「じゃ、出発するわよ」
「よし、行こう」
左右の花より、眠気の方が勝ってぐっすり眠れた。
しかしこれば毎晩続くことになるのか?
・
・
・
続くことになった。
この日も、翌日も、そして今日も……二人は俺にぴったりくっついて眠った。
そして俺はドキドキしながらも、疲れであっさり寝た。
そしてツリーハウスを出発して四日目の朝――
昨日から視界に映っていた切り立った山の麓までやってきた。
まるでグランドキャニオンだな。行ったことはないけど、テレビで見たやつによく似ている。
地層がはっきりくっきり見える壁が左右に広がる谷間を抜けていく。
「ずいぶん狭いな」
「だからこそ安全なんじゃない」
「この広さだと、中型のモンスターも入ってこれませんので」
あぁ、なるほど。
谷は二人横に並んで歩くにも狭く感じるほどだ。
そんな谷を抜けると開けた場所に出る。
そこにいくつかのテントが見えた。
「まぁ、凄い」
「久しぶりの大猟じゃないか。これでしばらく持つだろう」
到着して早々に、集落の全員が集まって来た。
その理由は、俺のインベントリ内に入れた物にある。
「日焼けしていない新鮮な肉じゃない。まさかこの近くで?」
「ううん、違うわおばさん。それは昨日仕留めた奴」
「これだけの量を、よく運べたなぁ」
「ここにいるユタカさんのおかげです」
そう、肉だ。
正確にはモンスター肉。
正直、ここまでめちゃくちゃ苦労した。
砂漠を移動している最中も、休んでいる最中も、モンスターが襲って来る。
その度に――
――こいつは私が殺《や》るわっ。あんたはスキルを使わないでよ!
あ、はい。
――ユタカさん。こっちをお願いします。
――これは食べられませんし、素材にもなりませんから。
あ、はい。
そんな訳で、俺も容赦なく戦闘に参加させられた。
しかも俺のスキル、対象に触れていないと効果が出ない。
つまり、超至近距離でモンスターと対峙しないといけない訳だ。
いやもう、生きた心地がしなかったよ。
ま、でも頑張った甲斐はあったかな。
インベントリから取り出した肉を見て、こんなに喜んで貰えたんだからさ。
それだけじゃない。
狩ったモンスターの素材や肉をどんどんインベントリに詰め込んでいると、変化があったんだ。
横五マス、縦十マスだったインベントリに、ページが増えた。
ページというよりタブか。
どうやら上限の五〇マスに達したところで、タブが増えたみたいだな。
しかもタブは『種』『飲食物』『素材』に分かれて、見やすくもなった。
「ユタカさん。みんなにお話ししておきました」
「よかったわね。ここで暮らしてもいいってよ」
「え、本当!?」
よそ者だから受け入れて貰えるか少し心配だった。
はぁ、よかった。
「二人からお話は聞いたよ。いやぁ、大変だったねぇ」
そう声を掛けてくれたのは、三〇台半ばだろう男の人だ。
「ここで一番の年長者のオーリさんよ」
とシェリルが教えてくれる。
「悪い魔法使いに突然砂漠へ飛ばされたと聞いたけれど、故郷には戻らなくてもいいのかい? 家族が待っているだろう」
「あ……家族はいません。両親は去年、事故で亡くなっているので。他に兄弟もいませんし」
これは本当だ。
両親が事故で亡くなった後、疎遠だった親戚がいきなり来て遺産相続の件でいろいろ揉めた。
帰ったって、おかえりと言ってくれる人はいない。
召喚されたばかりの時は動転していたし、捨てるなら帰らせてくれと言ったけどさ。
でも今更ながら思う。
「俺に帰る場所なんてありませんから、どうせなら新天地で心機一転、頑張ってみたいなって思うんです」
こうなったら、異世界ライフを満喫するしかないだろう。
「ユタカさん……」
「そうだったのか。辛いことを思い出させたね」
「あ、いえ。もう慣れましたから」
「まぁ、そういうことだったら。砂ばかりなこんな土地だけどね、遠慮なく住んでくれていいよ。だけど家はどうしたもんかな」」
「あ、家の心配はいりません。自分で成長させるんで」
というと、オーリさんは首を傾げた。
「よし、行こう」
左右の花より、眠気の方が勝ってぐっすり眠れた。
しかしこれば毎晩続くことになるのか?
