「──か 宮本鈴花!!」
 あれ、白い天井、ここはどこ?起き上がろうとしたその瞬間──
 痛っ。キーンと頭に突き刺さるような痛みが走った。
「よかった、鈴花が目覚めたー!(泣)何が起きたのか、覚えてる?」
 
 全く理解が追いつかない。どうして私は包帯ぐるぐる巻きになっているの!?
 そして私の名前を知っているこの女の子は誰なの…?
「えっと、貴方は誰?」
「──え?誰って、杏だよ、山城杏」
「山城杏…ごめんなさい、思い出せない」
「そっかー、まあ事故にあって困惑してるんだろうし。」
 
 私が事故?事故にあったから病院にいて、包帯を巻いているの?全く覚えていない。とりあえずこの女の子はお友達なんだろう。

「杏ちゃんね、覚えたよ!」 
「えっなんか性格違くない?」
 
「──記憶喪失ですね。記憶を失って、性格が変わることもあるんです。何かきっかけになることがあると、思い出すこともあるかもしれません。」
 病院の先生が言っていた。そんなこと本当に有り得るんだ、とびっくりした。
 
「杏ちゃん、私記憶喪失らしいの!びっくりだよね」
「傍から見てもしっかり記憶喪失だから。」
「えーそうなんだ!私どんな子だったの?」
「私のこと杏ちゃんじゃなくて、山城さんって呼んでたよ(笑)あとはそうだな〜、けっこう大人しめで人と関わろうとしなかったよ」
 (私ってそんな子だったんだ…)
「今の鈴花はすっごい元気な性格してるね!私に似たのかな?」─────

 面談の時間が過ぎ、病室に一人取り残された気分になった。
「はあ〜退屈だな、なんか遊ぶものとかないのかなー?」
 遊び道具を探し始めた時、目の前が眩しくなって、一本の光の筋が見えた。
「なにこれ…!眩しくて前見れない!」

 その光の筋がどんどん緩まっていった。
「なんだったの…」
 眩しさがなくなって目を開けたその瞬間目の前に一人の男の子がいた。
「君、もしかして宮本鈴花さんだったりする?」
「え!私のこと知ってるんですか!」
 突然現れた男の子は私のことを知っているようだった。なんでなのかは分からないが、記憶喪失になる前に仲良くしていたかもしれない。

「知ってる…というか今の西暦教えてくれないかな?」
「西暦?2024年ですけど、それがどうかしましたか?」
そういえば、西暦や日付などの常識的なものは覚えているようだった。
「やっぱり…実は俺未来で鈴花さんと婚約してるんだ、2035年に。」
 えっ、2035年といったら、私は28歳ってこと?ただでさえ記憶喪失なのにそんなことをいきなり言われたらもっと混乱してしまう。
 
「いきなり言われてもびっくりするよね。2024年だからその6年後に出会うんだね俺たち。ちなみに俺もタイムスリップしたから少し若返ってるみたいだ(笑)」
「あの、お名前は?」
「ああ、言い忘れてたよ。井上響希。響希って呼んで」
「響希…」
 頭の中で何かが引っかかった。
「響希、実は私事故にあって記憶喪失になったみたいなの。だからってわけじゃないけど記憶を戻す手伝い、してほしいな〜なんて」
 
 まじまじとこちらを見つめてきた。私が何か変なことを言ってしまったのだろうかと不安になった。
「そっか、未来の君は記憶喪失になったとき自力で思い出したようだけど、そんな君もすごくいいと思う。」
 未来の私は独りで思い出したってことなのかな、
「鈴花さん、一緒に記憶を取り戻そう。あと俺は、君の記憶が戻ると未来に帰れるらしいんだ、未来での鈴花さんが俺を待ってくれてるから一刻も早く、記憶を取り戻そう!」
 
 なんだか強い味方が現れた気がした。未来の私、いい人と婚約したんだな〜、と考えながらその日は眠りについた。
 
 ──やめて、やめて、あああ゙あ゙!
 
 ─────今の、なに、?