「バフォおじさん。この世界の鶏って、大きいの?」
「……あのなぁ、そいつは鶏じゃねえよ。チキンホーンっつぅモンスターだ」
『コケエェェェーッ!!』
「騙したなフレイ!!」
『見た目は鶏であろう。細かいことをいちいち気にするな。器が小さいぞ』

 細かくない!
 ぜんぜん細かくないから!

 フレイが鶏だと言う巨大なソレを、雄鶏雌鶏の番でそれぞれ二羽ずつゲット。
 首を傾げながら集落に帰って来て、すぐにバフォおじさんに見てもらったらこれだよ。

「まぁ卵も肉も、鶏とそう変わらねぇがな」
「そう、なのか? 鶏の卵と同じ?」
「同じ同じ」
『ふっ。だから言ったであろう。あれは鶏だと』

 そりゃドラゴン(あんた)から見れば、鶏サイズかもしれないけどさ。
 体高が俺の身長とほとんど変わらないんだよなぁ。

「卵料理、楽しみです」
「お肉は十分に足りるから、卵だけでいいんじゃない?」

 ルーシェとシェリルは楽しみにしているから、このまま飼育のパターンかなぁ。
 けど、どんだけ大きな鶏小屋を建てればいいのやら。
 あと餌。

「こいつら、何食べるんだ?」
「草だろ」
『草だな』

 草食!?

 それならまぁ、用意するのは簡単だけど。
 問題は……。

「産んだ卵を、大人しく取らせてくれるかだよなぁ」
「そいつぁ本人たちに聞かねえと」

 言葉通じるのか?

 不安だからバフォおじさんも一緒に来て貰って、鶏に尋ねてみた。

「えっと……産み落とした卵をもらいたいんだけど、いいかな?」
『コケェーッ。コッコッコッコ』

 お、怒ってる?

「まずは食い物をよこせ。話はそれからだ――と言ってやがる
「あ、お腹空いたのか。わかった。草食なら、キャベツとかでもいいかな」

 インベントリからキャベツの種を取り出して成長させる。
 ルーシェたちにも手伝ってもらって、葉っぱを剥いては檻に投げ入れた。
 鶏って、トウモロコシの粒を乾燥させたのとかも食べたよな。
 種として取ってあるトウモロコシをそのまま出してみるか。

「これも食べるか?」
『コケッ』

 何粒か檻に入れると、初めて見るのか、首を傾げてじーっと見ている。
 雄鶏が一粒突いて食べると、『ココココココココケェー』と鳴いてから、なんと雌鶏にトウモロコシを渡したではないか。
 雌鶏の方は一粒食べると、これまた盛大に鳴いて残りを平らげてしまった。
 雄には残してやらないのか。

『ココココ』
「トウモロコシをもっと食いたいとよ」
「うぅん。種用に取っておかなきゃならないし、乾燥はさすがに成長促進ではどうにもならないから時間がかかるんだよ」

 といってもこの気温だ。収穫したトウモロコシを日向に吊るしておけば、二日ほどで乾燥が終わる。

「二、三日後にたっぷり用意しておくよ」
『コケーッコッコッコ』
「よろしく頼むぞ人間、だとよ」

 なんかフレンドリーなモンスターだなぁ。

「それで、卵なんだけど」
『コッコッコ。コケッコ』
「あ? んなこたぁわかってんだよ。てめぇの女房の卵をくれるのか、くれねぇのかって話だ」
『ココココココ』
「女房じゃねえだとぉ?」
「まぁまぁまぁ、バフォおじさん。適当に捕まえて来たからさ」

 今のバフォおじさんとの会話、たぶん「俺は雄だから卵は産まないぜ」みたいなやつかな。
 雌の方がコッココッコと話し、バフォおじさんが「いいとさ」と通訳してくれる。

「有精卵は温めるが、無精卵は好きに持っていけ。有精卵も年に数個しか産まねぇし、有精か無精かはわかるから、温めてねぇのは食ってもいいんだと」
「やった! ありがとうっ。ちゃんとご飯は用意するから、これからよろしく頼むよ」
『コココココ』
『コケーッコッコ』

 鶏小屋をどうしようかと思ったけど、どうやら逃げる気はなさそうだ。
 崖の上にいるフレイを見てガクブルしているし、大人しくしているだろう。

 居住スペースのもう一段上の層を、鶏牧場にすることにした。
 木を植え、雑草の種をばら撒き、水は……そもそもたいした量を飲まないらしく、汲み上げるのも大変だから、久々に水の木の出番となった。

 一応念のため、三メートルほどの壁を作る。
 作ったのはルルだ。ベヒモスから大地の精霊魔法を学んでいるらしく、土を使った頑丈な壁を築いてくれた。

「今日からここがお前たちの家だ。要望があったら言ってくれよ。できそうなものは用意するからさ」

 フレイが檻ごと鶏たちを牧場へと下ろす。
 その間も鶏たちはガクブル震えていた。まぁ相手はドラゴンだし、怯えるのも仕方ないか。
 おかげですごく大人しい。元からそういう性格なのかどうかは置いといて。

 四羽の鶏たちは牧場をくまなく探索。
 広さは体育館ほど。
 下の畑から野菜を運ぶのも大変だし、牧場の外に鶏用の畑も用意するかな。

 それぞれ好みの場所を見つけると、鶏たちは腰を下ろしてくつろぎ始めた。

 翌朝――

「なんて立派な卵なんでしょう」
「食べ応えがありそうね」

 ……いや、デカ過ぎ。
 二羽の雌鶏が産み落とした卵は、全部で四つ。それぞれ二個ずつ産んだようだ。
 そのサイズは、俺の頭ほどもある。

 そりゃそうか。産む方もデカいんだから、そうなるよなぁ。

 さて、このバカデカ卵をどうやってみんなで分け合うか。