「僕はまだ僕ですか?」

(僕は何を聞いているんだろう?)

 そう思っても、その言葉しか思いつかない。

「そう、君は君のままだ。いつだって君は君自身だった。君の物語は、君自身ですべて選択して創り上げたものだ」
「・・・・・」
「君にはたくさんの選択肢があって、すべてに答えが決まっていた。
 君は君の物語の主人公だが、他の人も、自分の物語の主人公だ。
 君の選択が他の人にも影響を与えるが、他の人も自分の物語を自分で決めて生きている。
 だから、君の選択によって、他の人の物語の内容が決まる訳ではない」

 ひと呼吸置き、声の主は続けた。

「確かに、君の選択した行動によってこの世界が大きく変化した。だが、それは1つのシナリオに過ぎない。
 たくさんある物語の中から、君が最も心惹かれる世界を選んだんだ。そのおかげで、この世界はさらに拡大・成長を遂げた。
 良い悪いではなく、すべての出来事には意味がある。そして、君の選択にも意志はある。
 だから、君の物語は君の意志であり、意味のあることなんだよ」
 
 声の主の言葉はとても優しくて、僕の心を包んで安心させてくれているように感じた。

(僕のしてきたことは、間違いじゃない!)

 そう肯定されたように感じて、さっきまであった心のモヤモヤとした思いがすっと抜けていった。

「ありがとうございます。そう言って頂けて、とても嬉しいです」
「そう、それでいい。君には笑顔が似合う」

(ああ・・・・、僕は今、笑ってたんだ。そっか。最後に笑ったのっていつだろう?)

「キラ様、キラ様、キラ様」

 僕を呼ぶ、たくさんの人たちの声が頭の中に響き渡り、みんなの笑顔も思い浮かんだ。
 僕はこんなにもみんなに愛されていたんだ。
 僕はそんな当たり前のことさえ忘れていたんだ。
 僕は1人じゃない。
 みんなに会いたい。
 早くみんなの笑顔が見たい。

「僕はここにいるよ!」