるためにも頑張らなきゃ。