「鈴花ー!おはよー!」
元気すぎるくらいの声量で杏が呼び掛けてきた。
「山城さん、おはよう。」
山城杏、私が苦手な陽キャな女の子。
人と過ごすことを好まない私からすると、毎日鬱陶しいくらい話しかけられて、正直うんざりしている。
「鈴花、そろそろ私のこと杏って呼んでくれてもいいんじゃないのー?」
「はぁ、何度も言ってるでしょ。私は基本、人のことは苗字で呼ぶって。」
「せっかく仲良くなれたのに」
杏はぶつぶつ言いながら隣を歩いていた──
独りで歩く帰り道。山城さんが言っていたことを思い出していたけど、少なくとも私が心を開けるまでは人を名前で呼ばない。名前で呼ぶ人なんて幼なじみと従姉妹くらい。なんで私はこんなに人に対して心を開けないんだろう。こんな自分が嫌だったし、本当は明るい性格になりたかった。そんなことを考えていた時、後ろからブォンと大きな音のバイクが勢いよく走ってきた──。