愛しているゲームをした翌日の夜。
有名店が出前に対応したと話を聞いて、スマホのアプリで注文した中華料理を二人で食べていた。
少し冷えてしまっているので味は落ちているけど、そこそこ美味しい。
正面に座っている麻衣は黙ったままだが、箸は止まっていないので不味いとは思っていないだろう。
「お義兄さん……」
と、思っていたら急に箸を置いて真剣な目をしながら俺を見つめている。
「相談があります」
相談? また入学式に必要な物が足りなかったのか? それとも、共同生活をする上でのルールを変えて欲しいとか?
色々と想像を巡らせていると麻衣が話を続けてくれる。
「お金が欲しいです」
「え、お金?」
そういえばお小遣いを渡していなかった。
年頃だもんな。高校生となれば、ある程度の現金は必要だろう。
ポケットに入っていた財布を取り出す。
「お小遣いはいくらもらってた? 今、お財布に入っているのは五千円だけなんだけど、足りるかな?」
「ち、違うんです!」
両手を振って麻衣が慌てて否定した。
あれ? お小遣いを渡せと言われたわけじゃないのか?
「欲しいものがあって……お金を稼ぎたいんです」
「バイトをしたいってこと?」
「そうなんですが、年齢の問題があって、まだできないんです」
普通にアルバイトをするなら十六歳になってからだから、確かにコンビニやスーパーのバイトはできないか。それにだ、バイトに時間を取られて勉強がおろそかになったら困る。両親が不在だからこそ、学業は怠ってはいけない。
「なるほどね。麻衣は何が欲しいの?」
「ヘッドホンです。十五万円ぐらいします」
「結構、高いね……」
買ってあげられない金額ではないけど、何もしないで与えて良い物ではなさそうだ。って、親みたいな考えになっているな。俺、結婚どころか彼女すらいないんだけど……。
「はい。ですので、働いてお金を稼ごうと思いまして……」
うーん。これから高校生になるんだし、しばらくは学校に慣れることを優先して欲しい。勉強だけではなく、友達作りだって重要なのだ。
ボッチな高校生活になってしまったら可哀想だしね。とはいえ、麻衣の気持ちも分かるので、完全に否定できない。
「お金は急いで稼ぐ必要があるのかな?」
「いえ、急ぎではないのですが……」
なるほどね。それなら、いくつか手段はある。
これは完全に俺のワガママだけど、急ぎじゃないなら、単純にバイトをするより技術が身につくような仕事をして欲しいと思う。
技術も身につけながらお金を稼ぐ方法を思い浮かべながら、話を続ける。
「一つ聞きたいことがあるんだけど、好きなことはあるかな?」
「え、はい。私、人より耳が良いので音楽が好きで、楽器のキーボードなら弾けます」
それは知らなかった。耳が良くて音楽が好きなら、こだわりが強そうだ。こういった尖ったものがあるなら、内容次第でマネタイズは出来るだろう。
「なるほど。それだったら音を作ってみないか?」
「音、ですか?」
「うん。今は動画やライブ配信をする人が増えたから、音の需要も増えているんだよね。例えばBGMや効果音、それに慣れてきたら音楽作りをしても良いかもしれない」
音を作るのは簡単ではない。機材は必要だし、ソフトの使い方も覚えなければいけない。お金が取れるレベルになるには時間と根気が必要だ。でも、耳が良く、音が好きな麻衣ならあうのではないかと、直感が働いて提案したのだった。
これで無理というのであれば、別の方法を提案しても良い。これは俺のワガママでもあるのだからな。
「音を作る、ですか。考えたこともなかったです」
驚きながらも、どこか喜んでいる様にも見える。感触は悪くなさそうだ。
「本気でやるなら、最低限の機材やソフト、後は教材かな? その辺は俺が用意するけど、どうかな?」
「それは凄くたすかりますが……良いんですか?」
「もちろん。提案したんだから、そのぐらいのサポートはするよ」
「ありがとうございます」
幸いなことに、デバイス好きな俺は最低限の機材は持ってたりする。制作ソフトと教材だけはないから、ネットで注文するか。
食事を食べ終わってから部屋に戻ると、音楽を作成するソフトを購入して麻衣のメールアドレスに起動用のコードを送る。その後にダンボールにしまっていたオーディオインターフェイスやMIDIコーボード、マイク、スピーカー、ヘッドホンを テレビを見ながら待っている麻衣の所に持っていく。
「これが必要な機材だよ。音楽作成用のソフトは購入済みで、麻衣のメールアドレスに起動用のコードを送っておいたから、パソコンにインストールすればいつでも使えるよ」
「え、こんなに!? ヘッドホンも……!」
驚きの声を上げた麻衣はヘッドホンに釘付けだった。耳が良いといっていたので性能が気になるのだろう。
「このヘッドホンは三万円ぐらいの物だけど、性能はそこそこ良いって評判なんだ。十五万円のヘッドホンを買うまでのつなぎとして使うと良いよ」
「ありがとうございます! 大切にしますッ!」
感情が表に出てくるほど感動してくれたようだ。
機材の接続方法は自分で調べると言って、麻衣は両手で抱きかかえて部屋に戻ってしまった。
有名店が出前に対応したと話を聞いて、スマホのアプリで注文した中華料理を二人で食べていた。
少し冷えてしまっているので味は落ちているけど、そこそこ美味しい。
正面に座っている麻衣は黙ったままだが、箸は止まっていないので不味いとは思っていないだろう。
「お義兄さん……」
と、思っていたら急に箸を置いて真剣な目をしながら俺を見つめている。
「相談があります」
相談? また入学式に必要な物が足りなかったのか? それとも、共同生活をする上でのルールを変えて欲しいとか?
