それからというもの、俺と詩音は、休み時間になると必ず一緒に中庭でご飯を食べた。自分の中の寂しさが埋まっていくような気がした。でも、何か違う。詩音と奈津紀じゃ何かが……違う。奈津紀の死によって失ったものは、元には戻らない。奈津紀の代わりなんていない。奈津紀には奈津紀の良さがあり、詩音には詩音の良さがある。だからこそ、違和感が残るのだろう。結局、寂しさの全てを埋めることはできないのだから。
ある日の夜、寂しさを埋めようとする本能なのか、俺は詩音と電話で話していた。
「詩音」
「何だい?綾」
俺は詩音に、奈津紀のことを全て話した。話さないと、現実に向き合えなくなると思ったからだ。
「なるほど。綾ちょっといいかい。」
すると詩音は改まった口調でこう言った。
「綾にとって、奈津紀君の死は、相当辛かったと思う。何より、綾と同じ悩みを共有できる人を失ったのだから。」
そうだ。その通りだ。
「だけどね。現実を受け入れなければ、進めない道もある。」
「だから……なんだってんだよっ!」
俺は思わず叫んでしまった。そんなの、わかってるんだよ!でも……できないんだよっ!
「失ったとしても、君を支えてくれた人がいたという事実は変わらない。なら、今度は君が、誰かを支えればよいではないか。」
詩音……。確かにそうだ。奈津紀に恩返しできなかった分、誰かに返せばよいではないか!
「だけど……」
「大丈夫。綾ならできるさ。」
「……ありがとう、詩音。」
あれから5年、俺は、自分と同じ悩みを持つ人を支えるためのNPO法人の会長を務めている。あの日、詩音にあんなこと言われなかったら、きっと俺はここにはいないだろう。その詩音は、このNPO法人の副会長だ。詩音には感謝している。
「詩音。」
「何だい?綾」
「あの日の詩音の言葉、忘れない。」
絶対に。
「綾こそ、あの日、自分の過去のこと、話してくれてありがとう。」
詩音……君はとことん優しい奴だな……。ありがとう。
失ったものは戻らない。俺たちはこの先、また挫折するかもしれない。だけど、救われなかった奈津紀の思いを胸に、今日も生きていく。それが、今は亡き奈津紀への、唯一の恩返しだから。
ある日の夜、寂しさを埋めようとする本能なのか、俺は詩音と電話で話していた。
「詩音」
「何だい?綾」
俺は詩音に、奈津紀のことを全て話した。話さないと、現実に向き合えなくなると思ったからだ。
「なるほど。綾ちょっといいかい。」
すると詩音は改まった口調でこう言った。
「綾にとって、奈津紀君の死は、相当辛かったと思う。何より、綾と同じ悩みを共有できる人を失ったのだから。」
そうだ。その通りだ。
「だけどね。現実を受け入れなければ、進めない道もある。」
「だから……なんだってんだよっ!」
俺は思わず叫んでしまった。そんなの、わかってるんだよ!でも……できないんだよっ!
「失ったとしても、君を支えてくれた人がいたという事実は変わらない。なら、今度は君が、誰かを支えればよいではないか。」
詩音……。確かにそうだ。奈津紀に恩返しできなかった分、誰かに返せばよいではないか!
「だけど……」
「大丈夫。綾ならできるさ。」
「……ありがとう、詩音。」
あれから5年、俺は、自分と同じ悩みを持つ人を支えるためのNPO法人の会長を務めている。あの日、詩音にあんなこと言われなかったら、きっと俺はここにはいないだろう。その詩音は、このNPO法人の副会長だ。詩音には感謝している。
「詩音。」
「何だい?綾」
「あの日の詩音の言葉、忘れない。」
絶対に。
「綾こそ、あの日、自分の過去のこと、話してくれてありがとう。」
詩音……君はとことん優しい奴だな……。ありがとう。
失ったものは戻らない。俺たちはこの先、また挫折するかもしれない。だけど、救われなかった奈津紀の思いを胸に、今日も生きていく。それが、今は亡き奈津紀への、唯一の恩返しだから。