・
・
・
続くことになった。
この日も、翌日も、そして今日も……二人は俺にぴったりくっついて眠った。
そして俺はドキドキしながらも、疲れであっさり寝た。
そしてツリーハウスを出発して四日目の朝――
昨日から視界に映っていた切り立った山の麓までやってきた。
まるでグランドキャニオンだな。行ったことはないけど、テレビで見たやつによく似ている。
地層がはっきりくっきり見える壁が左右に広がる谷間を抜けていく。
「ずいぶん狭いな」
「だからこそ安全なんじゃない」
「この広さだと、中型のモンスターも入ってこれませんので」
あぁ、なるほど。
谷は二人横に並んで歩くにも狭く感じるほどだ。
そんな谷を抜けると開けた場所に出る。
そこにいくつかのテントが見えた。
「まぁ、凄い」
「久しぶりの大猟じゃないか。これでしばらく持つだろう」
到着して早々に、集落の全員が集まって来た。
その理由は、俺のインベントリ内に入れた物にある。
「日焼けしていない新鮮な肉じゃない。まさかこの近くで?」
「ううん、違うわおばさん。それは昨日仕留めた奴」
「これだけの量を、よく運べたなぁ」
「ここにいるユタカさんのおかげです」
そう、肉だ。
正確にはモンスター肉。
正直、ここまでめちゃくちゃ苦労した。
砂漠を移動している最中も、休んでいる最中も、モンスターが襲って来る。
その度に――
――こいつは私が殺《や》るわっ。あんたはスキルを使わないでよ!
あ、はい。
――ユタカさん。こっちをお願いします。
――これは食べられませんし、素材にもなりませんから。
あ、はい。
そんな訳で、俺も容赦なく戦闘に参加させられた。
しかも俺のスキル、対象に触れていないと効果が出ない。
つまり、超至近距離でモンスターと対峙しないといけない訳だ。
いやもう、生きた心地がしなかったよ。
ま、でも頑張った甲斐はあったかな。
インベントリから取り出した肉を見て、こんなに喜んで貰えたんだからさ。
それだけじゃない。
狩ったモンスターの素材や肉をどんどんインベントリに詰め込んでいると、変化があったんだ。
横五マス、縦十マスだったインベントリに、ページが増えた。
ページというよりタブか。
どうやら上限の五〇マスに達したところで、タブが増えたみたいだな。
しかもタブは『種』『飲食物』『素材』に分かれて、見やすくもなった。
「ユタカさん。みんなにお話ししておきました」
「よかったわね。ここで暮らしてもいいってよ」
「え、本当!?」
よそ者だから受け入れて貰えるか少し心配だった。
はぁ、よかった。
「二人からお話は聞いたよ。いやぁ、大変だったねぇ」
そう声を掛けてくれたのは、三〇台半ばだろう男の人だ。
「ここで一番の年長者のオーリさんよ」
とシェリルが教えてくれる。
「悪い魔法使いに突然砂漠へ飛ばされたと聞いたけれど、故郷には戻らなくてもいいのかい? 家族が待っているだろう」
「あ……家族はいません。両親は去年、事故で亡くなっているので。他に兄弟もいませんし」
これは本当だ。
両親が事故で亡くなった後、疎遠だった親戚がいきなり来て遺産相続の件でいろいろ揉めた。
帰ったって、おかえりと言ってくれる人はいない。
召喚されたばかりの時は動転していたし、捨てるなら帰らせてくれと言ったけどさ。
でも今更ながら思う。
「俺に帰る場所なんてありませんから、どうせなら新天地で心機一転、頑張ってみたいなって思うんです」
こうなったら、異世界ライフを満喫するしかないだろう。
「ユタカさん……」
「そうだったのか。辛いことを思い出させたね」
「あ、いえ。もう慣れましたから」
「まぁ、そういうことだったら。砂ばかりなこんな土地だけどね、遠慮なく住んでくれていいよ。だけど家はどうしたもんかな」」
「あ、家の心配はいりません。自分で成長させるんで」
というと、オーリさんは首を傾げた。