色々と想像を巡らせていると麻衣が話を続けてくれる。
「お金が欲しいです」
「え、お金?」
そういえばお小遣いを渡していなかった。
年頃だもんな。高校生となれば、ある程度の現金は必要だろう。
ポケットに入っていた財布を取り出す。
「お小遣いはいくらもらってた? 今、お財布に入っているのは五千円だけなんだけど、足りるかな?」
「ち、違うんです!」
両手を振って麻衣が慌てて否定した。
あれ? お小遣いを渡せと言われたわけじゃないのか?
「欲しいものがあって……お金を稼ぎたいんです」
「バイトをしたいってこと?」
「そうなんですが、年齢の問題があって、まだできないんです」
普通にアルバイトをするなら十六歳になってからだから、確かにコンビニやスーパーのバイトはできないか。それにだ、バイトに時間を取られて勉強がおろそかになったら困る。両親が不在だからこそ、学業は怠ってはいけない。
「なるほどね。麻衣は何が欲しいの?」
「ヘッドホンです。十五万円ぐらいします」
「結構、高いね……」
買ってあげられない金額ではないけど、何もしないで与えて良い物ではなさそうだ。って、親みたいな考えになっているな。俺、結婚どころか彼女すらいないんだけど……。
「はい。ですので、働いてお金を稼ごうと思いまして……」
うーん。これから高校生になるんだし、しばらくは学校に慣れることを優先して欲しい。勉強だけではなく、友達作りだって重要なのだ。
ボッチな高校生活になってしまったら可哀想だしね。とはいえ、麻衣の気持ちも分かるので、完全に否定できない。
「お金は急いで稼ぐ必要があるのかな?」
「いえ、急ぎではないのですが……」
なるほどね。それなら、いくつか手段はある。
これは完全に俺のワガママだけど、急ぎじゃないなら、単純にバイトをするより技術が身につくような仕事をして欲しいと思う。
技術も身につけながらお金を稼ぐ方法を思い浮かべながら、話を続ける。
「一つ聞きたいことがあるんだけど、好きなことはあるかな?」
「え、はい。私、人より耳が良いので音楽が好きで、楽器のキーボードなら弾けます」
それは知らなかった。耳が良くて音楽が好きなら、こだわりが強そうだ。こういった尖ったものがあるなら、内容次第でマネタイズは出来るだろう。
「なるほど。それだったら音を作ってみないか?」
「音、ですか?」
「うん。今は動画やライブ配信をする人が増えたから、音の需要も増えているんだよね。例えばBGMや効果音、それに慣れてきたら音楽作りをしても良いかもしれない」
音を作るのは簡単ではない。機材は必要だし、ソフトの使い方も覚えなければいけない。お金が取れるレベルになるには時間と根気が必要だ。でも、耳が良く、音が好きな麻衣ならあうのではないかと、直感が働いて提案したのだった。
これで無理というのであれば、別の方法を提案しても良い。これは俺のワガママでもあるのだからな。
「音を作る、ですか。考えたこともなかったです」
驚きながらも、どこか喜んでいる様にも見える。感触は悪くなさそうだ。
「本気でやるなら、最低限の機材やソフト、後は教材かな? その辺は俺が用意するけど、どうかな?」
「それは凄くたすかりますが……良いんですか?」
「もちろん。提案したんだから、そのぐらいのサポートはするよ」
「ありがとうございます」
幸いなことに、デバイス好きな俺は最低限の機材は持ってたりする。制作ソフトと教材だけはないから、ネットで注文するか。
食事を食べ終わってから部屋に戻ると、音楽を作成するソフトを購入して麻衣のメールアドレスに起動用のコードを送る。その後にダンボールにしまっていたオーディオインターフェイスやMIDIコーボード、マイク、スピーカー、ヘッドホンを テレビを見ながら待っている麻衣の所に持っていく。
「これが必要な機材だよ。音楽作成用のソフトは購入済みで、麻衣のメールアドレスに起動用のコードを送っておいたから、パソコンにインストールすればいつでも使えるよ」
「え、こんなに!? ヘッドホンも……!」
驚きの声を上げた麻衣はヘッドホンに釘付けだった。耳が良いといっていたので性能が気になるのだろう。
「このヘッドホンは三万円ぐらいの物だけど、性能はそこそこ良いって評判なんだ。十五万円のヘッドホンを買うまでのつなぎとして使うと良いよ」
「ありがとうございます! 大切にしますッ!」
感情が表に出てくるほど感動してくれたようだ。
機材の接続方法は自分で調べると言って、麻衣は両手で抱きかかえて部屋に戻ってしまった。